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個性豊かなあだ名

こんにちは、いとさんです。

大昔に「おかん」というあだ名をつけられたことがあります。悪寒のことではありません。関西、特に大阪ではお母さんのことをおかん、お父さんのことをおとんと呼ぶ人がいます。確かオダギリジョーさんのご出演なさった映画のタイトルにもチラッと登場したことがありましたね。

アルゼンチンでも、少し砕けた感じと言いますか、より親愛を込めた言い方でお母さんを”mi vieja”、お父さんを“mi viejo”と呼びます。日本語にしてみると、お袋、親父といったところでしょうかね。viejo/aはそもそも「古い、歳を取った、老人」という意味合いですから、言いたいことは分かりますけれど、あんまりにもダイレクト過ぎやしないのかとも思います。

”Está bien tu vieja?(お前んとこのお袋は元気かい?)“というような会話がサラッと聞こえてきます。しかしながら、これは当人達を呼ぶ時には使われていないようです。”mamá , papá “と一般的な呼称が使われることが多いですけれど、”má , pá”と短縮して呼ぶ人もいます。

お母さん達は、子供達を“mi vida“や”mi amor”などと呼びます。これは直訳すると、「私の人生、私の愛」です。さすがラテンの国、愛情表現がドラマティックです。しかしこれは慣習化されている側面もあり、さらっとした雰囲気で使われています。疲れてもいないのに、会社内で人とすれ違った時に「お疲れ様です」と言っている時の感覚に近いと私は思っています。

「そうじゃないのよ、mi amor。これはこれこれこういう経緯があってね...」などと会話の最中にも登場します。恋人同士や親しい友人同士の間でも“mi amor”と呼び合うところを見かけます。飼っているワンちゃんや猫ちゃんを呼ぶ時でさえも”mi amor”です。「私の全身全霊の愛を注ぐ人、もはやあなたは私の心そのものだ!」ということなのかもしれませんけれど、”mi corazón(私の心、心臓)”と呼びかける人もいます。

余談ですけれど、”mi amor”は実に便利な言葉です。お付き合いしていた相手が変わっても、”mi amor”と新しいパートナーを呼ぶのですから、うっかり相手の名前を言い間違える心配がないですね。そんなことをアルゼンチン人に言うと彼らは”Es la verdad!(本当だね!)“と言って大笑いしていました。

具体的な表現は親しい人を呼ぶ時にも使われます。例えば、少しほっそりした男性に対して“flaco”と呼びかけたりします。「痩せこけた、肉付きの悪い」という意味です。対して「太った、厚い」という意味の“gordo”については、そのままの意味で使われているだけではないようです。彼氏や彼女に対して”gordo , gorda”と呼びかける時もありますし、赤ちゃんに対しても使われているのを見かけました。彼らは決して相手を蔑むために使っているわけではなく、愛着を込めてそう呼ぶのです。これは太っていることが豊かさの象徴であると考えた時代があったからではないかと推測します。

その人の見た目や特徴を固定のあだ名にすることもあります。それについてももちろん寄り道なしのダイレクトな表現です。例えば、

”rolon“  天パちゃん
“pipi“  ピピ(お喋りな様子を鳥の鳴き声に例えた)
“chino”  中国人(少し目の細い息子に対して)
“fosa”  穴(鼻の穴が大きいので)

ここまでくると、随分と親しい仲でないと失礼になる言葉も出てきますので、他人さんに使っている様子はありません。

スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの有名な小説“Don Quijote(ドン・キホーテ)”に登場する主人公の相方、サンチョ・パンサの「パンサ」は「お腹、ふくらんだ腹」の意であり、彼は「太っちょのサンチョ」というあだ名で物語に登場していることを知ったのはつい最近のことです。いつかこの本を原文で読破できることを一つの目標にしておこうと思います。

私は名前で呼ばれることが多いですけれど、ご年配方からは大体“muñeca”と呼ばれます。どういう意味か分からずに呼ばれるがままにしておいたんですけれど、ふと気になって調べてみると「お人形さん」と呼ばれていたことが分かりました。悪くないですね。

いとさん

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