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本読みの記録(2018)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2018年刊行の書籍。
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2019年4月の記事一覧

明治維新の暗黒面を掘り起こす〜『仏教抹殺』

◆鵜飼秀徳著『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』 出版社:文藝春秋 発売時期:2018年12月 日本の宗教は世界の宗教史のなかでも特殊な歴史を刻んできました。中世以降江戸時代まで、神道と仏教が混淆していたのです。平安時代に生まれた本地垂迹説という神仏習合思想がその土台を成しています。日本の神々は仏菩薩が化身としてこの世に現れた姿だとする説です。外来宗教であった仏教が日本独自の神道と無理なく混じり合い、寺と神社が同じ敷地内に共存するのは当たり前という状況が長らく続き

国民の生活よりも大企業の利益〜『日本が売られる』

◆堤未果著『日本が売られる』 出版社:幻冬舎 発売時期:2018年10月 日本を世界一ビジネスのしやすい国にする。これは安倍政権が掲げる主要政策のひとつです。これまで何気なく聞き流していましたが、本書を読んでその意味するところを十二分に理解することができました。要するに国民一人一人の生活向上よりも企業の利益を優先するという宣言なのです。 周回遅れの新自由主義国家として日本は公共部門が管理統制すべき分野で規制緩和を行ない、市場原理の支配する領域を広げています。水、農地、森林