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新型コロナウイルスがもたらした放送大学の難易度の変化について

放送大学の卒業難易度はここ数年で激変した。

むろん、特に授業のレベルが変わったということではない。

新型コロナウイルスのせいである。

 筆者は10年ほど前に放送大学で修士を取得(学位は学術だが、内容的には経済学)して後、別の分野で学部卒を目指して勉強中の身であり、また、修士を出してもらった教授のゼミとはいまだに交流がある。
 その経験から、新型コロナウイルスが放送大学にもたらした変化と、その影響による「卒業難易度の変化」について書いてみたい。

1.自分の知る限りの「放送大学での変化」

① Web通信指導の本格導入とWeb単位認定試験の本格稼働

 Web通信指導については、新型コロナウイルス拡散前からちらほら導入されていた。
 しかしながら、Web単位認定試験については(おそらく研究はされていたのだろうが)ほぼ未実装だった。
 それがWeb通信指導についてはほぼ完全普及となり、そしてWeb単位認定試験についても(おそらくWeb通信指導のノウハウの流用などもしながら急いで開発したのだろう)ほぼすべての科目で行われるようになった。
 もともと放送大学の単位認定試験には印刷教材持ち込み可の試験も多かったこともあり、それを前提とした試験問題作りのノウハウもそれなりにあるため、一つ一つの試験が「劇的に楽勝」なわけではないが、少なくとも試験期間のスケジュール管理などだけでも劇的に楽になったということもあり、この一点をもってしても「難易度が下がった」といえる。

②ゼミのWeb化

 もともと放送大学は遠隔教育に対応するためにゼミなどもWeb対応はしていたのだが、新型コロナウイルス前は(教授にもよるが)「基本的には物理的に集まり、これない人をWebでつなぐ」というのが基本だった。
 しかしながら、新型コロナウイルスの影響で、「完全にWeb化」したゼミが多発したことで、「仲間の存在によるメンタル強化」が効かなくなり、そのことで学生にとってさらに強力なメンタルが要求されるようになった。
 この点では「難易度が上がった」といえる。

2.結論

 結論として、一定の要領とノウハウがある人にとっては、学部の卒業難易度はある程度下がったといえる。学部の場合は卒業研究が必須ではないため(できないのは割と悲しいのだが)ゼミのWeb化によるデメリットはもともと小さい。その一方で、とるべき単位が多いため、試験期間のタイムマネジメントは割と厳しい。タイムマネジメントから解放されさえすれば、要領とノウハウさえあれば卒業そのものはそれほど難しくなくなったと言えよう(それでも「それなりに鋼のメンタル」が要求されるのは変わりないが)
 一方、特に修士以上の卒業は一気に難易度が上がっている。放送大学の修士の学生の場合、入学試験が簡単なことから、入学時点で「修士論文を書ける」ような学力や基礎知識がない学生は結構多い。それを1年強の時間をかけて社会経験と根性で克服する学生が多いのだが、(社会経験と根性は放送大学学生の圧倒的優位点である。自分には根性はそんなにないが)その際に仲間との共闘はかなり有効な学力向上手段となる。Webとなると「ゼミの後の懇談」が難しく、実際にあうことによる心理的なつながりの確保ができないというのはやはり厳しい。
 一方で、修士取得に必要な単位数は「それほど多くない」ため、試験期間のタイムマネジメントはもともとそれほど大変ではないため、この点での難易度は大して下がっていない。
 よって、修士取得の難易度は「結構上がった」といえる。

3.学部卒で「リスキリング」

 新型コロナウイルスの拡散に放送大学が相当頑張って対応した結果、オンライン授業なども含めて放送大学という仕組みは「リスキリング」に相当有効なツールに化けた。いや今までだってそうだったという人もいるかもしれないが、さらに効果は高まったといえる。特に遠隔教育やオンラインの経験が乏しい他の大学に比べ、もともと遠隔教育に強かった放送大学の授業の質は相対的に高くなっている。1年間Webアクセスし放題の「選科履修生」ならお試し費用は2万円未満(入学料9,000円+オンライン授業1単位5,500円=14,500円・これで放送授業聞き放題)なので、人生で一度ぐらい試す価値はあるだろう。