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【うるま市×N高①】GIGAスクールスタート前の意外な落とし穴!? 〜ICT活用した授業を実施するまでの苦戦とハードル〜

ご無沙汰しております、rokuyou代表の下向です。
2020年度末も迫ってきましたね。株式会社rokuyouでは、拠点を置く沖縄県を舞台に、今年度様々な"グローカル"な事業を行ってきました。

その目玉事業が、うるま市にある島しょ地域における ICT活用島しょ地域 児童生徒交流実証事業です。沖縄県うるま市伊計島に本校をもつN高等学校を運営する角川ドワンゴ学園さんと、うるま市教育委員会と連携し、現地コーディネーターとして授業作り/実施などを行ってきました。


この事業は、生徒数の減少が課題の島しょ地域において、インターネットを活用して学校間・生徒間で取り組む部活やプロジェクト学習などを開発・実施します。地域にいながら、地域内外と連携して課題解決や価値創造に取り組める人材の育成を図ることにより、島しょ地域の特色ある学校づくりに役立つことを目的としています。スタートとなる2020年度は、全校生徒8名の津堅中、4つの島の中学校が合併してできた彩橋中、人口減少がとまらない与勝第二中において「ネット部活」と総合的な学習の時間の2つの枠で授業を実施しました。

未来をつくる教育フォーラム_うるま市×N高取り組み.001

具体的な内容は、
1. ネットに慣れよう!:zoom、google、slack、youtubeなどのオンラインツールに触れ、スキルを高めるだけではなく、オンラインの可能性に目を開くという6週間のイントロプログラム。
2. マインクラフトを使って文化祭を作ろう!:タイトルの通り、Minecraft上のワールドで、グループに分かれ、自分たちの島を舞台にオンライン文化祭を作ることに挑戦。ブロックを組み合わせて、描いたもの/仕掛けを作りました。

新型コロナウイルス感染拡大を受け一斉休校が実施されるなどスタートまでの困難はありましたが、無事にスタートラインにたち8月から無事に授業を3校でスタートさせることができたのですが...
いざ授業を実施してみると、予想だにしなかった課題が視界の斜め後ろ45度から次々と飛んでくるではありませんか...!

今年度中には、沖縄県でも全ての小中学生にひとり一台タブレットが支給されることが決まっており、GIGAスクール構想も現実味を持って推進しなければいけないフェーズにきております。けれど、本当に準備できているのでしょうか?

正直、今に至るまでに「こんな状態では、GIGAスクールなんて夢のまた夢なのでは...」と途方にくれることもありました。この記事では、この事業を通して実際に私たちが直面した課題をシェアすることで、より良い学びの環境を作るための、全国の自治体が考えておくべきポイントを共有できればと思っています。

1. そもそもwifiが弱い

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毎回こんな感じでzoomを繋ぎながらの授業になるのですが... こちら津堅中学では8名しか生徒がいないにもかかわらず、初期の頃は全員がzoomをつなげるとネットが途切れ途切れ、接続が切断されてしまう生徒もちらほら。これだと、授業になりません。離島ということもあり光が届いていないとはいえ、これだとオンライン上での共同作業は困難を極めます。

その後、教育委員会の多大なるご尽力のおかげで、状況はだいぶ改善されましたが、同じような状況の学校はたくさんあると思います。

参考資料:うるま市教育委員会が令和2年度後期に実施しているGIGAスクールスタートに向けてのネットワーク回線の改善を図る事業の仕様書

2. wifiが一部の限られた教室でしか使えない(学校の好きな場所でwifiがつなげる訳ではない)

これは実施した3校ともでしたが、そもそもwifiが飛んでいるお部屋が1教室のみでした。コンピュータールーム、もしくは多目的室(ランチルーム)のみ。もちろん全生徒同じ部屋から同じzoomにアクセスするので、最初はハウリング祭り♪

こうした状況も、うるま市では来年度に向けてだいぶ向上される予定ではあるみたいですが、沖縄でも町全体にwifiが飛んでいる自治体もある中で、正直衝撃でした。タブレットがやってきても、一体どうやって使いこなすのでしょうか。200-300名の生徒が入る学校の校舎、どこでもwifiを使えるようになるには、一体いくらくらいの設備投資が必要なのか。そんなに多くはないはずです。学校の好きなところから、zoomに入ったり、googleドキュメントを他校の生徒と交わりながら編集したり。そんな広い世界と繋がる機会を作れると理想ですよね。

タブレットが教室に届いた先生方。ぜひ、今一度wifiが学校内のどこで使えるのか、使用したい教室で繋がるか、そしてwifiがどれくらいの強度があるのかいろいろ試して調べてみてください。(環境の整備には時間がかかるので、早期発見が重要かと)

3. セキュリティが厳しすぎる

スマホは慣れっ子の中学生たちですが、ローマ字入力のタイピングには不安があったので、初回の授業で楽しく簡単にタイピングの練習をしようと 寿司打 というオンラインのタイピングゲームをやってもらおうと思ったのですが、なんと、アクセスできない!調べてみると、ゲームというゲーム、学習要素があっても教育委員会のネットワーク(firewall?)でブロックされていました。そして、初期の設定では gmailをはじめ、googleの機能全ても使えませんでした。マインクラフトもEducation版でも入れず。何度もポート番号指定してポートを開放してもらうなどしていると、そもそも市のネットワークのセキュリティで弾かれてしまっていたということが判明。(このやりとりに2ヶ月以上時間を要しました...授業が遅れてしまうのでモバイルwifiで対応する日もありました。)

こんなに世界中で当たり前に使えているインフラ的オンラインサービスが使えないなんて... 一体誰のための、なんのためのセキュリティなのか... セキュリティを設計した人に意図と目的を聞いてみたい... きっと子どもたちの安全と安心のために設計されたのだと思うのですが、結果としてその度合いが過剰すぎて子どもたちが社会と繋がり学ぶ機会を失ってしまうきっかけになっている。このようなことは、オンラインのセキュリティの問題だけではないと思います。本当に子どもたちのためにやるべきことと、やるべきでないことを見極めていきたいですね。

4. "オンラインゲーム" に対してとても強い警戒心も持つ教員

「オンライン上で何かを楽しく作る。やりとりをする。」
こう聞くと、警戒心を持つ教員は学校に必ず一人はいらっしゃると思います。特に生徒指導などで、ゲーム依存になってしまった生徒、オンライン上でトラブルをおこしてしまった生徒の対応にあたられた経験のある先生が多いかもしれません。

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オンライン=必ず悪 ではないことを伝えるのに時間がかかりました。「生徒たちにルールを伝え(できればルールを一緒に作る)、狭すぎない決まった枠の中で自由に楽しくやることを見守りましょう。」と伝え続けてきました。マインクラフトの授業が始まっても、疑心暗鬼の先生もいらっしゃりなかなかに苦戦しましたが... 生徒たちが世界に入り込み、凄まじい学習力で様々な機能を使いこなし、新たなものを創造し、安全なクリエイティブ活動を見ると、次第に安堵と驚き、そして誇らしげな笑顔が先生方の顔に表れていました。

終わりに

今回は私たちが出会ったICT教育の現場で起こり得る、ある種初歩的、けれども致命的になりうる課題を4つ共有させていただきました。オンラインやICTは学校というこれまで閉じがちだった存在を、社会に開き世界と繋がる大きなパラダイムシフトをおこしてくれる可能性を大いに持っているものだと思います。だからこそ、デバイスがあるから大丈夫...!という単一的なところに目を奪われるのではなく、多角的にどんな環境整備(インフラだけでなく、関わる大人の姿勢や見方など)が必要か今一度見直すことで、本質的な改革になるのだと確信しています。

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