東洋美術学校 高度コミュニケーションデザイン専攻 卒業制作図録 2020
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東洋美術学校 高度コミュニケーションデザイン専攻 卒業制作図録 2020

例年、東洋美術学校ではとくに図録などは作成していなかったのですが、今年は感染症の影響から卒業式は大幅に規模を縮小。卒業制作展示も開催できたものの、例年のような盛会には当然、いたりませんでした。

そうしたこともあり、1月末頃に図録の作成をおもいつき、結果としてこれが僕自身の東洋美術学校における最後の仕事のひとつとなりました。無謀な予算と納期のなか、素晴らしい仕事で応えいただいた精興社に感謝ばかりです。

ページ数の関係もあり、中盤以降は高度コミュニケーションデザイン専攻の教育プログラムとその経緯、それから各専門領域の講師と受講生の対談を掲載することになりました。じつはこの対談、2年前に収録したものの諸事情によりお蔵入りとなっていたもの。

今回の企画がたちあがった折、たまたま目にしたところ、とてもいい内容だったので、ここで掲載することとしました。タイポグラフィ領域からは河野三男講師、インタラクティヴ・デザイン領域からは大林寛講師、セールス・プロモーション領域からは和田隆次講師、環境デザイン領域は竹内誠講師、基礎領域は不肖私です。卒業生にしてみても、授業のようすをおもいだすきっかけになるかもしれない。いずれにせよ、日の目をみてよかったです。当時、対談にご協力いただいた講師のみなさんと、在校生には感謝ばかり。

卒業制作図録の内容自体は個人情報のかたまりなので、ここでは巻末の「あとがき」から文章を引用し掲載いたします。

造本について
高度コミュニケーションデザイン専攻4年間の「声」のために

僭越ながら、あとがきにかえ本誌の造本について巻末に一文、掲載いたします。 造本。つまりBook Designであり、Typography。それは掲載する内容や目的 にあわせ、ことばを可視化し記録するための活字書体、それが印字される用紙、 そしてその印刷方法を検討し、適宜選択する行為でもあります。 料理人は食材を、作曲家は楽器の音色を吟味する。かたちをなすものごと、どれが未然のころ、つくり手はさまざまな検討と選択をおこなうことになります。 ブックデザインにおいて、それは活字の選択、用紙、印刷の選択です。最初 の活字版印刷であるグーテンベルク聖書は、写本を模したブラックレター体が 採用され、大型の版型もあいまって、えもいわれぬ荘厳なたたずまいがあるも のですし、アルダス・マヌティウスによるローマン体を用いた小型の書物は、 ルネサンスの人文主義的な時代を象徴しています。近代造形の人物たちの仕事 をみれば都市化した時代のなか、おおきく響きわたるような声がヴィジュアラ イズされています。書物や活字の意匠には、時代の声、集団の声が内包されて いるのです。 では、高度コミュニケーションデザイン専攻という集団の「声」とはなんで しょうか?本誌においては下記をもちいました。

本文書体|モリサワ 本明朝新小がなM
印刷用紙|東京洋紙協同組合 グラシア 69 kg / アラモード 110 kg / モンテシオン 69 kg
印刷|精興社

これをみて「おっ」と、おもった卒業生もいるかもしれません。

本文書体について
本文書体。いまご覧になっている、このテクストの書体は本明朝新小がなM です。 一年次の特別講義『タイポグラフィ基礎』では、株式会社モリサワと連携し講義と企画開発のワークショップをおこいました。ちなみに、本明朝新小がなM は、 もともとは旧リョービ社の製品。当時から東洋美術学校にむけ学生ライセンス を破格でご手配いただいていました。 なおタイトルの欧文書体にはエリック・ギルによるPerpetuaを採用しています。 国内においてタイポグラファとしてのエリック・ギルを本格的に紹介した書物『評伝 活字とエリック・ギル』(朗文堂, 1999)をしるされた河野三男先生への敬意をこめたものです。彫刻士であり、独自の造形哲学を体現していたギルの文字は独特の身体性が色濃く、それがゆえ美術学校を象徴するような意匠である ことも、その選択理由といえます。

印刷用紙について
印刷洋紙は項目ごとにつかいわけることとしました。口絵はグラシア69kg。 卒業制作の紹介ではアラモード110kg、後半のテクストを中心としたページで はモンテシオン69kg を採用しています。いずれも東京洋紙協同組合の製品です。 東京洋紙協同組合は有志対象の製紙工場見学の企画を運営、それから二年次の印刷演習において長年、無償で印刷用紙のご提供をいただいています。看板商品であるサンシオンとサンルーマー。白色度別にそれぞれ2種類、合計4種をもちいての比較。じっさいの仕事でもなかなかない、非常に贅沢極まりない演習を、いつもこころよくささえていただいています。なみにモンテシオン。これは東日本大震災で甚大な被害をうけた、日本製紙石巻工場の復帰第一弾の製品として2012年に発売されました。じつはこの最初の製品カタログは東洋美術学校の産学連携プロジェクトが作成しています。

印刷について
印刷は株式会社 精興社。こちらも二年次の印刷演習にて、印刷 の実施、それにともなう工場見学を長年受けいれていただいています。 精興社といえば、岩波書店やみすず書房、福音館書店をはじめとした老舗出版社の書籍・絵本の印刷でしられるところ。工場見学時、資料として保管されていた「あの」名著・名作のかずかずを目にし、わくわくした受講生もいるかもしれません。そうした一流のものたちとおなじ基準・精度で本専攻の印刷演 習はおこなわれています。今回もすくない予算とあわただしい納期のなか、的確かつ懇切丁寧な印刷管理をおこなっていただいています。

高度コミュニケーションデザイン専攻においては、産学連携プロジェクトはもちろん、それにかぎらず、さまざまな機会で学外の組織・企業のお力添えにより、授業を充実させることができています。いずれも東洋美術学校の環境設備ではなし得ないところを、カバーしていただくばかりか、それを超える機会と経験をいただいています。卒業生をお祝いするとともに、さまざまな機会をあたえてくださいました学外の組織・企業のみなさまに、あらためて感謝、御礼もうしあげます。

March 2021
東洋美術学校 クリエイティブデザイン科 記

22 March 2021
中村将大

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