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生活者自身がカスタムする、キッチンの今。

おうち時間との付き合い方が変わり、食へのマインドが急速に変化している今。キッチンを見つめると、生活者の手によって大規模にリメイクされ、ライフスタイルによりアイテムレベルで多様化が進んでいる姿が見えてきました。今回は、キッチンの現状と、その発見から予測される今後への提案をお届けします。

私たちRoomClipは、生活者のみなさまの写真の投稿を中心として、住まいや暮らしの話題を提供するソーシャルプラットフォームです。ここに集まる情報を生活者のみなさまだけではなく、ビジネスにおいても役立てられればということで当社マーケティングチームがお送りしているのが「ルームクリッップラボ」。この記事は2020年7月に実施されたライブ配信「変わる、キッチンの姿。ライフスタイルに寄り添う変化」を文字起こしし、一部編集をしたものです。

スピーカー
ルームクリップ株式会社 セールスマーケティングチーム 竹内優 (写真左に登場)
ルームクリップ株式会社 セールスマーケティングチーム 水上淳史 (写真右に登場)


キッチンはいつでも暮らしの中心

【竹内】今日のテーマは「変わる、キッチンの姿。ライフスタイルに寄り添う変化」。なんでキッチンをテーマにしたのか、まず簡単にその辺からお話ししましょう。

 まず、キッチンはいつでも暮らしの中心だということ。これは単純にそういうスローガンを掲げたいというわけではなく、いろいろデータとともに見ていただければと思うんですけれども。おうち時間がコロナ禍において非常に話題になり、みなさん今でも関心を持たれているところだと思うんですけれども、おうち時間の中でみなさん何してるんだろうというと、これが非常に食と関わりが強いと。RoomClipで2020年5月にアンケートを実施しました。外出自粛期間中に何を実施していましたかと。全体を見ると、グラフの緑の部分、これが全部食に関わるものなんです。例えばおうちカフェが一番で、おうち焼肉、おうちバーベキュー、おうち居酒屋みたいな感じで、おうち時間がたくさんできるとみなさんまず何を手掛けていったかというと、結果として食に関わる部分が上位を占めています。

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【水上】ああ、言われてみれば僕自身を振り返ってみてもそうですね。自粛期間中、食に関心がむきましたよね。

【竹内】ご飯は毎日食べるので、その時間をいかに充実したものにするか、みたいなマインドがあるのかなというところですね。もちろんRoomClipの中だけではなくて、次に、こちらグーグルトレンドのグラフになりますけれども、過去5年にあるキーワードが推移したグラフなんですが、なんのキーワードかというと、「レシピ」です。レシピがコロナ禍のタイミングによって強くアップトレンドになっている。これはいわゆる外出自粛期間中に一度大きなアーチを描いているわけですけれども、そこからその数値も完全に戻るわけではなくて、ずっとベースが上昇しているんです。やっぱりおうち時間というものとの付き合い方が変わったというところで、食へのマインドというのがどんどん変化しているのかなみたいなところです。

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 じゃあ食はコロナ禍だけのものなの?と思われた方いらっしゃるかもしれないんですけども、もう一つRoomClipの中のデータをご紹介しておきます。

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 こちら2019年のRoomClipの検索キーワードのランキングです。みなさん何を検索されているのかというと、1位が「キッチン」、2位が「1K 一人暮らし」、そして3位が「リビング」といった感じで、リビングを超えてキッチンが一番に君臨していると。これは2019年だけではないんですね。2020年6月も見てみますと1位はキッチンです。不動の地位なんですね。RoomClipは住まいの実例を探す目的で利用されるケースが多いですけれども、何にみなさん興味を持たれてるかというと、キッチンが一番。キッチンって、一人ひとり自分の生活だったり家事の仕方によっても姿が変わるから、自分に合ってるものをソーシャルメディアを通して知りたいことになるのかなみたいなところも感じられますね。そして、そういった実例やサンプルを集めたいみたいなマインドは、時期的なものも関係してきます。元々3月4月ってなんの時期だったか、みなさんちょっと忘れてるかもしれないんですけど、新生活の時期です。

【水上】確かにそうですね、新生活が始まる時期だ。

【竹内】新生活に合わせてキッチンまわりとか、住まいの空間を造るというのはいつでもやられてたことでして、今年もそれに合わせた時期、「わが家のキッチン」という投稿イベントをRoomClipでは開催していました。

投稿イベントからレポート

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【竹内】ここからは、2020年3月27日から4月26日に実施した「わが家のキッチン」という投稿イベントで集めさせていただいたお写真からお話しいたします。

 投稿イベントについて簡単に説明します。RoomClipは住まいや暮らしの様子を自由に写真をシェアしていただけるソーシャルメディアですが、旬の話題や今アイデアをみんなから集めるべきであろうトピックをテーマに投稿していただく投稿イベントも催しています。今回の「わが家のキッチン」のイベントでは、実例が1747枚集まってまいりました。

【水上】集まりましたね。

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【竹内】その写真に付与されたタグの全数および、その中から無作為に100人のキッチンを抽出させていただきました。今回は100枚のお写真ではなく人数というところは、今までのライブとの差異だと思って聞いてください。1枚1枚の写真だとどうしてもクローズアップされてる部分が多いので、その方が投稿されている過去まで振り返ってキッチンの全体像を掴みながらお届けしております。

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 では、ざっくりRoomClipの中でどういう写真が集まったかについて。利用家庭としてはほぼ全てが複数人の家庭でした。ファミリーだったりカップルだったりですね。対してお一人家庭はだいたい6%でした。形態はどういったキッチンだったかを見ると、基本的にはシステムキッチンが4分の3を占めるといったところです。RoomClipってすごいリノベ系の方が多いんじゃないかともたまに言われたりするんですけど、基本的には世間一般の構成に近い割合で写真が投稿されています。

今もっともポピュラーなレイアウトは…

【竹内】システムキッチンの写真が主体となって今回集計されたわけですが、さらに、そういったシステムキッチンの中でどんなレイアウトがポピュラーなのかというところをさらに集計させていただきました。過半数を占めたのが、カウンター型のキッチンですね。ダイニングと挟み込む形のもので、対面キッチンとか、ペニンシュラ型とも呼ばれますけれども、そういった形でシンクとレンジが配置されるキッチンが1位。その次にはI型のレイアウト、そしてアイランド型みたいな順序で、ここもわりと世間一般の構成に近いのかなと。このレイアウトにプラスアルファ、収納、作業台みたいな設備が追加されていくわけなんですが、そちらを紐解くと、カウンターキッチンの後ろにカップボードやキッチンボードと呼ばれるものが組み合わされる例が主体となっています。

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 比較的ファミリー世帯では、広めのキッチンでカウンターキッチンとキッチンボードの組み合わせが今主体になっているというところですね。写真をご覧ください。こんな感じで、真ん中の写真にあるとおり、カウンターキッチンが手前のシンクを挟み込むような形で置かれて、ダイニングと作業場が対になっている。その後ろに、キッチンボードがありまして、追加の作業スペースとしてやキッチン家電だったり道具が配置に利用されているかなと。また、上下に収納が付いているのも主に見られるところですね。

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 カウンターとアイランド型の違いも一応説明しておきます。右の写真が一番わかりやすいですが、カウンターキッチンは片側が壁付けされているんですね。アイランドは島という意味で、島だから両側が空いている。ペニンシュラは半島という意味で、半分空いているということなんですね。

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 ここまでキッチンのレイアウトの話がメインでしたが、今日のメインはその話ではなくて。本題に入っていきます。写真を見ていくと、キッチンを引き渡されたそのままをご利用されている方って全然いないなって思ったんです。大なり小なり、何かしらの工夫とか改善みたいなことを伴って利用されている。これはどういったペインがあって、どう自分で手当てしているのか。それがキャッチできてくると、生活者が次にキッチンを自分で作り変えるタイミングに提案できるヒントがいっぱい隠れているんじゃないかなと。そのあたりをいろんな視点から深掘りしていきたいなと思います。

キッチン用品の定番アイテムとは?

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【竹内】キッチンはどこがどうカスタムされるんだろうということですね。まずは細かいところから見ていこうと思います。キッチン用品のアイテムについてどんな物が写っていたのか見させていただきました。食器とか調理器具ではなく、キッチンの見た目や使い勝手を改善する目線で選ばれているアイテムに絞ってご紹介させていただきます。1位が植物、フェイクグリーン、いわゆる装飾部分のアイテムですね。単純に便利グッズだけじゃなくて、自分らしい空間演出みたいなところにもけっこうキッチンの中で選ばれているアイテムがあるんだなということなんですね。まさかいろんな便利グッズを超えてグリーンが集まっているんだということは僕はまったく予測していなかった。

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【水上】これは驚きですね。

【竹内】サンプルをご覧いただくと、こういったところにグリーンが配置されるんですね。左の写真は本当にグリーンの置き場のサンプル集みたいな感じになります。例えばレンジフードの上、もしくはカウンターキッチンの敷居の天井に吊り下げる。

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【水上】流木みたいなのに吊り下げてるんですね。

【竹内】そうです。もしくはカウンターのボードに置かれる。高さを使って、いろんな場所に飾られているんですね。真ん中の写真は、非常にモダンなつくりのキッチンですが、シンプルで何も物を置きたくないという意識がある方かと思ったんですけれども、それでもグリーンをひとつ配置するんですね。オーガニックな印象をキッチンに与えることで、自分の暮らしや家事へのモチベーションをコントロールするのかなと。また、スペースがなくてもグリーンをうまく活用されることも非常に多く見られます。例えば右の写真です。これは冷蔵庫の上にグリーンが配置されていてシンクの方にちょっと垂れている。冷蔵庫の上ってデッドスペースでもありますけれども、そういったところを活かして自分の好きなインテリアを形作っていることもある。

 グリーンの次に多かったのは、やはりキッチンを改善しようみたいな方向性です。吊り下げというアイデア、特に吊り下げフックが2位に位置するほどの人気を集めておりました。ここまでポピュラーだったのは意外だったんですけれども。どう使われているか、一番顕著な例がこの左の写真です。レンジフードに超強力なマグネットのフックのアイテムというのが最近出てきておりまして。

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【水上】ああ、強力にバチっとくっつくやつですね。

【竹内】そうですね。1㎏以上のアイテムも平気でぶら下げられてしまうみたいな物なんですけれども。フライパンやカッティングボードなどが下げられていたりとかですね。フックがマグネットで取り付けられないキッチンだとしても、真ん中の写真のとおり、同様のフック状のグッズを利用していたりとか、また頭上、天面だけじゃなくて側面にもそういったフックを活用できるアイテムを追加して、家事の効率化をしようという。アクセスしやすい環境を作るみたいなことは見えてるのかなと。

 右の写真もですね、アクセスのしやすさというところを目線にした例なのかなとは思うんですけれども、こちらレンジのところではなくシンクの上なんですね。シンクの上になってくると、水場で使われるような物がぶら下げられている印象になっております。吊り下げというのは、とにかくフックだけじゃなくていろんなアイテムとともに今活用されているということが、キッチンで押さえておきたいところです。

 吊り下げフックの他にもこんな物があるんですね。

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 左の写真では、吊り下げカゴ。これは吊り戸棚の下に展開されていますけれども、収納を拡張するみたいな目的でデッドスペースをうまく活用されてる。ないしは同じ写真の中にあるクリップ。これでいわゆるジップロックの袋を留めていますね。真ん中のお写真は、マグネット収納と書かれてありますが、マグネットを生かした何かしらのアイデアですね。例えば、包丁がこの写真の真ん中の壁にくっついてますけど、見た目やアクセスのしやすさを両立したものかなと。右の写真に移ります。こちらで特徴的な物はペーパーホルダー。キッチンペーパーを利用される方は増えていると思いますが、決まった居場所がないんですね。そうしたモノには、吊り下げアイデアは非常にマッチするところがあるのかなと。

DIYなどでさらに大規模にリメイクされるキッチン

【竹内】ここまでアイテムを見てきて、キッチンは細かなレベルでもカスタムされる場所だというのが伝わったと思います。こちら、さらに一歩引いてみても、ダイナミックな変化が生活者によってなされているのがキッチンの特徴です。住まいの中でもとりわけ、大規模にリメイクされる空間なんですね。DIYやリフォームのような大規模なリメイクがどの程度されているか、というところでキッチンを改めて見てみました。約3分の1の方が通常のキッチンから何かしらその空間を作り変えているんですね。

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 次のランキングは投稿イベントの全投稿データに付与されたタグのランキングですが、みなさん10%以上の方が、DIYというタグを付けられている。明確にキッチンの中にDIYとかリメイク要素は強く入っているのかなといったところです。

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 ではどこが変化を加えられているんだろうかというのが、このグラフです。緑、青、赤の四角で色分けもしておりますけども、例えば緑の囲み、空間そのものの印象を作り変える。もしくは、青の囲み、インテリアのスタイルを変えるためにそのトーン変更目的でテクスチャーを張り替えるみたいな。

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【水上】クロスですとか、そういうところですね。

【竹内】そして、赤い囲みのところですけれども、こちらはキッチンのアイテムでもよく見られたように、空間の使い勝手を改善するみたいな目的で何かしら変化を加えるというもの。こういった3バリエーションに従って、DIYなどでリメイクがされている。

 サンプルを見ていただくと非常にわかりやすいかと。ディスプレイ棚とか、オープン棚って呼ばれることも多いかとは思うんですけれども、こういった次の写真のような例になります。左の写真、これはDIYが簡単にできるアイテムを利用されていますね。無印良品さんの、壁に付けられる家具みたいなものですね。

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【水上】これはよく見ますね。

【竹内】こちらは北欧インテリアをお好きな方のようなんですけれども、棚をキッチンのボードの上に作られて、お気に入りの道具や普段使う物をこうやって置かれている。真ん中はカフェ風インテリア関連のタグを付けられている方ですけれど、吊り戸棚とボードの間にオープンな棚を作っていて。お気に入りの食器と、カフェ風の装飾みたいなことをやられている。あと、ディスプレイ棚って北欧とかカフェ風のインテリアから普及していったのかなと思うんですけども、今だとそういったスタイルだけではなくて。最後に右の写真ですね。こういったリノベ系の収納でもよく使われているケースは多いのかなと。

 次に、テクスチャーを張り替えて自分の好きなインテリアのスタイルに近づけるというようなDIYです。写真を見ていくとこんな感じです。左の写真は、写真左上のレンジフードを張り替えているんですね。ヘリンボーン柄みたいな。これも元々は木でできている物ではないとは思うんですが、張り替えによってテクスチャーを与えていると。周辺の戸棚も、実は元々は戸が付いていたそうです。

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【水上】ああ、シンク下と吊り戸棚の部分ですね。

【竹内】はい、これをオープン棚にされている。さらに棚に廃材を貼り付けてるんです。元々こんなテクスチャーではないんです。自分の好きな形に作り変えるみたいな目線で。真ん中の写真も非常にきれいに仕上がっていますが、壁も戸棚も実は元々は違う物なんですね。これは壁にタイルを貼っているわけではなくて、タイル状のシートを貼られている。戸棚の部分は、額縁のようになっていますけど、これはモールディングDIYといわれるものでして、ご自分でドアの部分を作り変えられた。

【水上】これ、おそらく取手も替えてますよね。

【竹内】そうですね、ゴールドのかわいい物に替わってますね。右の写真はビフォーアフターみたいに書かれて一番わかりやすいかなとは思うんですけど、これぐらい空間の印象を変えられるんですね。リメイクシートとタグ付けされていて、このアイテムがいろんなインテリアのスタイルの物が出ておりまして、このタイル状の物も実はその一つになります。自分がしっくりくる空間のトーンを演出する造る際に非常に活用されているかなと。

 それ以外にも、スタイルを作り変える目的だけでなくDIYはよく活用されています。

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 例えば左の写真。カウンターを自分でDIYで追加され、ガスコンロの横にはさらに吊り下げバーの大きな道具を吊り下げちゃおうみたいなところをやられている。カウンターも自作だと、より自分のスタイルを表現されやすいのかなということも感じますね。真ん中はIKEAさんのアイテムかと思うんですけれど、吊り下げバーをシンクの前に付けて、そこに吊り下げフックをさらに追加されている。右の写真は最近の住まいで多く見られるDIYですが、ツーバイフォー材と突っ張り材みたいなのを使って大きな棚を作られている。こういった感じで収納力を上げるみたいなところでも、キッチンのリメイクは取り組まれています。

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キッチンのスタイルを形作るものとは?

【竹内】ここまでいろんな改善例だったりとかDIYの例を見させてもらったんですけれども、もう1個考えなきゃいけないのは、生活者のみなさんがこういったカスタムをされる際に、目指しているスタイルが種類としてあるんじゃないかなということです。どんなスタイルがあるんだろうというところを、考えていきます。

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 スタイルと申し上げると、まずみなさん思い浮かばれるのがインテリアスタイルだと思います。先程も例えば北欧スタイルとかカフェ風スタイルとか出てましたけれど。もちろん、そういったものは継続して存在する中で、RoomClipとして発見しているところで、もう1個視点があります。ライフスタイルというところですね。例えば、植物のある暮らしとか、アートのある暮らしとか、猫と暮らすとか、自分にとって暮らしの中で大切にしたいものと過ごすための空間を造る、そういった意識でインテリアを構築する目線ですね。2019年に発表したトレンドでも自分スタイルというキーワードを中心に、その多様化を含め、ライフスタイルの視点でインテリアを形作る方々が非常に大きなボリュームを見せてきていますというところをご紹介させていただきました。

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 というわけで、従来から続くインテリアスタイルという視点と、盛り上がり続けるライフスタイルという視点。目指されるスタイルの種類でどれに強い傾向があり、そのスタイリングにどんな特徴があるのか、付与されているタグから、この2種類を区別して分析いたしました。

 まず、グラフで色分けしているのがその2種類になるんですけれども、まず青色の部分がインテリアスタイル。そして緑色の部分がライフスタイルの分類、何を大切にしたいかみたいなところの目線で住まい空間やインテリアを作られているというところです。

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【水上】これは一人の方が複数付けているケースもありますか?

【竹内】はい、ミックスされながら複数のタグを付けられてる例もあります。しかし全体を見てみると、それぞれミックスされてるといいながらも、やっぱりそれをそれぞれ標榜されている方々の中でけっこう重なり合う部分もあるんですけども、ちょっとした特徴の違いが出てきます。それぞれのスタイルの傾向が見えてくるんですね。この先、それをいくつかご覧いただきたいと思います。

インテリアスタイルからのコーディネート

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【竹内】まずはインテリアスタイルの話から。憧れや自分の好みのコーディネートを再現したいみたいなところのコーディネートになりますけれども、ランキングはこんな感じで。

 上位から、まずカフェ風からですけれども、カフェ風はどんな傾向があるのか。

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 一口にカフェといっても、いろんなスタイルのカフェというのがあります。共通している部分だったり、強い傾向が出るのはなんだろうというところをお話しますね。カフェ風は主に海外風のトーンが多いのですが、そこにカフェ風のアイテムだったりとかそれを飾るための設えをしっかり自分でDIYなどで構築されて、さらに賑々しく演出される。元々カフェってお店ですから、お客様を楽しませるような演出もあるかと思うんですけれども、そういったことをおうちにも加えている。例えば右の写真ではCAFÉとかSEAとか文字が置かれていますが、いわゆる家事に必要な物だけじゃない物も演出されるところは、カフェ風の方ではよく見られる演出ですね。

 次にナチュラルというスタイルですが、ナチュラル風の方はまずベーシックなトーンというのがあって、そこに何かを加える感じになります。よく選ばれるのが白とかウッドのトーンですね。

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【水上】木目調ですね。

【竹内】はい、それもちょっと白によったものになるんですけども。そこに、様々な無垢の素材感ある設えや道具が入っているというのが特徴です。左でも例えばその白や木のベースの中に、照明でちょっと特徴が出ていたり。右の写真は吊りの照明が、際立った印象出てますけれど、真ちゅう系の素材やガラスのボールを使われていたり。そして目立っているのはブルーのタイルですね。こういった、ただ全体がフラットな造りではなくて、空間そのものを構成するパーツで、ちょっと素材感がある、温もりがあるみたいなところを選ばれるという傾向です。

 次のスタイルを見てみましょう。北欧インテリアです。

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 これはカフェ風の区別とつきにくいという話もよく聞いたりするぐらい、重なる部分も多いのですが、変わってくる部分というと、まず色ですね。グレーとかブルーのトーンをベースになりやすくて、そこにいろんな物が配置されていく。例えば、ウッド調が家具や棚板みたいなところで出てきて、そこにさらにいろんな道具が配置されていく。道具を見せるためにディスプレイ棚とかのDIYに積極的に取り組まれる例が多いのは北欧インテリアの方の特徴かなと。道具はできるだけ最小限の物を選ぶ傾向がありますが、好きなキャラクター性のある物というのが登場します。特に、ビビッドな色が配置されやすいというのが、特徴的かなというところですね。

ライフスタイルからのコーディネート

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【竹内】次にライフスタイルの分類を見ていきましょう。大切にしたいものだとか、自分が目指したい姿を意識したコーディネートには、それぞれどんな傾向があるのか。

 はじめに、「子どもと暮らす」ライフスタイル。子どもと暮らすからといって、すごいキッズっぽいインテリアかというとそうではないんですね。じゃあどんなインテリアかというと、まずインテリアスタイルもミックスしながらみたいな感じで、北欧とかグレー系を組み合わせる方というのが傾向として比較的多い。そして、際立った特徴として大事なところで、例えば吊り下げ活用とかの利用が控えめなんですね。一般にたくさん見られるよっていう話はしたんですけども、このライフスタイルの方々は例えば1か所とかなんですよね、左の写真でも。

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【水上】ああ、レンジフードのところに1個ありますね。

【竹内】そう、1か所だけふきんみたいなのがぶら下がってると。右の写真では冷蔵庫の横にはさみが1個ぶら下がってたりとかしますけども、これはお子さんが使われる可能性とか、誰かがキッチンを使うという意識を感じられる。危険性、もしくはその安全性というとことを配慮にしているのではということで、利便性を高める点では過剰にならない。

 次のスタイルは、「植物のある暮らし」。

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 こちらはミックスされるインテリアスタイルでいうと、けっこう幅広いバリエーションがあります。例えば次の資料での左の写真はアメリカンなスタイルですけれども、右の写真はシンプルモダンなスタイル。これらに植物を追加する。自分の好きなスタイルの空間を引き立てようみたいな目的の印象ですね。逆に大掛かりなDIYを同時にするケースというのは少ない傾向を受けます。自分の好きなトーンがあくまで前提で、そこにみずみずしさや季節の彩りを加えるみたいな意図が強いのかなと思います。

 最後に、「古いもの」とか「レトロ」を大事にするライフスタイルですが、これは「ていねいな暮らし」とかというところにも重なってくる部分があるのかなと。こちらは無垢な素材であったりとか、機能的に本質的な部分だけ残された道具、そういった物に非常に愛着があって、それを見せたり、大事にするような空間づくりというところが特徴的ですね。プラス、家事効率を重視された空間づくりというのも積極的にやられる。例えば左の写真なんですが、コの字型をさらに拡張したロの字型のキッチンみたいな。

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【水上】めちゃくちゃ使いやすそう。

【竹内】このダイニングテーブルのような部分は大きな作業台にもなっていて、非常に奥行きが深い。こういったように、空間の使い方の優先度が違ったりするのかなと。

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 いろんなスタイルを見させていただきましたが、ソーシャルメディアでそれぞれのスタイルが、いろんなベクトルでノウハウが熟成されているという現状がわかります。より高度なレイヤーで、自分らしさを具現化するような状況になっている。それこそ棚まで自作しちゃうとか、そういうことですね。キッチンが、自分が標榜しているライフスタイルを体現していく、実現していくみたいな場所になっていってるということがより強く意識されている現れかなというところですね。

ライフスタイルの多様化により変化するキッチン

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【竹内】スタイル別の観点をいろいろご紹介させていただきましたけれども、最後に、これらのライフスタイルに対してどうキャッチアップしていくか、また今後まだまだ変わっていくライフスタイルをどう捉えて、提案していくのかというところで、調査を通した発見をお届けしたいと思います。

 1枚の写真とともにお話ししたいと思います。まったく別の投稿イベントから持ってきました。「あけて見せてね!冷蔵庫の中」というイベントに投稿された写真です。冷蔵庫の中、僕が一番注目したのは、一番上の段の部分です。

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【水上】ペットボトルが詰まってますね。

【竹内】そうなんです。この方、コメントで「宅飲みの時間が最近すごい増えた」とおっしゃっていて、なのでドリンクがそこかしこにあるんだなというのがわかります。しかも、一番上は炭酸水。ストックがいつもあるような状態になっている。これ、宅飲み時間が増えました、それってどういうこと?を今の状況と照らして振り返ると、おそらくコロナ禍によるおうち時間の充実というのがやっぱりあるのかなと。ライフスタイルそのものが、外的要因や内的要因によって変化していくということが、こういう形で見えてくるんだなというところですね。例えば今のようなおうち時間が充実してきましたという話だったり、もしくは共働きや、家事に対する効率化という目線は非常に話題ですね。時短だったり、頑張らないでいかにやるかみたいなことだったりとか。もしくは、食の嗜好性も変化してきて、例えば炭酸水を毎日飲むという人は10年前にはなかなかいなかったと思うんですけども、そういった方々が増えて、従来、炭酸水を入れるはずじゃなかった場所に溜まってくるケースができたりする。

【水上】そうですね。本来飲み物が置かれる場所じゃないところにもこうやってギッシリあったり、冷蔵庫の使われ方や中に入れる物も変わってきている。

【竹内】そうなんです。元々、飲み物ってだいたいサイドポケットが専用の場所でしたもんね。

【水上】牛乳とかが入ってるところですよね。

【竹内】はい。今は飲料も種類や消費量が増えて、あと調味料もかな、ボトル系のものがどんどん増えて、そういった変化もあるのかなと。

 冷蔵庫の中のことをお話ししましたけど、例えば他の目線としては、写っているキッチン家電も、変化を見つける兆しになるのかなと思っていて。

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 グラフでいうと、下の方を見れば見るほど、と私は思っています。例えばコーヒーメーカーとかは非常に所有率が伸びてきている。エスプレッソマシンが、お求めやすい物が増えてたりした影響ですね。さらに下の方にいきますと、ソーダストリームやホットクックがあります。炭酸水を常設する設備としてのソーダストリームだったりとか、自動調理器とも呼ばれるホットクック、そういった物を使って家事との付き合い方を変えるみたいな意志を感じられる方、いろんなベクトルにそういった方々というのは存在してるんだなというのはここのアイテムから受け取れるかなと。

【水上】ホットクックとかは相当大きいですからね、炊飯器と同じぐらいの物がもう一つあるみたいな感覚ですよね、置き場所的に。

【竹内】そうですね。いまホットクックって、ブームになりつつも置き場に困るみたいなことは言われる方もいらっしゃって、炊飯器と置き換えようか、というようなことも。そういった専用の置き場というのは従来考えられてなかったからこそ起こっている、そういった話題もありますよね。

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 そういった専用の置き場というのは従来考えられてなかったからこそ起こっている、そういった話題もありますよね。従って、個々のライフスタイルの中で新しく選ばれていくアイテムというのが、今後周辺の設えとか空間を変えるトリガーになってますよね。

 家電の話もしましたが、先ほどのライフスタイル、自分にとって大事にしていきたいものという目線ももっと大事になってくるのかなと思っていて。例えばこちら、旦那様がお持ちのお酒のコレクションを飾るための棚を奥様が作られた、というキッチンの写真です。

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【水上】これは見事ですね。

【竹内】はい。アルコールの棚を自分でDIYしてグラスホルダーまで付けて、まさしくバーのようなんですが、右の写真、ちょっとここから引いたカットを見ていただくとわかるとおり、キッズスペースが近くにあったりするんです。あまり宅飲みしないけれどもお酒はいっぱいあるので、お酒が一番魅力的に見える形で配置できる棚を作られたということなんですよね。例えばこういった自分が大切にしている所有物による設えの変化だったりとか。

 この視点は、物だけではないとは思っていて。次の例は「子どもと料理」みたいなテーマですけれども。

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 まず左の写真、無印のふた付きのごみ箱がちょうど次女の身長に合うのでここにまな板を置いて作業させていますと。この方、右の写真でご覧いただけるとおり、コの字型のキッチンに非常にこだわられていることをコメントで伺える方です。お子さんが二人いらっしゃって、いつも子どもたちと料理してる姿がアップされている。複数人でやるときに動線がぶつかり合わないというところで、コの字型のキッチンは非常に使い勝手が良さそうですよね。そもそもキッチンの作り自体に求めるものがアイランド型かどうかという話ではなくて、作業台もそうですが、子どもと一緒に使いやすい形というのは何だろうか、みたいなところから発想されていくべきかなと。

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【水上】そうですよね。おそらく、現代の多くのキッチンは専業主婦が多い時代に、一人が作業するのに最適化した形でできているのかなと。共働き世帯で二人同時に作業しようと思ったら動線がクロスしてやりにくいという話も、けっこう聞いたこともありますしね。家族が参加するというところで、やっぱりそういうベースの形も、もうちょっと多様化してくるのかもしれないなと思いますね。

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【竹内】そうですね。ライフスタイルによってアイテムのレベルからキッチンというのは多様化はわかりやすい発見がありました。従来キッチンを作る時は、どういった形や素材がいいですかとか、機能や間取りから入ったりしていた。でも、これからはミクロ視点、今どういった物が生活者の生活の中にあって、それはどういったライフスタイルを取り入れたいと思っているか。そこからキッチンの姿を作る提案ができると、こういう多様化するライフスタイルにおいて、より良い提案が作れるかなと感じました。

まとめ&クロージング

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【竹内】まとめます。キッチンは住まいの中でも生活者によって特にカスタムされる場所で、自分らしさの表現とか家事を効率化する目線でカスタムされる。ライフスタイルによって、カスタムの仕方は大きく変化しているという、いろいろな傾向が見て取れました。これを変えているのが個々のミクロなものだというところで、今後、従来型の間取りの目線だけではなくて、みなさんが大切にしているライフスタイル、そういったものに対して登場するアイテムや関わる人、そういったところが何なのか、ミクロな視点に注目していくと、今後も姿が変わり続けるキッチンをリードすることができるんじゃないかと感じたというところです。

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 RoomClipの中で、写真を何か特定のテーマで集めたいとか、こういうテーマの話題を盛り上げたいんだけどという時に、投稿キャンペーンがご活用いただけます。そして、調査だったりとか、もしくはコンテンツ活用だったりとか、ないしはプロモーションだったりブランディングみたいなところで、RoomClipいろいろ活用が可能かなと。ステイホーム対応みたいなところもどんどん広がってきてますので、ぜひご相談いただければなというところです。

 みなさん、ご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

【水上】ありがとうございました。

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