六畳のえる

小説書いたり、唎酒師とって日本酒エッセイ書いたりしてる人事系コンサルタント。 普段は色…

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小説書いたり、唎酒師とって日本酒エッセイ書いたりしてる人事系コンサルタント。 普段は色んなことにくよくよしながら生きてます。 https://twitter.com/romans_et_cafe

最近の記事

須藤海の検索ミステリ 第4章 鍵は動画の中にある(後編) ※最終話

「海さん、どうしますか? 香帆さんに連絡取ります?」 「いや、和沙さんがこれ以上送るのは危険だね。下手なことを送ったら、さっきの動画が疑われてしまう。そうしたらどんな危害が及ぶか分からない。こんな時は……」 「こんな時は?」  彼は右手のピースサインを左頬にくっつける形で答えた。 「うみねこアカウントの出番だね!」 「……はい?」  陽気に答えると、海さんは今月上旬に仁衣香さんの事件で使用していた紅茶大好きなアカウント「うみねこ」にログインする。 「これで動画にコメント

    • 須藤海の検索ミステリ 第4章 鍵は動画の中にある(前編)

      「それ、面白いでしょ?」  空き時間にちょこちょこ読んでいた全三巻の「監視カレシ」を読み終え、ページを閉じた瞬間に、海さんがウキウキした様子で聞いてきた。自分が既に見ている映画をちょうど見終えた人と、あのシーンが良かった云々と感想戦をしたがる高校時代の友人を思い出す。 「そうですね、最終的に彼女が懐柔されるのが、そんなにうまくいくかなって感じではあるんですけど、ラブコメとしては面白かったです」 「だよね。前半の監視のシーンもリアリティ―あって良かった。盗聴器のところとか、

      • 須藤海の検索ミステリ 第3章 ターゲットをフォローして(後編)

        「所謂、谷根千エリアか、確かにカフェが多いし、安い店も多いし、学生には重宝する町だね」 「やねせん? そんな駅ありましたっけ?」  海さんはマップを拡大し、上野の少し北部、JRの鶯谷駅付近を中央に映して見せる。 「谷中・根津・千駄木エリアを合わせて谷根千って呼ぶんだ。東京二三区の中心地に近いのに、下町の風情も残してる人気スポットだよ」 「あ、なるほど、頭文字を取ってるんですね。一人散歩のときに何度か歩いた気がします」  歴史と情緒の溢れる町って感じで、散歩にはピッタリ

        • 須藤海の検索ミステリ 第3章 ターゲットをフォローして(前編)

          「今日めっちゃ寒いな……」  講義棟の三階で二限のチャイムを聞きながら、隣の赤都は机にぐでっと突っ伏し、手で自分自身を抱くようにして腕を擦って温めている。俺もそれを見ながら「分かる、もう冬だよ」と体を揺らした。十一月に入って二日目、過ごしやすい秋の気候はすっかり鳴りを潜めた。冷え込む日が続くので、たまに暖かい日が来ても嬉しいというより体調を崩さないか心配になってしまう。 「あ、何それスマホケース、めっちゃオシャレじゃん」 「だろ? この前鎌倉に行ったときに北欧系の雑貨屋で

        須藤海の検索ミステリ 第4章 鍵は動画の中にある(後編) ※最終話

          須藤海の検索ミステリ 第2章 元カレはどこに(後編)

          「良かったですね! これで大分探しやすくなりました」  新宿から三十分くらいとなれば、東京・埼玉・千葉・神奈川に絞られる。それに、東京以外でもかなり東京寄りの場所に限られるはずだ。 「ずっと聞いてた甲斐があったよ。やっと手がかりを掴めた」 「ずっと……?」 「ああ、うん。あれから聞いてるよ。いやあ、虎月君って声が良いから聞き疲れないね! 色々プライベートなこと話してくれるからどんどん興味出てきちゃうよ!」  立ち上がってグッと伸びをしながら、彼は大きく欠伸をした。昨日よ

          須藤海の検索ミステリ 第2章 元カレはどこに(後編)

          須藤海の検索ミステリ 第2章 元カレはどこに(前編)

          「今日は全体的に気温が下がり、上着無しではかなり寒い一日になるでしょう」  テレビ画面の右上に「十月一七日(月)」と表示され、なんとなく年末が近づいてきた感じがする。あまり食欲がなかったので、食パンにバターを塗り、その上にふりかけをかけてもしゃもしゃと食べた。実家でよくやっていた食べ方だ。 「SNSをきっかけに相手の住所を知った男性が……」  今日も物騒なニュースをやっている。なんとなく、もじゃもじゃな髪の探偵を思い浮かべながら、薄出のダウンジャケットを着て部屋を出た。

          須藤海の検索ミステリ 第2章 元カレはどこに(前編)

          須藤海の検索ミステリ 第1章 行方知れずの友人(後編)

          「え、裏アカ?」  表に出していないアカウント。赤都がそれを持っていると、彼は推理した。 「須藤さん、なんでですか?」 「ツイート見てごらん。日常のことしか書いてないでしょ?」  ほら、と顎で促された画面には最近の赤都のツイートが出ている。食事の写真、サッカーの話題、秋空の写真、本屋に行ったこと……確かに日常を切り取った呟きだった。 「でも、別に普通じゃないですか? 俺だってこんな感じですし」 「いや、織貴君のとは違うよ。これは綺麗すぎる」  綺麗、を強調する須藤さん

          須藤海の検索ミステリ 第1章 行方知れずの友人(後編)

          須藤海の検索ミステリ 第1章 行方知れずの友人(前編)

          「よし、多分これだ!」  探偵の須藤海は、満足そうに顔を上げ、ノートパソコンに付けている覗き見防止フィルターを外す。そして、向かい合ったソファの真ん中にあるテーブルにパソコンを置き、液晶画面を俺に向けた。 「君のアカウント、ひょっとしてこれじゃない?」  画面に映っている映像を見て、俺の腕に鳥肌が立つ。それは紛れもなく、大学の友人にも教えていない、俺のTweeterのアカウントだった。 「なんで分かったんですか!」  驚いて叫ぶ俺に、向かいに座っている須藤さんは得意

          須藤海の検索ミステリ 第1章 行方知れずの友人(前編)

          六畳のえるって誰よ

          適宜更新していきますが、活動歴をまとめています。 書籍「酔いが回ったら推理どき―酩探偵天沢理香のリカー・ミステリー」(ことのは文庫) 「今夜、消えゆく僕からたったひとりの君へ」(スターツ出版文庫) 「陰キャぼっちは決めつけたい これは絶対陽キャのしわざ!」(MF文庫J) 短編収録書籍「恋テロ 真夜中に読みたい20人のトキメク物語」(富士見L文庫) 『I She』収録 「わたしを変えた夏」(スターツ出版文庫) 『ラジオネーム、いつかの私へ』収録 受賞歴魔法のiらんど 第2

          六畳のえるって誰よ

          イチ参加者でもあるファン視点で綴る、M-1グランプリ2019雑感

          さて、今年もこの季節がやってきた。仕事に忙殺されながらも趣味が高じて毎年予選に出るくらいはお笑いが好きなので、今年も備忘録的に感想を書き殴っておこうと思う。これが来年のネタ作り方向性の参考にもなったりするわけで。 【総評】 15年以内という出場規程等により常連組がいなくなったことで、完全に世代交代を印象づける大会だった。去年の霜降り明星の優勝でその風向きはあったけど、今年は初出場7組という構成を見てもよりその輪郭が鮮やかになったと思う。 ネタのレベルも、特に1st Rou

          イチ参加者でもあるファン視点で綴る、M-1グランプリ2019雑感

          大事なことは全てじゃんけん列車から学んだ

          11月23日は娘ちゃんの幼稚園で勤労感謝のイベントがあったんですよ。 もうね、その案内の時点で「頑張って働いているお父さんに感謝の気持ちを表すイベント」っていう文章で、どうかしてんじゃないかと思ったんですけどね。その書き方だと頑張って働いているお母さんどうするんだと。アンタのところの幼稚園が夜まで延長保育してるのは何のためなんだと。そういう共働きの家庭やシンママの家庭を支援するためにあるんじゃないかと。そういうの全部無視してその文を使うな、何年前から使いまわしてるんだ、カレ

          大事なことは全てじゃんけん列車から学んだ