大人

もうすぐ二十歳。本当に大人になるときが来るって思ってなかった。
ずっと中学卒業しないと思ってたし、高校入学したのかよく覚えてないし、高校卒業したのも変な感覚だ。
中学生の頃にかっこいいと思ってた高校生は、いざ自分がなってみると全然かっこよくない。高校生の頃に大人だと思ってた大学生は、いざ自分がなってみると全然大人じゃない。
一生大人になれない気がした。
だって、あんなにかっこよくて大人だと思ってたのに全然自分はそんなのにちっともなれてない。
まだいつでも高校生に戻れる感覚だし、なんなら中学だって卒業したことはまだ変な感覚だ。
時が止まってる。もうすぐ二十歳になることをまだ信じられない。
だってまだこども。部屋の片付けは苦手だし、ご飯だって毎日作れないし、免許だってまだ取ってない。いまだに毎日遅刻ギリギリの生活だし、感情のコントロールは下手っぴなままだし、絶対叶えたい夢も見つけられてない。
きっとこのまま気づいたときには次は20代が終わってるんだ。歳をとることが楽しみだった10代が終わって、もう歳をとりたくないという気持ちとこれから付き合っていかなきゃいけないのか。

変わっていく、自分の周りの様々なものが変わっていく。変わらないものって何だろう。
自分も思考も他人も環境もこの街並みもとめどなく変化していくし、いまも変化の途中なのだろう。変わるのって怖いな。

高校生が終わったら、もっと不自由になると思ってから、人生も終わるような感覚でいた。だから、ずっと今更何をやっても遅いと思ってきたし、本当にやりたいことは心の奥底に隠して蓋をした。でも今までより不自由どころか自由になってしまったから、最近になって、今からでも遅くないという気持ちになれるようになった。蓋を開けて取り出してみようかなという気持ちにもなっている。今までよりも、自由で不格好な大人に近づいた今の方が、なんだか心地よい夢を見れるようになった気がする。大人になったら夢は見ないものだと思ってた、やっぱり大人は分からない。

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