大滝さんの影だけ見えた

小学校も高学年になった頃、私が育った玉川上水駅近くのショッピングセンターに、地域で初めての学習塾ができた。漢字は定かではないが確か創研塾といったはずだ。そしてこの塾には本校なのか何なのか(私は通わせてもらえなかったので実態は知らない)もうひとつの教室が拝島にあって、一部のカリキュラムを受けに、玉川上水の子供たちが西武線に乗って出かけていった。

その子供たちの中に、守屋先輩というブラバンで一緒だったふたつ上の人がいたのだが、彼女があるとき、拝島の教室にはビートルズの曲を全曲諳んじている○〇〇くんという男の子がいる、と教えてくれた。私も兄から奪った「ソングブック100」のおかげで30曲くらいは歌えたものだが、全曲となると200を超えるはずだ。しかもすべてギターで弾き語りできるのだという。

そうそう中学生にできる芸当ではなかろう、フカシじゃないか、と思ってその○〇〇くんの名字を聞いたところ、大滝といって、箱根ケ崎方面から来ているという。瑞穂町で大滝、ビートルズ全曲。すぐにピンときて私は、その子のお父さんは歌手だと思う。聞いてみて。と先輩に伝えた。案の定だった。リスナーとしてではなく、実生活で大滝さんと人生がクロスした唯一の瞬間、というお話でした。

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