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資本取引・損益取引区分の原則

[要旨]

会計の慣行では、株主から受け取った資金と、利益の蓄積は、明確に区分することを求めています。これは、株主から受け取った資金は、社外に流出させてはならないという考え方に基づくものです。


[本文]

前回、会社の自己資本は、株主から受け取った資金と、事業活動で得られた過去の利益の蓄積の、大きく2つに分けられるということを書きました。今回は、これに関連する、「資本取引・損益取引区分の原則」について述べたいと思います。この原則は、企業会計原則の中の、一般原則のひとつです。

ちなみに、企業会計原則とは、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約した基準で、公益財団法人財務会計基準機構の企業会計審議会が定めているものです。なお、会社法第431条は 「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」と規定していますが、この「企業会計の慣行」の中には、企業会計原則も含まれています。

話を戻すと、資本取引・損益取引区分の原則とは、「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」というものです。資本剰余金と利益剰余金は、同じ純資産の部にありますが、明瞭に区分するよう規定しています。

これは、株主への配当は、利益やその蓄積だけに限定しなければならないという考え方によるものです。これを言い換えれば、株主が出資した資金は重要なので、社外への流出は限定すべきということです。このように、会社の元手である資本金は、とても重要だということが、企業会計原則にも表れているわけです。

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