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『7人の聖勇士の物語』第16章 ウェールズの勇士、聖ディビッドの死

こんにちは。
いつもお読みくださりありがとうございます。

帯状疱疹になりました。
帯状疱疹というのは、「末梢神経に沿って水疱(すいほう)性の発疹が帯状に生じる皮膚病」(『明鏡』による定義)です。

小さい頃に水ぼうそうに感染したときのウィルスが長い間体の中に潜伏し、後年になって加齢、疲労、ストレスなどで体力が弱ったりしたときにウィルスが再活性化して発症するのだそうです。

最初、左側のおでこに小さくて赤いポツポツが2,3個できたのですが、私は水ぼうそうにかかった覚えが全く無いので、まさか帯状疱疹だなんて思ってもいませんでした。その前日、帰宅が遅くなったうえにとても疲れていて、お化粧を落とすのがおろそかになってしまったので、毛穴が詰まってニキビができたのかな~と思っていました。

でも、その翌朝、鏡を見たら、おでこの赤いポツポツが500円玉くらいの範囲に広がっており、おまけにピリピリと痛かったので、皮膚科で診ていただくと、「帯状疱疹です」とのことで・・・。

すぐにアメナリーフというお薬を処方していただき、7日間欠かさずのむように、と言われました。3日目くらいから痛みがやわらぎ、赤い範囲も少しずつ小さくなってきました。ほっと一安心です。でも、絶対かからないと思っていた病気にかかったので、本当に驚きました。これからは、あまり疲れたりストレスをためたりしないよう、気を付けようと思います。

※今日の写真はおネギです。フォトギャラリーからお借りしました。下の物語をお読みくださればこの写真をお借りした訳がおわかりいただけると思います。

『7人の聖勇士の物語』の続きです。
勇敢な聖勇士たちも年老い、最期の時を迎えます。今回はウェールズの聖ディビッドの死の物語です。

『7人の聖勇士の物語』
第16章 聖ディビッドの死

気高い騎士ウェールズの聖ディビッドとその忠実な従者オゥエン・アプ・ライスが異国での旅の道中に成し遂げた勇敢な偉業の全てを物語ることは筆にも人の口にもできないことでしょう。

とうとう彼らといえども絶え間ない危険な冒険に倦み疲れ始めました。老齢が聖ディビッドの目の輝きを曇らせ、腕の力を失わせ始めました。しかし、彼の胸の勇気を弱めることはありませんでした。

さて、異教徒の野蛮人の軍勢が聖ディビッドの故国を襲撃しようとしているという知らせがもたらされました。故国に尽くすためには一刻の猶予もありません。聖ディビッドは、故国への帰途、勇敢な騎士たち、従者たち、兵士たちを集めました。彼らは全て、聖ディビッドと忠実なる従者オゥエンが旅の途中で知り合いになった者たちでした。こうして、ウェールズの国境に到達する頃には軍勢が集まっておりました。大軍ではありませんでしたが、並みの男が10倍の人数いても敢えてやろうとはしないような偉業を成し遂げることができる者たちばかりでした。

彼らは闘いの準備を整え、敵を探しながらウェールズに入りました。状況は悲惨でした。町々から住民は追い払われ、家々は引き倒され、修道院は略奪され、小麦畑は焼き払われ、農園は破壊されていました。洞穴や森の中からは不幸な人々が出てきて聖ディビッドを救い主として歓迎し、彼の勝利を祈りました。

こうした光景に年老いた勇士の闘志は燃え立ち、故国から敵を追い払わないうちは決して休まないと彼は誓いました。しかし、その仕事はたやすいものではありませんでした。敵はその数夥しく、獰猛かつ勇敢で、武芸の訓練を受けておりました。

ウェールズの年老いた吟遊詩人たちは竪琴をかき鳴らし、戦士たちが戦場で勇敢に奮戦できるよう励ましました。

しかし、多数の裏切り者の騎士たちが異教徒の軍勢に加わったことが判明しました。裏切り者の騎士やそれに付き従う者たちは、ウェールズの勇士や異国から彼に同行してきた騎士たちと殆ど変わらない武具に身を包んでおり、見分けがつきませんでした。

戦士一同を周りに呼び集めると、聖ディビッドは演説で彼らに呼び掛けました。その呼掛けは、彼らの勇気を奮い立たせ、最高潮に高揚させました。そして彼は次のように締めくくりました。

「では、私に従え、我が勇敢な戦士たちよ!私が突撃の合図をする。何千もの敵が倒れるであろう。見よ、我が旗印として兜にこのリーキをつける。もし我々が勝利を得たら、以後ずっとリーキはウェールズ中で尊ばれるだろう。そして、3月1日には全ウェールズ人によって我々の勝利の記念として身につけられるだろう。」
※「リーキ」はネギ科の植物で、ニラ葱、西洋葱とも呼ばれます。ウェールズの国章として知られます。

吟遊詩人たちは三度竪琴をかき鳴らし、喝采の声は高く長く演説に答え、ウェールズの戦士たちは手に手に大きなリーキを摘み取って兜や被り物につけました。これにより、どんなにかすかな光の中でも敵から味方を見分けられるようになりました。

すると、一人の吟遊詩人が進み出て、悲しみに満ちた曲をかき鳴らしました。
「我が歌う歌は悲しきかな、
 そして我がもたらす知らせは悲しきかな、
 多くの勇敢なる騎士、多くの大胆なる戦士が
 今日この日倒れ、
 土に戻るであろう、
 足の速い時が老いる前に。
 最も気高く最も善良なる者が夜が来る前に死なねばならぬ、
 残酷なる異教徒の軍勢が背を向けて逃げていく前に。」

詩人の言葉は勇敢な老戦士の耳に響きました。彼はどんな時も自身の武勲を軽んじたことは一度もありませんでしたし、真に国を愛する者らしく、故国のために自身を犠牲にする準備は常にできておりました。そこで彼は次のように決心しました。「もし万一闘いの流れが味方に著しく不利となった場合、自分は敵の軍勢のさなかに突撃して気高い死を遂げよう。味方は自分に抱いている愛ゆえに、遺体を取り戻そうと敵軍のさなかに突撃し、必ずや勝敗の命運を回復してくれるであろうから。」

まるで馬上槍試合の開始を命じるかのような朗らかな声で、気高い老戦士は取り決めた突撃の合図をしました。ウェールズ人の軍勢は猛然と突進しました。彼らは勇敢に異教徒の敵と相まみえました。敵は突撃の返礼をしましたが、その勇猛さたるや、もっと良い戦いの大義にこそふさわしいものでした。両陣営とも、多数の者が血に染まった野原に倒れ、二度と起き上がることはありませんでした。

一騎、また一騎と、異教徒の棍棒と戦斧の強烈な打撃に倒れ、愛国の軍勢が勝利を得る可能性はほぼ無いように思われました。キリスト教軍は雄叫びを上げて突進しましたが、無駄でした。頑強な異教徒たちが立ちはだかり、突撃を阻んだのです。

ついに、聖ディビッドは、今朝ほど、吟遊詩人が預言した言葉を思い出し、最も勇敢な騎士たちを周囲に集めました。そして、面頬をはね上げ、顔を見せました。そこには晴れやかな微笑みが浮かび、愛国心と勇武が表れておりました。

「この国で最も気高い者が、今日、闘いに勝利する前に倒れなければならぬとの預言だ。」彼は大声で言いました。「もし私がそのような者であれば、死によってそれほどの誉れを与えられることを幸せに思う。突撃せよ!勇敢なる騎士たちよ、行け!」

これが彼が言った最後の言葉となりました。こう言いながら、気高い勇士は闘いが最も密集しているところへと突進しました。百の戦斧が彼の兜に打ちかかり、百の剣が彼の脇腹を刺し、百の槍が彼の恐れを知らぬ胸を突き、百の矢が彼の頭を射ました。百の傷に刺し貫かれて彼は倒れました。しかし、彼に続く者たちは勇敢に彼の死の復讐を果たし、異教徒の群は敗走しました。以後、聖ディビッドは、今日に至るまで、全ウェールズ人の愛情に満ちた記憶の中にとどめられています。それは彼に実にふさわしいことです。

今回はここまでです。
お読みくださり、ありがとうございました。

次回をどうぞお楽しみに!


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