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あなたに私は絡みつく 第24話


第24話 欧介


「…触りたいって言ったのは、律だろ」

もう止められない。どうしてくれるんだ。煽りやがって。

「ち…違う、やなんじゃ…なくてっ…」

ごそごそと動いて、俺から離れようとする。離したくなくて、さらに引き寄せた。耳にキスしたら、律の身体がびくんっと跳ねた。不自然に腰を引いている。

これは。

「律……もしかして、勃った?」

「……」

律は下を向いて、黙っている。信じられないだろう、男相手に欲情するなんて、まだ若い律には受け入れられるはずがない。
少し考えて、言った。

「…おいで」

律の手を引いて、ソファに座らせた。
前屈みになって、恥ずかしそうに顔を背けている。当たり前だ。キスとは訳が違う。だけど、愛おしくて、可愛くて、こっちもぎりぎりだ。
怖がらせてはいけない。慎重に。

「…抜いてあげようか」

「えっ…」

「律が嫌じゃなければ、だけど」

「……ずい」

「え?」

「…恥ずい…」

口を押さえて、くぐもった声で律は答えた。

「でも…そのままじゃ辛くない?」

「……」

ソファの上のクッションを手渡して、こう言ってみた。

「恥ずかしいなら、それで顔隠して。見なければ…大丈夫だよ」

律がイく顔を見たいのは山々だけど、今は仕方ない。律にとっての、人生初の非常事態宣言発令中だ。
律はクッションを受け取った。顔の前で力一杯抱きしめているが、目だけは出している。俺は出来るだけ優しい表情を作って、言った。

「嫌だったら…言って。すぐやめるから」

キスした時もこんなことを言った気がする。
やめることなんか出来っこないのに。俺はそっと、スウェット越しの律のそこを撫で上げた。

「…っんっ…」

それだけで、律の全身がびくついた。出来るだけ優しく触れるつもりが、その熱さと昴ぶりに、俺の理性がじわじわと崩壊していく。
スウェットと下着をまとめて降ろして、もうしっかりと勃ちあがったそこに口づけた。匂い立つ、むせかえるほどの若い香り。

「おっ…欧介さ…、そんな…っ汚いよっ」

「風呂入っただろ。汚くないよ」

「で…でもっ…っ…それ、やば…」

耐えられなくて溢れ出した先走りが、俺の舌に絡みつく。
鈴口を口の中に含んでやると、声を殺して震える。おそらく今まで感じたことのない快感が、律を蝕んでいる。そう、信じたい。
俺に咥えられて、悶える律が目の前にいる。
当然、自分自身も痛いぐらいに昴ぶっていた。

淫猥な音がする度に、クッションを抱えた律は顔を赤らめて、あ、あ、と声を上げた。
自分の性器を無心に口に含む俺を、どんな気持ちで見下ろしているんだろう。律は途中で気持ち悪い、とは言わなかった。

「お…すけさんっ…っ…も…出るっ…」

脚をがたつかせて、律が叫んだ。
俺の口の中で、びくびくと震えだしたのタイミングで、解放した。

「んああっ…っ」

勢いよく飛び出した白濁の液が、俺の顔と首に飛んだ。

「ご、ごめん、顔、に、あっ、どうしよ、俺っ…」

赤くなったり青くなったりしながら、律は慌てた。が、顔についた白いものを指で拭い、それを律の目を見つめて舐めた俺に驚いたのか、ぴたりと止まった。
俺は半ば投げやりに聞いてみた。

「…気持ち悪い?」

律はぶんぶんと、首を横に振った。俺は、顔を近づけて囁いた。

「俺は…律の身体のどこにでもキスできるよ。そういう対象っていうのは…こういうこととか、もっと…進んだことも、だけど」

立ち上がって、茫然とする律を見下ろして、俺は笑った。
気づいたら、ひとりでに口走っていた。

「これ以上はするつもり、ないから。ごめん……嫌わないで」

今度こそ二階の寝室に向かって、歩き出した。勃ちあがったままの自分自身を、丈の長いTシャツで隠して。
なのに背中を向けた俺に、また律が抱きついた。今度は俺がもがく番だった。

「律、今は、やめ…っ」

「なんでいっつも、そんな悲しそうなんだよ…っ嫌わないでって何?!」

「……っ怖いんだよっ!」

律に身体の熱を悟られないようにしながら叫んだ。
この怖さが、分かるはずがない。手に入れたと思った途端、背を向けて去っていく。
悪い、やっぱり女がいい。みんなそう言う。

「怖いって何が!何か悪いことしてんの、俺らって!」

律が俺の背中に貼り付いた。顔をぴたりとつけて、叫ぶ。

「男が男好きになったらだめだって法律でもあんのかよ!捕まんの?!
だったら一緒に捕まってやるよ!とりあえず、こっちは写真で抜くくらい好きだって言ってんだから、いちいち罪悪感感じるのやめてくんない?!」

どうしてこんなに強いんだ。
こんな俺の胸の中に飛び込んできて、どんどん手を引っ張っていく。

「俺は欧介さんを好きになって、楽しいことばっかなのに、何で欧介さんはそんな辛そうなんだよ…俺が迷惑なら言えよ!」

「違っ…」

「俺だって…勝手に東京行くとか言って、置いていく欧介さんなんか嫌いだし!」

「律!」

もっと早く出会ってれば、もしくはもっと遅く出会ってれば良かったのか。

俺は振り向いてもう一度律を抱きしめた。
律も、俺にしがみついてきた。貪るようにキスをして、舌を絡める。
昴ぶっているのがバレるのなんか、もうどうでも良かった。
律が欲しい。
彼の手を、自分の足の間に導いて俺は言った。

「律…わかる?もう…俺も限界なんだよ…」

律が目を見開いて、俺を見上げた。半開きの口で、あ、と呟く。

「二階…行くか」

返事の代わりに、律は俺の腕をぎゅっと掴んだ。


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