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教育のアップデートとSELの関係性
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教育のアップデートとSELの関係性

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先日、弊社代表が代表理事を務める 一社)日本SEL推進協会(J-SEL)のイベントとして『教育のパラダイムシフトとSEL』と題して、竹村詠美さんをお迎えしライブ配信を行いました。

盛りだくさんの内容ではありましたが、rokuyouで現在取り組んでいる事業の根幹にも触れる内容でしたので、rokuyouラーニングクリエイターの古屋が、その概要を文字でお伝えしたいと思います。

実際の配信を観たい方はコチラから!

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テーマは、「教育のアップデートにSELがどう寄与するのか(なぜSELが必要なのか)」
7月23日に出版された竹村さんの著書『新・エリート教育〜混沌を生き抜くためにつかみたい力とは〜』の中で、Social Emotional Learningの可能性や事例について言及されており、本の内容を元に様々な角度、竹村さんがご存知の事例などを交えつつ対談が行われ、100名以上が同時に視聴されるなど大きな反響を呼んでいました。

竹村さんの著書はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/新・エリート教育-混沌を生き抜くためにつかみたい力とは-竹村-詠美/dp/4532323460/ref=mp_s_a_1_1?dchild=1&keywords=新エリート教育&qid=1595813105&sr=8-1

【はじめに】Social Emotional Learning(SEL)とは

自尊感情(自分は価値のある人間であると感じられる感情)と対人関係能力を伸ばすことを目的とした教育アプローチです。

Social Emotional Learning
Social
 社会的能力。他者の気持ちや状態に気づくことができる。気づいたうえで他者と良好な関係を結ぶことができる。

Emotional 気持ちに関わる能力。自分がこんなことを感じている・考えているなど、体で感じること/気持ちで思っていること/頭で考えていることに気づく、また、気づいたうえでうまく付き合える能力のこと。

この二つの能力を伸ばしていく教育アプローチです。

SELと道徳は似て非なるもの

SELと道徳は同じではないのか何が違うのかとよく質問されることがありますが、SELと道徳は似て非なるものです。

SEL 自分の内面から社会と付き合う力を付けていく学びで、そこにエビデンスのあるプログラムやアプローチがあり研究されている。

道徳 規範や倫理観、社会での通念と自分との折り合いをどうつけていくかについてクラスでの対話通じて学んでいく。

こういう人/モラルを持っていてほしいよねという出発点ではなく、その人が持っている可能性や感情、考えを最大限に引き出していき、その先に目指したい人物像や社会像があるよねという点が異なります。

日本で今まで取り上げられてこなかったのは、日本には共通している価値観があり、その必要性が認識されてこなかったという文化的、民族的背景の違いがあると思います。

また、礼儀正しくみんなで強調できるんだという自負もあったのだと思います。軽んじられていたわけではないけれど、すでにポテンシャルが高いよねという文脈があり、個人の可能性を引き出すという文脈は学力とのバランスを見たときにどうしても二の次になりがちです。学力を担保してそれからその人の個性を伸ばしていこうねという文脈がありました。

しかし、本当はその文脈は逆で、SELというのは「土壌を耕すもの」で、その土壌の上に「学力の発揮」があります。最近、アメリカでもアカデミックマインドセットという言葉が話題になっていますが、アカデミックマインドセットをもつためには自分のモチベーションや成長マインドセットが準備されていないと調教的な教育(モチベーションや目的意識に全く関係なく、これを学びなさい)になってしまいます。マインドセットが育っていないとモチベーションも育たず、また、学力の結果も発揮されづらいというように繋がっています。

なぜプロジェクト型の学びとSELなのか

プロジェクト型の学びをやる上での土壌づくりにSELが貢献していると感じています。例えば、今関わらせていただいている通信制の高校。人と話す・表現する(対人スキル)を今までやってこなかったので、自分が何を感じているか分からない/やりたいと思っていることは頭にあるんだけど言葉として出てくるのは「あ、特にないです。」という子たちが多い中で、「グループワークやりましょう、プロジェクトやりましょう」と言ったところでそもそも自分が何を感じているのか/やりたいと思っているのかという意思や価値観に気づくという土台が培われていないと、声の大きい人に引っ張られて違和感を抱えたままプロジェクトをやらなきゃいけなくなり、心理的安全性が崩れあまり良い学びが得られなかったというケースがあります。そのため、土壌づくりとしてSELを通して自分の気持ちや思考に気づいてプロジェクトを行うことをプログラムとして作ったりしています。

主体的で対話的で深い学び=課題解決学習ではない

課題解決学習もすごく大切ですが、そこに向かうマインドセットがないと深い学びになっていきません。

「自分を知る・他人との関わり方を知る」といったことを幼い段階でしっかりと育むことで結果的に社会にどんどん興味が出てくるようになります。先に社会の課題から入るよりもまずは個人から入っていった方が自然な形で力が伸びていきます。

しかし、「自分がこういうことに興味がある/社会のこういう課題に興味がある」と言うと「何真面目なこと言っているの〜」など素直に応援できない空気感があったりもします。向かっていきたい意志をを持っている子がいても、それを空気感によって払拭されしまう風潮があることもあるので、その空気感をチェンジすることが一番最初にすることだと思っています。自分がこういう意志を持っていることに気づき、表現することに対しての受容があったときに初めて土台ができ、全体の空気感として社会やより大きなところに向いていけます。

コミュニティの帰属意識としてただ単に同じクラスにいるということではなく、本当に信頼できる関係で個として認め合える関係性が先生も入る形であるのが大前提です。

SELに見出している可能性

竹村さん:PBLやスティームを2016年からプロモートしてきた中で、PBLをいきなりやろうと思っても生徒や先生も含めた学校としてのマインドセットが育っていないと、いわゆる”深い学び”と言われるPBLを行うことは難しいということに気づきました。それを解決するのは何かいろいろ調査をしている中で、海外のカンファレンスだとSELというのは大きなアジェンダの一つとして入っていることが多いことを知り、そこに一つヒントがあるのではないかと思いました。

これからの社会は想像社会に向かい、予測がつかなくどんどん状況が変わってしまいます。そういった社会を考えたときに「〇〇といった職業につけば幸せに生きれる。」というような正解はなかなかありません。自分は何に情熱を燃やし何のために頑張りたいか知ることがとても大切で、自分で自分の仕事をつくっていき、状況に応じて変わっていくのを良しとするマインドセットが必要だと思います。これを考えたときに良質な深い探究やPBLのような学びというのは一つ学校でできることとしてすごく良く、そういったものをしっかりやっていくにはSELは外せないと思います。

下向:深い学びとは何かについて突き詰めていくと、不確実なことだけが確実な社会です。「今問われている本質的な価値って何だろう、とはいえ、どのように時代が変わっても自分が絶対に貫きたい価値観ってなんだろう」そこを持っているか持っていないかでブレる/ブレない、パニックになる/ならない、飲み込まれる/飲み込まれないも変わってきます。自分の生み出していく価値を時代が変わっても生み出し続けるということが深い学びが必要な理由、社会的背景だと感じています。

学校や教育機関の中での深い学びとは何か

深い学びとは、最終的には自ら想像するところを含む学びです。守破離という言葉があるように、型を学ぶだけではなくてそこから自分なりの何か(意見やプレゼン、プロダクト、サービスなど)、自分なりのフィルターを通して考えた結果生み出されるものが深い学びです。そこから自分の気づきが本物の気づき、つまり他人軸ではない気づきに繋がっていくと思います。

自分軸の気づきや自分のフィルターを通すことはすごく大切です。学力主義に対して否定をしたいわけではないですが、誰かが良いと思ったことを一旦頭の中に入れそこから自分のフィルターで何かを生み出せることをちょっと前の時代はすごく望まれていたと思います。自分の価値観やビジョンを教育の中で培う機会は多くありませんでした。部活・家庭・元から持っている知性などに任せっきりにするのではなく、それをみんなに担保しましょう。自分の価値観、自分がどう感じるか、自分にとってどのような気づきがあるかを外から入れて通して出してというループを何回も何回も回していくことで自分の価値観ってこういうところがあるんだ、自分としての知恵ってここにあるんだということに気づいていくと思います。

自分のフィルターを通して感じたことを、他者と一緒に建設的に話をしていくということがさらに深い学びになっていきます。それができるのが学校の良いところです。SELで自己認識能力を高めることで自分のフィルターはどこにあるのか見えたり、他者に気づく他者理解能力が共感を通して他者と自分を比べたときにバリエーションや奥行きがあることに気づきます。

もちろんPBLうまくいかないこともあります。しかし、うまくいかなかったことを通して自分が感じる感情、これを大切にできなかったのが悔しかった、こういうことに期待していたのに裏切られてすごく悲しかったなど、やって振り返ることを通してまた自分の価値観に気づいていくこともあります。やって振り返る時のSELもある種深い学びをつくっていく上での大切な掛け算の要素です。

教育のパラダイムシフトを支えるホールチャイルドアプローチにSELはどのように位置付けられるのか

下向:竹村さんの著書に「教育のパラダイムシフトをホールチャイルドアプローチが支えていく上で、ホールチャイルドアプローチの中にSELも大事な要素としてキーロールを持っている」ということが書いてありますが、この二点についてお聞きしたいです。

竹村さん:ホールチャイルドアプローチは一つのメソットではなく、頭だけではなく頭と心と体全部を大切にしましょうという考え方です。子どもの探究心やありのままを大切にしながら個別にアプローチをしていきます。頭だけではなく、心と体も置いていかない教育です。ホールチャイルドを育てる基礎としてSELと必ずしも呼んでいるわけではありませんが、子ども一人ひとりの心の状態をすごく大切にしています。

人格というものは育てられるという認識で、教育アプローチによって育むことが可能だというものがSELのプログラムとしていろいろな形で導入されています。スキルと捉えると、今自分ができなくても「いつでも伸ばすことができるよ」と伝えることができます。

下向:頭、心、体。どれもを置き去りにしない教育。そこが教育のパラダイムシフトに繋がると感じます。三つのうち頭にフォーカスされていて、他の二つがなかったわけではありませんが、頭が未来をつくる人材であるというところがありました。

クリエイティブ人材が求められるsociety5.0がやってくる中で、認知能力と呼ばれる頭で論理的に何かを考えられるということだけではなく、どのように何を感じて、どんなことが自分の中の気づきとして湧き上がって生まれてきたのか、身体性も含めてバランスよく培っていこうというところがパラダイムシフトだと思います。

竹村さん:知識偏重から人間としての全体のバランスのとれた教育ですね。今までの知識偏重・テスト中心型で、ある意味他人を蹴落とし、競争で勝って上位校に入ることだけをずっと淡々とやらされてきているとそういう力を育みにくいという構造があるのでそこがパラダイムシフトです。

下向:頭、心、体。そもそも何を培うかだけだなくやり方もですよね。どのようにそれを培うのかというアプローチもそれに伴ってシフトしてきていると感じています。

竹村さん:クリエイティブリーダーを育てないといけません。日本だとクリエイティブというとアーティストとかデザイナーというイメージがあったと思いますが、子どもは全員クリエイターだと思っています。みんな元々持っている力なので、それを認知能力が上がってくるのと同時に育んでいきましょう。ということです。

どのように育むのか

まずは自分の価値観や感じていることをシェアできるような心理的安全性のある場が重要です。そして、自分が良いと思うことをアクションをしてみてやってみた中で振り返り、何が自分として獲られたのかというところから自分のフィルターが養われてというように、振り返りの中でも頭と心と体のエレメントが養われていきます。

SELは何をやるのか

みんなに同じ答えがあるわけではありません。置かれている環境も違うため、課題と育てたい学習者像を踏まえて、SELには様々なアプローチがあるのでどういったものが合っているのか考えていきます。探究型の良質なPBLを社会の人たちと行うことを通じて自分の想像力を養っていくことが向いている場合や、まずは学校が安全な場であることを担保することで自己開示しやすくなるというところをしっかりやった方が良い場合もあります。

まずは自分たちの現在地点を把握することが重要です。どういう生徒がいて、学びの環境をつくっている側の先生がどういう状態であるかを現在地として把握し、どこに向かっていきたいかという理想をベースに本当に必要なアプローチを決めていくことが大切です。

大人も頑張って変わっていく必要がある

現在地とどこに向かっていきたいかだけではなく、教える側の大人が一人ひとりのソーシャルエモーショナルスキルを高めることやこれからやろうとしていくことに対して体感覚的に理解しておくことも大切です。

選択肢を子どもに与えてあげることで子どもが自分で決め、決めたことに対してコミットし、コミットしたことに対してそこから気づきを得ていきます。大切なのは納得感のある自己決定です。だからこそ生まれる責任感やコミットメントが生まれ、そこで初めて発揮される力や成長があります。

しかし、選択肢がないと良い判断はできません。プロジェクトの中に選択できる余地、放任ではなく設計されていることが重要です。

教育の在り方、その中にいる先生の在り方、生徒に必要な機会や担保すべきものがプロジェクトになっていくと思います。探究することからスタートし、先生の在り方もアップデートされパラダイムシフトが起きていくことがシナリオとして見えています。

大切なのは、自分から始めてみることです!

改めて、実際の配信を観たい方はコチラから!

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以下に目次ごとの秒数を記載しておきます。配信を観る際に参考にしていたけると嬉しいです。

▼SELとは(17:20-)▼SELと道徳は似て非なるもの(19:10-)▼なぜプロジェクト型の学びとSELなのか(24:40-)▼主体的で対話的で深い学び=課題解決学習ではない(26:48-)▼SELに見出している可能性(36:10-)▼学校や教育機関の中での深い学びとは何か(41:00-)▼教育のパラダイムシフトを支えるホールチャイルドアプローチにSELはどのように位置付けられるのか(46:20-)▼どのように育むのか(55:30-)▼SELは何をやるのか(56:35-)▼大人も頑張って変わっていく必要がある(58:30-)







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