見出し画像

クリスマスを前に考える、この先の家ナカイベントの姿

コロナ禍で今まで通りの年中行事が行えないことも多かった2020年。近年高まっていた家ナカの志向がより強まり、従来までの傾向とも変化を見せています。今回は、年末に迫るクリスマスをテーマに今後の家ナカイベントの過ごし方を予測。昨年までのクリスマスのトレンドと、この夏に起こった2020年ならではの家庭でのイベントの盛り上がりから分析し、そこから見えた今後の住まい・暮らし関連マーケットとの向き合い方まで話します。(※本テキストは、2020年10月に実施されたライブ配信『はじまる再構築。「家ナカイベント」 クリスマスの過ごし方はどう変わる?』の文字起こし編集版です)

・スピーカー:
ルームクリップ株式会社 セールスマーケティングチーム 竹内優、水上淳史


高まる家ナカ志向

【竹内】今日は『はじまる再構築。「家ナカイベント」 クリスマスの過ごし方はどう変わる?』というテーマです。

画像1

 まず「家ナカイベント」という言葉から。実は、「家ナカ」という言葉自体が盛り上がっていたのは今年ではなくてクリスマスが平日の日程だった昨年、2019年です。そして今は不可抗力で家ナカが日常となっていますけれども、今日話したいのは、家ナカイベントの向き合い方や形が変わっていくんじゃないかなと。

 何で10月のこのタイミングでお話ししようと思ったのかというと、夏を終えて毎年この先がイベント目白押しのシーズンでして。12月のクリスマス、1月がお正月、2月は節分やバレンタイン、3月はお雛祭りやホワイトデー、そして春に新生活・新入学など…。

画像2

 コロナ禍の騒動も冬には収まっているだろうとか楽観的な目測も当初はあったんですけれども、外に出るようになってもあくまでニューノーマル、接触を避けるなど形を変えて過ごされている状況でして。今後目白押しの年中行事において、コロナ禍で変わった状況は避けられず迎えることになったんだなと。そうなると、この先の年中行事でおうちに期待されるケースが増えていくのかなというところです。

画像3

 実際に外でのイベントはまだまだ中止や縮小が相次いでいます。例えば、日本でイルミネーションのブームを作った、神戸のルミナリエが今年は中止という話があったり。大きな公共のイベントだけではなくて、地域や家庭に近いイベントも同様。右手は、運動会に関するニュースの引用ですが、縮小開催が全国的に相次いでおります。

【水上】うちの娘の保育園は、保護者は呼ばずに運動会を開催というパターンでしたね。

【竹内】元々保護者にも向けたイベントという面もあったとは思うんですけれども、そういったところの楽しみがちょっと失われてたりしますよね。

画像4

 片やステイホームが非常に長期化・長時間化しているという状況で、その他取り巻く環境も簡単におさらいしておきたいと思います。外出自粛から始まったステイホームが長期化から、在宅ワークが普及し、リモートだったりオンラインの活用が非常に進んだというところ。そして家の中と外とを繋げているサービスも非常に変化して、非接触なショッピングとかデリバリーのサービスも、従来以上に利用される方がこのタイミングで増えました。こういった状況の最中、おうちでの時間だったり活動の仕方が変わってますよねというところです。

行事イベントが家にもたらす2つの価値とは?

画像5

 おうちでイベントを代替するケースが従来より増えるだろうという中で、今後、年中行事がおうちの中でどんな傾向を見せていくのか、直近でクリスマスがビッグイベントに控えておりますので、そこをテーマに今日はお話しできればなと。そしてクリスマスに限らず、今後の家ナカイベントがどう変化するか、ビジネス上で生活者に提案できる余地を一緒に何か見つけられたらなと考えています。

画像6

 おうちでの年中行事について、2つの視点でお話ししていこうと考えております。行事イベントが家の中にもたらす価値って何だろうなと。空間づくりと、そしてレジャー体験、それらが行事イベントが家に引き起こしてくれるものじゃないかなと思っております。

 1点目の空間づくりというのは、暮らしの中に季節の変化を取り入れるきっかけを与えてくれるものですね。お部屋づくりって、効率的な場所を作るとか家事のしやすさみたいな目線もあるとは思うんですけれども、日常が営まれる空間に何かしら変化を加えるという時に、行事にまつわる季節や文化のイベントというところが活用されているんじゃないかなと。

 もう1点が、レジャー体験としての価値です。元々伝統的な行事は自然や文化をルーツに成り立っているものですが、そういったものが余暇の過ごし方としておうち時間で親しまれている部分もありますよね。

画像7

 おうちで親しまれる行事によってどちらの性格が強いっていうのはあるとは思うんですが、クリスマスにおいては、この両側面を見ていくと今後の変化が予測しやすいのではないかなと考えました。今回、空間づくりに関しては前回のおうちでのクリスマスの様子、つまり昨年までのコーディネートの傾向を見てみたいというところ。そしてレジャー体験の視点に関しては、2020年、直近でおうち時間によって生まれた、新しい行事の楽しみ方の実例から、お伝えさせていただきます。

クリスマスの空間づくりに活用されるアイテム

画像8

 まず視点1、空間づくりの話から。季節に合わせてお部屋の雰囲気を形づくるっていうようなシーンって行事の中にありますよね、というところ。

画像9

 昨年のクリスマスの様子を見てみましょう。RoomClipで2019年11月から12月に募集した、クリスマス投稿イベントの様子をお伝えいたします。投稿写真枚数は、7000枚を超える枚数。そもそもクリスマスはRoomClipの中でも最もコミュニティーの話題が盛り上がる時期でもあります。その中から無作為に100人のお住まいを抽出させていただいて、それぞれのクリスマスの様子を見てお話をさせていただきます。

画像10

 このRoomClipの投稿イベントではお子さんのいる家庭が、約60%。そしてカップルもしくはそれ以外の家族とという方が35%近く、10%未満の方がお1人で楽しまれている様子を投稿されていました。主にファミリーのクリスマスに関する部屋づくり分析といったところで、この先、見ていただければなと思います。

画像11

 それではクリスマス、どんなコーディネートをしているか。アイテムを中心にお話しさせていただきます。お部屋づくりに活用されるアイテムはどういうものが組み合わされているか。こちらのグラフです。トップはツリーで70%。大半の方が、まずツリーをクリスマスには設置される。そしていろんな飾り付けをしていくにあたって、2位・4位のサンタさんの人形であったりとかオーナメントを、ツリーに飾ったりとか添えられたり利用されるといった使われ方です。リースもツリーに続いて定番でイメージされるアイテムとは思います。3位にございます。5位、クリスマスの部屋づくりに植物、グリーンが多用されているのは、RoomClipならではの特徴かなと感じるところです。クリスマスシーズンならではで飾られるグリーンも種類があるので、その辺りも楽しまれてるのかなというところですね。

色のトーンが変わりつつあるクリスマスのお部屋

 実際どんなお部屋になるのか写真と共に見ていきましょう。

画像12

 例えば左、大き目のクリスマスツリーをリビングのキッズコーナーに置き、壁にガーランドを飾ってクリスマスのコーナーを家に設けられてるものです。真ん中の方は、クリスマスに限らずいつも玄関先にこういったディスプレイコーナーを設けているそうで。お人形がいっぱい飾ってあって可愛いコーナーなんですけれども、そこにクリスマスの飾りをちょっと組み入れて、シーズンの変化を取り入れてる。右の写真の方は玄関周りですね。こちらはグリーンを元々置かれていて、季節に合わせて周辺のオブジェを入れ替えている。そういう飾りつけをやられる方は結構いらっしゃいます。基本的に、何か1つのアイテムをドンと置くというよりも、アイテムを組み合わせてコーディネートするのが定番なのもクリスマスならではですね。いずれも、こういったコーナーづくりを中心に、先ほどのグラフに現れるような様々なアイテムを使ってクリスマスを楽しまれている、といったところです。

画像13

 クリスマスツリー自体も形は変わってきていて。モミの木の形やいわゆる緑のものだけじゃなくて、こんなものも広く受け入れられています。左はLEDツリーというもの。枝にLEDが搭載されてるもので、飾り付けが少なめでも楽しまれるものです。真ん中は枝ツリーと呼ばれているもの。いわゆる大きなフラワーベースに、枝を束ねて入れてあります。そこにクリスマス風のオーナメントを下げることによって季節を演出される。オーナメントって話が出ましたけれども、オーナメント自体もいろんな雰囲気のものが出ておりまして。きらびやかなものだけじゃなくて、右の写真のように羊毛とか毛糸を使ったオーナメントも。ぬくもりのある印象とか、自分の好きな雰囲気に合わせたものも、いろんなバリエーションが今出てきているなというところです。

画像14

 ツリーはいわゆる立体的なものが思い浮かびがちですが、もう1つパターンがあり、増加の傾向を見せています。中でも一番は、左の写真のタペストリーツリーと呼ばれる、ポスターサイズの布製のもの。モミの木の絵だけのものが多いんですが、それを壁に貼り付けて、そこに自分でデコレーションをしていくみたいな遊び方をされる。壁掛けには他にもいろんなパターンがありまして。真ん中は流木ツリーと呼ばれるものですが、流木を組み合わせてツリー状の形状にしたもの。そちらにオーナメントを吊り下げ、壁掛けでクリスマスツリーの雰囲気を楽しまれる。右手のようなフレーム入りのポスターみたいなものもあります。モミの木の写真に電飾を付けて、自分なりのクリスマスの楽しみ方を演出されていますね。

 これらが増加の傾向を見せている理由はスペースの都合かなとは思うんですね。例えば一人暮らしのお部屋にはツリーって導入しづらいですし。ツリーってどこにしまうかという問題も大きいです。

【水上】本格的なツリーとなると家族で暮らしてる方も収納場所は非常に困りますしね。

【竹内】はい、そういった悩みに応える回答として、こういった二次元のタイプものが支持されてるのかなというところですね。

画像15

 あとは、クリスマスをいつ飾り付け始めるかというのも、ツリーに注目するとわかりやすいです。実はモミの木状のツリーをクリスマス前から活用されてる方って現在多く見られるんですね。ハロウィンの飾りで使われてたりとか。例えば先程の枝ツリーのように、オーナメントを変えることによってずっとお気に入りの場所にあって、それを飾るアイテムで季節を取り替えていくということをやられてる方が結構見られるようになってきておりまして。連動して、クリスマスの開始タイミングが従来よりも早まってる印象もあります。ハロウィンが終了したらもうクリスマス開始というように、年末までより長く飾られている傾向があるのかなと。そして、長く飾られる傾向が出ることによって、クリスマスシーズンの空間の作り方の考え方そのものにも影響を与えているのかなと思っています。

画像16

 クリスマスの空間の作り方の変化の象徴的な例が、このグラフの説明になるんですが。こちら、クリスマスの飾りつけのカラーのトーンの分布と捉えていただければいいのですけれども。元々クリスマスのカラーって、何イメージされます?

【水上】やっぱり赤と緑ですよね。

【竹内】そうですよね。サンタさんとかね、その辺の色になりますけれども。従来型のそういったオーソドックスなトーンの色味のコンビネーションに加えて、それに拮抗する形でそれ以外のトーンも多数派となってきています。ホワイトやグレイッシュなトーン、そしてナチュラルやオーガニックなイメージといった、抑えめなトーンが台頭してきている。どういったものかはお写真を見ていただくと非常にわかりやすいかなと思います。

画像17

 オーソドックスな例は先程あった緑とか赤、そしてきらびやかな飾り付けをされるようなところで。こちらは今ももちろん親しまれてはいます。他に台頭してきているトーン、例えばホワイトやグレイッシュのトーンは、飾り自体はきらびやかなものとかが入ってたりするんですけれども、真ん中の写真のように全て色が抑えられホワイトで統一されている。また、ナチュラル・オーガニックというのは、例えば右手の例です。緑のモミの木を飾ってあるんですけども、飾りがまだ付いていないんですね。松ぼっくりが元々モミの木にはじめからついている程度で。ヌードツリーと呼ばれるものです。こういった形で木の印象そのまま楽しまれるケースだったりとか。それと同じようなカラーのトーンの飾りが、ちょっと少しずつ飾られるぐらい。非常に抑えめなトーンで楽しまれる、ナチュラルな印象のものが多く見られている。自分が作る部屋のスタイルに対してうまく馴染んで目に付きづらいというか、季節感を長くその空間の中にずっと取り持ってくれることを期待して敢えてトーンを強調しないようなものが選ばれてきている。そういった選択肢を支持する方が増えているのかなと。

【水上】ハロウィン終わりから2ヶ月間と考えれば、非日常の演出というよりは、暮らしに馴染むっていう形でね、選択される方も増えてるのかなという感じですね。

【竹内】そうですね。今、クリスマスの空間づくりをツリー中心に見ましたけども。もう1つ、主だったアイテム、リースに関してもちょっと押さえておきましょう。

画像18

 クリスマスリースなんですが、クリスマスツリーとはまたちょっと違った形で捉えられていまして。クリスマスツリーは購入される例が現在非常に多いとは思うんですね。シーズンになるとインテリアショップやホームセンターで買って来られる経験がある方も多くいらっしゃるかと。反面、リースは既製品でなく手作りするケースが非常に多くなってきています。例えば左は、手作りのリースですと書かれていますが、お花屋さんとかで今ワークショップを積極的にやられてるんですね。手作り体験みたいな形で楽しまれている。素材が揃ってしまえば比較的手軽に美しいリースが作れたりする面もありますので。真ん中は非常にオーガニックなトーンの手作りリースですね。右は右で、凄い今っぽい例です。何でリースを作ったかタグを見ていただくと分かるんですね。キャンドゥ・セリア・ダイソーと書いてあります。100均商品を組み合わせてDIYされるというのも、リース作りでは定番です。

 ちょっとブランドの名前も出てきたところで、全体のタグ付の傾向もおさらいしておきます。クリスマスのイベントに対する過去5年間のタグのトップ10の傾向の変化です。

画像19

 見ていただくと、ほぼ同じキーワードが順位が入れ違いになっていると感じられます。「クリスマスツリー」をトップに、「セリア」さん「ダイソー」さん、「100均」という言葉だったり、「イケア」さん「ニトリ」さん。定番のクリスマスのアイテムと共に100均やファストインテリアと呼ばれるブランドの名前が前後している。自分たちの手でクリスマスのお部屋を構築するだったりとか、効率的にお部屋に季節感を取り入れるっていう部分で、こういったファストインテリアのブランドが支持されてるのかなと。ニトリさんが、2018年、2019年と年々順位を上げているのは、ツリーや飾りつけのバリエーションだったりとか、充実化が支持されてる結果なのかなとも考えられるところです。

画像20

 クリスマスについて、空間づくりの傾向の変化から捉えさせていただきました。こういった伝統的なイベントも、伝統のトーンに縛られずに、自分らしさを重視して楽しまれる傾向が高まってきてると言えるのではないかと。その場合、どういった視点でアイテムが選ばれたり手作りされているのかというと、いかに自分の暮らしに馴染ませるかみたいなところ。結果、カラーだったりとかトーンだったりの選択肢がこうやって増えてきたのかなと。

 繰り返す点もありますが申し上げたいところは、現在の生活者は、伝統行事を単純に決まった形で受容しなきゃいけないものとして向き合っておらず、自分らしい空間に季節感をいかに取り入れるかという楽しみとして使われるのかなと。結果的に、自分の暮らしに馴染む形で取り入れられたことで、居心地よく長く楽しむ傾向が従来以上に高まっているのが見てとれます。

レジャー体験としての楽しみ方が増すコロナ禍

画像21

 もう1個の視点、レジャー体験というところをお話ししようと思います。クリスマスでレジャー体験、という例で右の写真です。空間の飾り付けではなく、例えばディナーを楽しむということがその1つになりますね。そういった体験にまつわる文脈が、現在コロナ禍で家ナカ行事においてどういう傾向変化を見せているのかというところを、この先はお話ししたいと思います。

画像22

 さて、次のクリスマスを予測する上で参考になるケースは何だろう、と。昨年のクリスマス中はまだコロナは話題にも上っていなかったので、昨年のクリスマスを見てもしょうがない。これについては、コロナ禍によってレジャー体験化が進んだ最近の家ナカイベントを見ると、この先のクリスマスやその先のイベントの、何かヒントになるのではないかなと思いました。

画像23

 実は2020年4月のライブで、外での楽しみを家ナカ化する流れがどんどん加速的に高まっていくでしょうと予測させていただきました。見事にこの「おうち○○」というキーワードは、その後インスタ等でもトレンドのタグとして現れましたね。

【水上】おうち○○、凄い数出て来ましたね、やっぱりね。

【竹内】そうですね。今後もルームクリップラボからそういった発見をお届けすることで、先手を打っていければなと思っています。

 というわけで、「おうち○○」といったキーワードを4月のライブの際に提示させていただいたんですけども。おうちでの滞在時間が長時間化・長期化することによって、外での楽しみを家でも実現するような動きは今後多く見られるでしょうという話でした。例えば「おうちキャンプ」というのがその当時、ブームの1つとして見えてきていた。リビングにキャンプ用品を広げたりとか、そういう話ですけれども。このトレンドの中で、クリスマスや今後の年行事の姿を占うようなイベントが何かあるんじゃないかなと考えました。

画像24

 今回、その中から「おうち夏祭り」を取り上げさせていただきます。2020年の8月から9月に、我々も投稿イベントを開催させていただいていたものです。RoomClipだけで勝手におうち夏祭りを盛り上げていたんじゃないの?という話はちょっと違います。

画像25

 おうち夏祭り、もしくはおうち縁日という言葉って、今年の夏非常にトレンドになったキーワードでございました。ライブの2週間前にマーケティングの企業であるトレンダーズ様がプレスリリース出されておりましたが、インスタグラム・ツイッターで、おうち時間の中でおうち○○といったキーワードが、非常に自分らしさの実現においてトレンドを迎えましたよねという報告があり、8月の代表キーワードとしておうち縁日が来ていましたとおっしゃってます。また右手になりますけれども、こちらは元アイドルで今やインフルエンサーの、辻希美さんと杉浦太陽さんのご家族がおうち夏祭りやりましたというヤフーニュースのトピック。こうやっていろんなレイヤーの方々が夏の家ナカイベントとして実現されていたんです。

画像26

 そもそも夏祭りって、家でやるものではなかったじゃないですか。

【水上】基本的には外で楽しむものでしたよね。

【竹内】はい。夏祭りのように、元々外で行われてきたレジャー体験型の行事が家ナカに入って来たというのは、割とダイナミックな出来事でして。これが家ナカにどうやって取り込まれていったのかということを見つめると、今後家ナカイベントがどう変わっていくかっていうのは非常に抽象化しやすいんじゃないかなと思って、今日はこちらを取り上げさせていただくことにしたわけです。

2020年誕生したイベント『おうち夏祭り』を分析

画像27

【竹内】「おうち夏祭り」投稿イベントの話に移ります。今回、約660枚の写真が集まりました。今まで存在しなかった催しに対する投稿イベントとしては、かなり大きな規模で事例が集まりましたね。その中の100人のお住まいを見させていただきました。

画像28

 まず、どういった方々がおうち夏祭りをRoomClipの中で楽しんでいたか。空間づくりを中心に1人で楽しまれた報告も14%ありましたが、基本的にそれ以外の全ては誰かと楽しまれていたものでした。パートナーや子どもとご一緒に楽しんだとかをはじめ、友人や親せきと楽しんだという方も少なからずいらっしゃいました。主にお子さんがいる家庭で、お子さんと一緒に楽しめることを中心におうち夏祭りが展開されたということを、ここで覚えておいてください。

画像29

 それでは、「おうち夏祭り」というものをそれぞれの家庭がどのように捉えて、何をしたのかという話に移ります。こんなランキングとなります。まず1位は、屋台グルメが過半数を超えて54%。それ以外には、縁日遊びを家の中に取り入れるであるとか。遊びやグルメをお祭り空間を再現した中で楽しもうとか、そこにプラスしてコスプレしながらそれを遊んでみようとかが続きます。こういったものがそれぞれ個別で、もしくは組み合わされて楽しまれていた。家の中で実現できないような花火や盆踊りとかは映像や音響コンテンツを活用してやってみる、そんなチャレンジをする方も一定数いらっしゃったのも注目すべきポイントと感じます。

 実際の写真を見ていきましょう。

画像30

 まずは食が中心になるといったところですが。屋台グルメなどの再現などが多く見られます。何が食べられていたか。例えば左は、かき氷屋さんをやりましたと。真ん中は、ラムネ買ってきてバケツで冷しました、窓際で飲みました、と。とても手軽ですが、それだけで夏祭り感ありますね。右はもうちょっと手をかけた例ですけども、電飾でバルコニーを飾り付けて、タコ焼きやスイカなど祭りっぽいものを食べる。こういったグルメは再現するだけでおうちで非日常感を演出できる方法として親しまれています。

画像31

 大人の場合ですと、もうちょっとムード重視の傾向が高まっています。例えば、左はお酒を照明を1つつけた夜空で楽しむとか、真ん中もたくさんの屋台グルメを用意しつつウッドデッキで楽しまれるとか。夏祭りというよりもちょっとフェスっぽい感じですね。右の写真も素敵ですね、卓上の焼き鳥器をこのタイミングで用意されて、ご夫婦で飲まれていました、みたいな。こういった楽しみ方になると。

画像32

 グルメから広がっておうちでお祭り会場の雰囲気まで再現していく方も多く、凄い様子が見られます。夕食の時間がちょっとプレミアムになるという価値とはまた変わってきます。空間までこだわると食そのものが終日楽しめるイベントに変わっている、というような例です。左の写真は「ごはんやさん」と看板を掲げてその後ろからお子さんがお店屋さんの立場で遊ばれています。真ん中は、屋台のメニューを下げてお食事を用意されている。このようなケースは多く見られました。右手はチョコバナナがいっぱい並んでいますが、実は賑やかさの演出にフェイクが混ざってるんですね。お祭りの演出をボリューム感も作って存分に楽しもうみたいな。

画像33

 食の他にも遊びやゲームのような縁日遊びを取り入れました、という話もしましたけども。どういった形で実現されるかというと、例えば左は射的を家の中で飾り付けして遊びましたと。賞品が付いてるところが縁日ならではですね。真ん中の例は、金魚すくい。右の例は、ウッドデッキにビニールプールを広げてボールすくいとかを子供と楽しみましたよ、みたいな様子です。

【水上】この右側のビニールプールとヨーヨー釣りとかのコラボは、凄い見ましたね、今年。家のビニールプールで縁日遊びをする写真って、今年の夏初めて見た風景だったなと、非常に印象的でしたね。

【竹内】そうですね。いずれも夏まつり固有の遊びを家ナカですることによって、子供たち中心に楽しんでもらうといった例でした。熱中して楽しめる、本当に夏祭りに行った気分を子供の中には刻み付けられるんじゃないかなと感じますね。

画像34

 会場の再現を作り込んでいる方の例を掘り下げていくと、家族だけのイベントじゃなくなってくる、というのも特徴でして。会場にいろんなブースを配置されるんすね。もちろん食事のブースもあります。真ん中は姪っ子ちゃん預かりデーだったので夏祭りやりました、とおっしゃってますけれども。家族以外の親戚や友人たちを巻き込んでイベントを家ナカで開催される、規模感が上がるっていうところが、おうち夏祭りが食以外まで展開が広がった場合の特徴なのかなと。

画像35

 コスプレもちょっと押さえておきたくて。例えば、左の例が凄いわかりやすいです。屋台みたいのは別になくて、ビニールプールに甚平と浴衣を着た子がいる。実はそれだけの光景なんですが、明らかに夏祭りという気分が伝わってくる。おうち夏祭りは必ずしもインテリアを作り込むっていう話じゃないかなとは思っていて、参加する方々自身もレジャー体験の空間を実現する一部だなという。

【水上】正に体験なんですね。

【竹内】そうなんです。これだけで行事の雰囲気がぐっと上がる。そういった点も非常に外せない発見かなと。真ん中は、いろんなお部屋の各地に屋台風の壁飾りをして浴衣で遊んだ様子です。右はコスプレもして屋台まで完全に作り込んでいる。ここまで来るとプロに見えますね。

画像36

 また、オンラインの活用みたいな話を先程しましたけれども。こちらは、花火だったり盆踊りだったり、通常のお部屋の空間だけでは実現できないものを家ナカ化するためにさらに飛躍して展開される方が多くみられました。左は、プロジェクターで中庭から自分の建物に投影して家族で打ち上げ花火を鑑賞されてる。また、オンラインの花火大会ならではの楽しみ方に、涼しく楽しめるというメリットもあります。真ん中の住まいでは食卓でご飯を食べながら花火を楽しむということを実現したり。右は、YouTubeでお囃子を流してリビングを盆踊り会場にした例です。コンテンツやテクノロジーを活用して、物理的なアイテムだけで実現できないような雰囲気やムード再現みたいな活用例が増えてきていると。プロジェクターが登場するのが特に今っぽい印象も受けますね。

画像37

 おうち夏祭りのように従来なかったイベントまで家ナカ化しているように、レジャー体験視点での行事の家ナカ化トレンドはコロナ禍で強く際立ってきているところだと捉えています。では、年中行事の家ナカでのレジャー体験化はどこから皆さん手をつけるんだろうというところをここから押さえていきましょう。

 まずグルメですね。行事にまつわるグルメを再現して、それを充実化していく。グルメ自体のバリエーションや楽しみ方を増やすというもそうですし、それを楽しむ空間自体を作り込んでいくということもやっていく。特に子持ち層の方になると、さらに遊びの再現や、世界観全体を再現する試みに動かれます。今年、地域で夏祭りがなくなってしまった現実は特にお子さんたちにとっては大きな出来事だったかと思います。地域や子供会とか保育施設がそういったものを開催する機能を担っていましたからね。それがなくなってしまったことで、夏祭りに限らずその他今後のイベントも家族の思い出作りのために、それぞれの家庭なりでできる限りの努力される姿が見えた背景かと考えます。

レジャー化が加速する今後の年中行事

画像38

 ではこれを2020年のクリスマスの場合どうなるんだろう、という話に展開して考えたいんですが。これ本番当日、12月24日・25日の楽しみ方が従来より高度なレジャーとして楽しまれる可能性を示唆しているんじゃないかと。昨年来からのクリスマスの楽しみ方トレンドは、視点1「空間づくり」の話の通り長期的に楽しまれる面をお伝えしましたが、2020年はそれにプラスして本番当日の楽しみ方が、豊かに展開するであろうという。

画像39

 24・25クリスマス本番の日、家ナカで今までやってた定番の催しもアップデートされるんじゃないかと。例えば、ディナーを食べる、ケーキを食べる、パーティをするということも、ケーキを手作りしてみるとか。ディナーであれば、ホテルのデリバリーサービスなどちょっとプレミアムなものに変えたり。ブランドのあるホテルが今年クリスマスディナーのデリバリーをなさるというプレスリリースも出ています。そういうものを取り入れられるとか。もしくは、自宅をパーティー会場に作り込んでしまうとか。オンラインのコンテンツを演出に使う考え方が、登場する余地もあります。

画像40

 そして、今まで家では行われなかったけどクリスマスに関連する外のイベントが今年のタイミングで家ナカに取り込まれることも、多く見られるのではと。まず友人や地域のパーティ、これらがリモート化するなど。イルミネーションも行けないんだったら、おうちでやってしまおう、おうちの外を飾り付けるんじゃなくて中を飾り付けて皆んなで楽しもうという視点もあり得ます。コンサートやライブに関しても、クリスマスコンサートだったりディナーショーなどは中止に伴い、ライブ配信に変わって家ナカで楽しまれる体験化はすでにアナウンスもあります。そういった視点で、従来の体験がどう家ナカの楽しみに姿を変えるを想像すると良いのかなと。

【水上】そうですね。これまでまだなかった形なので、ここに対する作り方とか使う道具とかっていうのがまだ定まりきってないところなんですよね。

【竹内】そうですね。例えばリモートのパーティになると、離れた地点の一体感をどう演出するかが課題になると思うので、そこに対してどういう物やサービスが解決材料になるだろうみたいなところは、1つ視点になるのかなと思います。

画像41

 おうちクリスマス、2つの視点をお伝えしました。整理しますと、2020年起こる変化について空間づくりの視点や体験の視点がございます。

画像42

 まず1つ、空間づくりの視点で起こる変化です。2019年から続いてたトレンドがポイントになります。自分らしさを実現する多様化が今進んでいます。その結果、暮らしに馴染むトーンのアイテムや手作りのノウハウのが充実が今進んでいます。それに連動する形で、本番前後に限らず長期クリスマスの飾り付けが楽しまれる傾向が生まれている側面もあります。

画像43

 もう1点が、レジャー体験の視点で起こっている変化。これはコロナ禍によって突発的に起こった変化です。おうちで本番当日の楽しみ方を充実させる意識が強まっている。お菓子づくりやプレミアムなディナー・グルメを楽しむとか、イルミネーション・コスプレとか、そういう外空間の遊びを再現が予想されます。リモートパーティとか今までの技術や、インフラの中にはなかった視点も入ってくる。従来より豊かな当日の楽しみ方のバリエーションがイメージできるというところです。

画像44

 年中行事の家ナカレジャー化はどんどん加速して行くんじゃないかと想像しています。季節が変わるごとにバリエーションも拡大してくのではというところです。今コロナ禍で起こったイベントの楽しみ方のエッセンスによって、より生活者の皆さんの創意工夫が刺激されていくでしょう。

 これらのトレンドに対し、ブランドの視点でどうキャッチアップの可能性があるかと申し上げると、それらの生活者の創意工夫をいかに支援するかというところだとは思うんですね。最後にこの写真を取り上げたいと思います。

画像45

 おうち夏祭りの準備をされる小さなご兄弟の写真です。これ取り上げたのは、背景にそういう理由がありまして。夏祭りという行事は、誰かが用意した場所に行って楽しむという視点だけだったと思うんですが、おうち夏祭りをやるというのはそれと違う価値もあります。準備もレジャーなんですよね。むしろこちらがお子さんにとっては思い出として刻み付けられる可能性もあるかなとは思っていて。このように、生活者の創意工夫の中でどういうシーンが起こってるかっていうところを発見して、そこの支えになるようなものだったり、グレードアップができるモノ・コトの支援を提供することが、ブランドと生活者がシームレスにが繋がる瞬間を生むのではないかと思います。

【水上】家ナカ化のストーリーの中で役立ててもらう視点ということですね。

【竹内】そうですね。手前味噌ですが、我々もおうち夏祭りの文脈で、夏の終わりの時期、「おうち花火大会」という形でライブ配信をお届けしました。あちらも、2020年に失われてしまった大きな行事に対して、我々が何か代わりにお住まいに届けられるアイデアはないかと考え、コンテンツを提供したものです。自分たちのシーズを家の中で季節のレジャー化する視点を持つと、どのようなブランド様も何かが発見できるんじゃないかと考えます。

画像46

 まとめます。年末に向けて、避けられない年中行事が家の中に今押し寄せてくる状況です。そして、家の中で年中行事が代替される際に、空間づくりとレジャー体験の視点で変化が発生します。特に、クリスマスは当日のレジャー体験化の充実が加速して行くんじゃないかなと。これはその先の他の行事においても、そういったところが見られるでしょう。その姿をどう予測するだったり、そのシーンに刺さる提案していくかっていうことは、これまでのイベントの中でレジャー体験化に取り組んだ生活者の工夫そのものを観察することで、提案の発見ができるんじゃないかなと。長期化するステイホームのおうち時間の中で皆さんの工夫はたくさん見えているので、それをまず見ることを、ぜひ試していただきたいなと思います。

 それでは、本日はご視聴ありがとうございました。

【水上】ありがとうございました。

画像47



スピーカー
(左) ルームクリップ株式会社 セールスマーケティングチーム 竹内優
(右) ルームクリップ株式会社 セールスマーケティングチーム 水上淳史

画像48


RoomClipラボについて

生活者のみなさまの写真の投稿を中心として、住まいや暮らしの話題を提供するソーシャルプラットフォーム、「RoomClip(ルームクリップ)」。ここに集まる情報を生活者のみなさまだけではなく、ビジネスにおいても役立てられればということで当社マーケティングチームがお送りしているのが「ルームクリップラボ」と称する活動です。メーカーなど各業界のブランド様向けオフライン/オンラインイベントをはじめ、さまざまな形での情報発信を行っています。