見出し画像

ひとりひとりのささやきは無力ではない〜『彼女たちの戦争』

◆小林エリカ著『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』
出版社:筑摩書房
発売時期:2024年2月

様々な分野で活動した女性たちの〈戦い〉の軌跡を列伝の形で素描した本です。登場人物はまことに多彩。アナキストの伊藤野枝。DNAの二重らせん構造のX線写真撮影に成功したロザリンド・フランクリン。パリで物理学を研究した湯浅年子。芸姑から女優になった貞奴。彫刻家のカミーユ・クローデール……。

彼女たちにはそれぞれにそれぞれの「戦い」がありました。その戦いのあらましが簡潔に記されています。こういう体裁の本ならもう少しクリティカルな筆力が必要かとも思いますが、本書を一つの手引書と考えれば、章ごとにリストアップされている参考文献を頼りに自分でさらに知見を深めていけばいいでしょう。

個人的には、アインシュタインの悪妻とされてきたミレヴァ・マリッチの名誉を回復せんとする論稿、『わたしの女工哀史』の執筆を妻として支えながら不遇を極めた高井としをに関する一文などに鮮烈な印象を受けました。

なおサブタイトルにある「嵐の中のささやきよ!」は、本書でも取り上げている反帝国主義者でエスペランティストのヴェルダ・マーヨ(長谷川テル)がエスペラント語で記した本の題名『嵐の中のささやき』から採ったものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?