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ひらがな表

キレイな文字を書く女の子がいた。
まっすぐで、しなやかに整った字。

でも、その子は自分の字をキレイとは思っていない。むしろ、字というのは、もっと堂々と、太く逞ましく書くべきであると思っている。

その子は 大人になると、息子を持つ母になる。彼女は息子のために、手描きの文字で「ひらがな表」を作った。

息子は小学校に入るまで、その文字を見て覚えた。その息子は小学一年生の時、学年で一番字がキレイと言われて、作文の視写で金賞をとる。

彼女はそれをとても喜んで、茶の間の壁に何年も飾った。ふと、それを見つめると「堂々として、太く逞ましい字」と呟く。

ひらがな表に書かれた字を見て覚えたはずの息子の字は、なぜか母の字に似ることはなく、母の好きな字になっていた。

これは一見、とても不思議なことなのだが、気持ちを込めて作ったモノには、そういうチカラが宿っている

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