その一文を誰に送る

酒は結構好きで、それにもまして居酒屋という空間が好きで、終電までの時間が残っていて腹が減っている状況なら高頻度で居酒屋に行きたい気持ちにかられる。
コロナがやってくる前は暇があれば割と色んな人に「飲みに行こうよ」と送っていたが、対面はリスクだと叫ばれる世の中になってからは、誰かを居酒屋に誘うハードルもなかなかに高くなってしまった。
「飲みに行こうよ」の一文を打つ前に、「仮にこの人からコロナをお裾分けされても“まあしゃあないか”と思えるかどうか」をまず気にして、「逆に相手にとっても自分はウイルスお裾分けフレンド足り得る存在かどうか」も気になって、そんなんしてたらなんだか面倒になって結局誰にも声をかけない、なんてことを繰り返していた。
もう世の中はだいぶ元通りになってきた印象だけどこの癖は未だに自分の中に残ってしまっていて、誰かと居酒屋に行く機会は昔と比べて随分少なくなってしまった。

かわりにひとりで居酒屋に入ることが増えた。ビールを頼み、肉っぽいものと野菜っぽいものを二つずつぐらい注文して、最後に米っぽいものを食って一時間もしないうちに店を出る。その間にだいたい三杯ぐらい飲んでいる。最初のうちは格好つけてカウンター席で文庫本を読んだりしていたが、酔っ払うと頭にひと文字も入ってこなくなるので、近頃はずっとスマホをいじってLINEの連絡先を眺めながら「もしこの場に誘っていたとしたら誰に声掛けてたかな」なんていう本当に何にもならない行動をとっている。
こんなん絶対誰かと来た方が楽しいに決まってるだろ、とか思いながらお会計を終える。

肉体はゆっくりと、しかし着実にクソジジイになってきている。翌朝まで随分酒が残るようになってきた。飲み会前にはウコンが欠かせない。
「歳をとるとさ、長時間寝る体力が無くなっていくんだよね」とかいう、年配の人たちが口にしていた意味の分からない言葉の意味もなんだか分かるようになってきた。
この前は普通にラーメンを食っただけでお腹をくだした。はちゃめちゃに壊れた。
でもまあまだいける。身も心も身の回りの環境も含めて、居酒屋に行きたがる気持ちが自分の中にちゃんと残っているうちは、色んな人と色んな暖簾をくぐりたい所存でございます。


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