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減価償却費と費用収益対応の原則

[要旨]

減価償却の対象となる資産は、一般的に、数年にわたって事業活動、すなわち、利益を生む活動に利用されることから、減価償却の対象となる資産の費用化も、耐用年数にわたって費用化することが妥当であるという考え方に基づいて減価償却が行われており、このような考え方を、費用収益対応の原則といいます。


[本文]

前回、減価償却費は資金流出のない費用ということを説明しましたが、今回は、なぜ、減価償却を行うのかということについて説明します。減価償却費は、土地などを除く、減価償却の対象となる固定資産(以下、単に「償却資産」と記します)が経年劣化した分を、帳簿上の価額から、一定の規則に基づいて減額したときに、その減額した金額を、費用として計上したものです。本旨からそれますが、償却資産の減少額は、会計年度末の実際の償却資産の時価を評価することで決められるのではなく、会計上の計算方法によって決められます。

その計算方法とは、定率法や定額法などの方法があり、あくまでも、会計上の計算方法です。したがって、実際に会社の償却資産を売却したときに、売却額が帳簿上の価額よりも高いということや、逆に、低いということは珍しくありません。また、帳簿上の価額がなくなっても(実際には、備忘価額(名目的に帳簿に残しておくための金額)の1円で計上されることが多いようです)、償却資産が利用されていることがあります。例えば、乗り合いバスの法定耐用年数は5年ですが、実際には、乗り合いバスは、6年目以降も、帳簿価額1円のまま、10年~20年も使われることがあるようです。

話を戻すと、償却資産は、数年にわたって帳簿上の価額が減少していき、その減少分が費用として計上されます。そして、最終的には、償却資産の全額が費用になります。とはいえ、償却資産を購入した時は、その代金が支払われる、すなわち、資金が流出します。ただ、その時点で、償却資産の購入額(資金の流出額)を費用とせず、いったん、固定資産として計上してから、数年にわたって費用にして行くということは、前述したとおりです。

それでは、なぜ、そのようなことをするのかというと、償却資産は、一般的に、数年にわたって事業活動、すなわち、利益を生む活動に利用されることから、償却資産の費用化も、それに合わせて行うことが妥当であるという考え方をしています。これを、費用収益対応の原則といいます。また、償却資産が購入された時点で、費用と認識せずに、いったん、固定資産に計上するという考え方には、会社は半永久的に事業を継続するという前提があり、このような前提を、ゴーイングコンサーンといいます。

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