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本読みの記録(2017)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
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#島田雅彦

悪人の心には情を、絶望する者には希望を〜『深読み日本文学』

◆島田雅彦『深読み日本文学』 出版社:集英社インターナショナル 発売時期:2017年12月 文学とは実学である。エセ文学的な「言葉の悪用」をする人たちを批判するのが、文学の本来の役割である。文学は神話という最も古い形式から出発して、焼き直しを繰り返しながら時代状況に沿ったアレンジを重ねてきた。 ……様々なアングルから文学に光を当て、その特長を言挙げすることから島田雅彦は始めます。期待感を抱かせるに充分な序章。結論的にいえば最後まで私を愉しませてくれた本でした。近頃出た文学論

人類は二度滅ぶ!?〜『カタストロフ・マニア』

◆島田雅彦著『カタストロフ・マニア』 出版社:新潮社 発売時期:2017年5月 大震災に伴う原発事故とその後につづく政治の暴走が重なって混迷の度を深める日本社会にあって、昨今は近未来を描いたディストピア小説があらためて読まれているようです。古典ならジョージ・オーウェルの『1984』、日本文学の最近作なら、笙野頼子『ひょうすべの国』、津島佑子『半減期を祝って』のほか、奥泉光『ビビビ・ビ・バップ』もここに加えていいかもしれません。 島田雅彦の最新作『カタストロフ・マニア』も、