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本読みの記録(2017)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
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#千葉雅也

接続と切断のあいだに〜『動きすぎてはいけない』

◆千葉雅也著『動きすぎてはいけない──ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』 出版社:河出書房新社 発売時期:2017年9月(文庫版) FACEBOOKだのLINEだのと、とかく人と繋がらずにはおれないインターネット社会。現代人は好んでみずからのプライバシーを晒し、些細な情報までをシェアしあう。「接続過剰」の社会。そこではしばしばコミュニケーションは形式化し、ただ繋がることが目的化しているようにもみえます。 千葉雅也は、『朝日新聞』(2013年12月11日)に掲載された浅田彰

アイロニーからユーモアへ〜『勉強の哲学』

◆千葉雅也著『勉強の哲学 来たるべきバカのために』 出版社:文藝春秋 発売時期:2017年4月 勉強しない者たちが実社会でたくましく生きていく姿にエールをおくる言葉は巷にあふれています。学生時代はロクに勉強もせずに遊び呆けていたと露悪的に懐古するインテリも珍しくありません。それらはいずれもアンチ勉強言説の紋切型といえるでしょう。その裏返しとして、安易な自己啓発本は量産されてはいるものの、勉強することの気まずさやそこからじわじわと生まれる歓びに正面から原理的に言及した本はこれ