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奇跡といわれた有機パインづくりに製薬会社が挑戦する理由

ロート製薬は、沖縄県の石垣島で、パイナップルの有機栽培に取り組んでいます。「薬に頼らない製薬会社」を目指そうとの意志の元、人にも地域や環境にも善い形で健康な身体をつくる「食」も根本から見直す挑戦をしています。

こんにちは、ロート製薬 公式note編集部の山田です。先日、ちょうど有機パイナップルの収穫繁忙期に、事業の視察とお手伝いに石垣島へ行ってきました。このnoteでは、その時の様子をレポートします。

採れたてのパインを島の空気を吸いながらいただくのは格別でした。みなさんにもぜひこの「自然の恵み」を頂く背景にある想いや挑戦をご共有させてください!

美しいサンゴ礁の海に囲まれた、南の楽園・石垣島。長い夏と暖かな冬、ミネラルを運ぶ潮風。そんな恵まれた自然を生かしながら、ロートでは循環型農業を実践しています。

特に、私たちが手がけている石垣島の豊かな自然に育まれた有機パイナップルには、パイン本来の甘みとうまみが詰まっています。化学肥料を使用していないため花がつく時期や生育具合もそれぞれなので大きさには差が出やすいですが、パイン本来の自力で育った希少価値の高いパイナップルです。

ファームでは、3種類のパイナップルを生産し、ピーク時は1日に500個、シーズン全体で約6,500個程度を生産しています。収穫のシーズンは7月上旬から8月上旬。ここ2年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響や猛暑など過酷な状況で、健康にも細心の注意を払っての作業になりました。

収穫したてのボゴール種のパイナップル。葉っぱがギザギザなのが特徴。苦労して育てて、黄色く熟れた優しい色が愛おしい。
名蔵湾に臨む、崎枝というエリアでオーガニックパイナップルの栽培をしています。
実はパイナップルの花はこんなにパンクなピンク色をしています。栽培を始めて、収穫までに約2年かかります。
収穫作業は早朝6時からでないと暑すぎる‥事務所の外のヤシの木が朝日に照らされています。
ひとつひとつ丁寧に収穫して、その重みを感じました。

100人以上の社員が石垣島へ協力に

作り手が見える、安心安全な食を提供したいという思いでジャングルのような土地を農地にすることから始まりました。2013年からロートのグループ会社として「やえやまファーム」として運営に関わっています。

東京から単身赴任で石垣島に乗り込んで早2年、笑顔あふれる中家さんにお話を伺いました。

「いわゆる『六次産業化』とも言われていますが、ここでは「収穫」と「生産」と「販売」をやっています。毎年、7月と8月の前半までが、パイナップルの収穫繁忙期です。この時期は猫の借りたいほど忙しく、「食」や「地域」について考えてもらうロートの社内研修の一貫で、社内の公募で手を挙げた社員が『やえやま応援隊』として来てくれます。研修と言いながらも、真夏の石垣島の過酷環境での収穫作業になるので、選ばれた“強者”だけが研修に参加することができます(笑)これまでに収穫や、工場でのお手伝いも合わせて、100人以上の社員に体験してもらっています。

年次や部門もさまざまなメンバー2・3人が1つのチームになって現地へ。社内コミュニケーションの場にもなっています。
パイナップルができる過程を初めて知る社員も少なくありません。

研修では社員は一週間、石垣に滞在するんですが、暑さを避けるため、早朝6時から働くので、研修初日を終えた時点では皆さん顔が青ざめてますけど、現場の農産メンバーの農業に掛ける熱い想いを聞きながら過ごしているうちに、だんだん、表情が変わってきて、食の原点に触れて大切さにも気づくし、僕たちのやえやまファームのファンになってくれるんですよね。」

これまでに参加した社員は、ロートの食事業や石垣島での取り組みの意義を実感し、有機パイナップルなどの価値を社内メディアで発信したり、まわりに語る動きも起きています。単なる社内研修の域を越える取り組みです。

「絶対に不可能」と言われた有機パイナップル

有機パイナップルは「絶対に不可能」と言われたくらいに難しくて手間がかかります。ひたすらこまめな草むしりが必要で、徹底的な虫や害獣除け対策に知恵を絞り、花がついて実になるタイミングも制御できない。一般のパイナップルと比べると収穫高も低くなり、収穫のタイミングもコントロールも難しくなります。
 
それでも、農薬や化学肥料を一切使わずに栽培することでお客様に安心・安全を届けたい。石垣島の豊かな自然を守るため地球にやさしい農業にチャレンジしたい。

土を耕すのに5年、パインを育てるのに2年の歳月がかかりました。有機パインの認可申請をし、晴れて2008年にJAS認定を獲得しました。

さらに、この日本で唯一JAS認定を受けている有機パイナップルと、パイナップルの搾りかすを食べて育ったオリジナルブランド種の南ぬ豚(ぱいぬぶた)の養豚、それらをできるだけ無駄を出さない循環型農業で育て、生産加工販売までを行っています。

有機栽培と循環型農業を通じて、人の心と体の健康と、健やかな地球を守りたい。ハードルは高いけれども日々、試行錯誤の挑戦を続けています。

お手に取っていただきやすいよう、直販サイトには、パイナップルの果実や、濃厚なジュース、大人気のぱいぬ豚のハンバーグやしゃぶしゃぶセットなどをご用意しています。ぜひ一度のぞいてみてください。

ここまでロートが健康な身体をつくる「食」を根源から支えるために有機栽培・循環型農業にチャレンジしている想いや現状をお伝えしました。

ただしこの壮大な挑戦は、一社では波及できる範囲に限界もあります。少しでも多くの方に興味を持っていただいたり、作物や商品をお届けしたり、様々な形で関わっていただきたい。

そんな想いで今年1月、石垣市とクラダシとロート製薬の三者で「石垣市におけるSDGsの推進に係る食品ロス削減及び特産品のPRに向けた連携協定」を締結しました。

クラダシは、「日本で最もフードロスを削減する会社」をビジョンに掲げ、ソーシャルグッドな商品や期限が近づいていてもまだ消費できるアイテムを集めたマーケットを運営している会社です。

そんなクラダシでは、クラダシチャレンジとして「社会貢献型インターンシップ」を企画運営されています。今年は8名の大学生が7月、8月にそれぞれ10日間に渡って来島し、私たちの有機パイナップルの収穫作業を手伝ってくれました。

早朝の仕事終わりに、みんなで収穫したパイナップルをトラックに積み込む。一週間もお手伝いいただいた学生さんは作業も板について、人間関係も深まり環境に溶け込んでくださっていました。

学生さんも、実際に農家の仕事や暮らしを体験できたことが貴重な原体験になり、「よりフードロスなどの社会課題が自分事化された」。そして現地の担当者や、宿泊でお世話になった地元の方との関係が深まり、「今後も地域に関わっていきたい」と話してくれました。

東京に戻ってから何組かのクラダシチャレンジの報告会がありました。作業を助けるだけでなく、地域の魅力と課題をまっすぐ見つめてくださった情熱に感激しました。

東京に戻った後も、様々な大学から集まっていたメンバーはクラダシに再集結し、学びの報告会&学びの活かし方ディスカッションがありました。私たちロートのメンバーも聞かせていただき、吸収力と熱意に感激しました。

「薬に頼らない製薬会社」を目指すために

企業として活動をするなかで、未来の環境などサステナビリティについて考え、取り組むことは切っても切り離せません。『薬に頼らない製薬会社』を目指そうという意志の元取り組んでいる『循環型農業』とその地域貢献についての、ひとつの形です。

他にも、薬膳の考え方をベースにしたレストランや、栄養を補助する食品やサプリメント、フードテックなど最新技術の探索など、幅広く食を通じた健康の実現に取り組んでいます。

これからも、毎日の体をつくる食の根源に向き合い、一人ひとりにあった食とは何か、どのようなサポートが必要か、どんな新しい提供方法ができるかを考え、挑戦していきたいと思っています。

帰り道に力強いマングローブを見つけました。ぜひ石垣島に遊びに来てください!