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教室内英語スピーキングテストの採点

大阪大学マルチリンガル教育センター公開講座「英語教育オンラインセミナー」の第6弾,小泉利恵先生による「教室内英語スピーキングテストの適切な採点に向けたガイドライン」を聴きました。

今回の講演では,資格試験や入学試験で行われるスピーキングテストではなく,「教室内」で行われる英語スピーキングテスト,つまり学校の英語授業との関連で行われるスピーキングテストについて取り上げられました。

そして教室内英語スピーキングテストで問題となるのが,「測定(どのようにテストするか)」と「採点(どのように評価するか)」ですが,今回は「採点」について,英語教師が適切に採点を行うためのガイドラインを提案してくださいました。

採点ガイドライン

小泉先生は,採点前 (1 ~ 4),採点時 (5 ~ 7),採点後 (8 ~ 10) の3段階それぞれで行うべきことをリスト化し,適切に採点を行うための指針を全部で 10 個挙げていました(まだ現時点での案のようです)。

採点ガイドラインの全てをそのまま引用することはしませんが,

ざっくりまとめると,

採点前では,評価のためのルーブリックやその使い方をまとめたマニュアルを作成したり,評価者トレーニングとして,サンプルを聞いて自分の採点と他の教員の採点を比べて,教員同士の採点方法のすり合わせなどを行います。

採点時には,再度採点者が集まって採点基準について不安な点がないかなど話し合う機会を作ることや,生徒1名の発話を2名以上の教員で採点すること,それが難しければ,教員1名が2回採点することなどが提案されています。ただし,全てを複数の教員で採点することや,教員1名が全てを再採点することが難しければ,一部だけをそのように採点すれば良いとされています。

とにかく,教員1名で1回だけ採点するよりは,複数の採点者がいたり,複数回採点した方が,全体として一貫した採点をするために重要だということです。

採点後には,(複数の採点者によって,もしくは複数回の採点が行われた場合には)生徒1名に対する採点を比較し,差があるところを特定して最終的な点数を決定することや,大きな採点のずれがあれば,採点基準の修正などを行うことが提案されています。


実際にスピーキングテストの採点にチャレンジ

セミナーの中では,中学3年生がALTの先生と夏休み or 冬休みの思い出について英語で 90秒間やり取りするというテストの映像を見て,提示されたルーブリックに基づいて採点してみるという機会がありました。

1~5の5段階からなるルーブリックの中身をじっくりと見る時間がなかったので,ルーブリックの評価基準に照らして採点するのはあの場ではなかなか難しかったです。

ここからは採点の話からは若干逸れてしまうかもしれませんが,

ある生徒のスピーキングテストの映像を見ていて感じたのは,ALTとのやり取りの中で,「話す」以前に「聴く」ことができていないということ。

これは,松岡亮二(編著)『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』の中の阿部公彦先生の論考(「ぺらぺら信仰がしゃべれない日本人を作る」)をちょうど最近読んだおかげで気付くことができた視点だと思っています。

阿部先生は,私たちがしばしば「英語がしゃべれない」と言うとき,実は話すことよりも聴くことの方に困難があるのではないかと指摘します。

今日私が生徒とALTのやり取りを見ていて感じたことはまさにその指摘通りのことでした。ところが,これが「スピーキングテスト」であるがゆえに,「話す力」の観点からしか評価されなければ,「スピーキング力が低い」と見なされ,その結果,「話すこと」の指導にばかり力が入れられるということになりかねません。

「話せるという以前に聴けるということ」が大切ならば,「話すこと(やり取り)」のテストにおいても,「話せているかどうか」だけを評価の対象とするのではなく,「聴けているかどうか」も評価しなければ,その後の指導へと適切に繋げていくことが難しくなってしまうと思いました。(採点の話に戻ってきた,よかった。)

「やり取り」という人と人との相互作用が「話すこと」という発信技能に押し込められてしまっている違和感がぬぐえません。

阿部先生の論考をもっと詳しく知りたい方は,こちらの記事が参考になります。


おわりに

来年から英語教師として働き始める身としては(順調にいけば),スピーキングテストの採点のためのガイドラインを得ることができて非常に良かったです。

ちゃんとした記事を書くのはこれが初めてですが,やっぱり書きながら考えが整理されたり,深まったりして,書き始めて良かったなと思います。ただ,この記事書くのに2時間かかっているのは,さすがにかかり過ぎ?とも思うので, 今後たくさん書いていく中で思考と表現の速度をアップしていければと思います。




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