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【後編】承認?自己実現?そんなの今はどうでもいい。今企業が取り組むべき改革とは

育成支援事業部のサフランこと、キャリアコンサルタント鈴木さくらです。

前編からの続きです。

前編では、マズローの欲求5段階説を用いて、新型コロナで大打撃を受けている今の私たちの状況を捉えてみました。

あきらかにこれまでとは異なる現状で、「これまで通り」がいいはずがない。精査した上で残すべきものは残し、変えるべきところは変えていく必要がありますね。

長期戦かつ、この未曽有の状況を生きのびるために、今企業は具体的に何に取り組めばいいのか?というのが後編の内容です。


動機づけ・衛生理論からヒントをもらってみると

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そのヒントになるべく、ここで登場するのは心理学者ハーズバーグの動機づけ・衛生理論。

早速余談ですけど、経営者の方々はこの理論を好む方が多いように感じます。以前、数名の経営者の方々にこの理論を話してみた際、興味を持ってくれた方や「うちの会社のこの取組みは当てはまるかな?」と話す方もいたり、経験の中からこの理論に基づいて組織開発をされている企業様も多いかもしれませんね。

そしてもうひとつ余談をお伝えすると、弊社でも『ROGCheck(ログチェック)』と呼ばれる職場と従業員の適性&磁力診断をこの動機づけ・衛生理論×エゴグラムで開発しており、従業員の基本的性格、モチベーションの種、不満の種を解き明かしながら改善策を打ち出して定着支援に活用していただく企業様が増えています。

それだけ実践的に活用できる理論なんですよね。

さて、ハーズバーグはマズローの欲求5段階説における各欲求は、働く人のモチベーションと関係があると考え、この理論を提唱しました。この理論には「衛生要因」と「動機づけ要因」という2つの要因が存在します。


▼衛生要因:

マズローの5つの欲求のうち、第1~3段階における生理的欲求、安全および社会的欲求の一部が満たされないと不満の要因になるもの。衛生要因となる欲求は満たされないと不平・不満を呼ぶが、満たされたとしても達成感や満足感は得られない。したがって、人を動かす動機づけのもとにはなりがたい。

具体的に、仕事の不満足に関わる項目は「会社の政策と管理方式」「監督」「監督者との関係」「マネジメント」「労働・作業条件」「給与」「同僚との関係」など。これらが不足すると職務不満足を引き起こし、離職理由に十分なりうる。


▼動機づけ要因:

第4~5段階の承認欲求や自己実現欲求は満たされると自らの満足感が得られる。喜びや感激、すなわち満足感や達成感がその人を次のステップへと向かわせる動因となり、主体的かつ自律的な行動につながる。

具体的に、仕事の満足に関わる項目は「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」「成長」など。これらが満たされると満足感を覚えるが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではない。


もともと、人間には

▼苦痛を避けようとする動物的な欲求
▼心理的に成長しようとする人間的な欲求

この二つの全く異なる欲求が共存している、というのがこの理論の出発点でした。

そこから、

苦痛を避けようとする動物的欲求をいかに充足しても、人間は不満足感が減少するだけで積極的な満足感を増加させることはない。
たとえ心理的に成長しようとする人間的欲求を十分に満たすことができなくても、不満足感が増加するわけではない。

ようは、人間が仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は全く別物であるとする考え方です。

そのため、企業は車の両輪のように両者に取り組んでいかないと、私たちのモチベーションは下がり、心身の不調を招き、その会社に留まる理由を見失うため離職につながる可能性があるということですね。


今、企業が従業員に対して取り組むべき改革は

マズロー×ハーズバーグ両理論で今を改めて捉えてみると、クリアに見えてくるものがありませんか?

この状況をいかにして「生きのびることができるか」ということを考えたとき、今重視すべきは、マズローの第4~5欲求での動機づけ要因に積極的に取り組む以上に、第1~3欲求での衛生要因を改善し、取り組むべき時期であるということ。

衛生要因が不足すると職務不満足を引き起こし、従業員の離職理由に十分なりうることなので、看過できませんね。

具体的な取組みへとつなげるために、各項目で以下のセルフチェックをしてみてください。


会社の政策と管理方式:

有事の今、先行き不透明のままでは従業員が右往左往しがちです。こんなときこそ、どこに向かうのか示してほしいもの。
□経営者は会社の方針や目指す方向性を言葉にして示せていますか?
□それが従業員にしっかりと伝わっていますか?

▼監督・監督者との関係・マネジメント:

□現時点で上司部下の関係性は良好ですか?
□不慣れな環境でパフォーマンスが落ちて生産性が低下し、モチベーションが下がっている従業員にどんな言葉がけをし、どんな行動を促し、マネジメントをしていますか?
□これまで以上にコミュニケーションをとるようにしていますか?
□業務連絡のみに陥っていませんか?
もしかしたら従来とは異なるマネジメントが必要になるかもしれませんね。

▼労働・作業条件:

□テレワークを導入したはいいものの、従業員の自宅は仕事環境に相応しいかを確認していますか?
□もし不適応な環境なのであれば、少しでも整えるべく相談を受け、物心において何らかのサポートをしていますか?

▼給与:

企業としての踏ん張りどころですね。
□たとえ致し方ないとしても、給与カットの前にどんなことができるでしょうか?
□どんなプロセスを従業員に見せているでしょうか?

▼同僚との関係:

コミュニケーションロスがいたるところで勃発しています。
□少しでも効率よく生産性を上げるべく、ピリピリモードになっていませんか?
□いつでも気軽に相談ができるよう言葉がけができていますか?
□連携は取れていますか?
□テレワークだからこそ文字やWEB会議ツールによる雑談を推奨していますか?
□お互い気にかけながら、メンタルの調子を整えられていますか?


今を生きのびるために衛生要因を改善する

マズローは、「各欲求の階層は不動のものではない」と指摘していて、さらには「次の欲求に移るためには今の欲求が100%満たされる必要はない」としています。

まことしやかに、下位欲求が満たされないと上位欲求への移行ができないと言われていますが、そうではありません。

1)生理的欲求では85%
2)安全欲求では70%
3)社会的欲求では50%
4)承認欲求では40%
5)自己実現欲求では10%

マズローによれば、各欲求は上記の達成度で充足されるとしています。ただし、下位欲求ほど高い達成度が求められるため、衛生要因をしっかりと改善していく必要があるんですね。


経営者や管理職の皆さまは「自分の会社はどうだろうか」「自分のマネジメントはどうだろうか」と振り返ってみる、今がそのタイミングなのだと思います。

そして、従業員の皆さまは「自分はどうだろう?」と我が身を振り返ってみてください。と同時に、同僚同士で支え合っていくときの一つの見方として持っておくといいと思います。


最後に、サービスを提供する側でもこの理論は活用できます。承認欲求や自己実現欲求を満たす商品や動機づけ要因を扱うようなサービスを提供するよりも、今は衛生要因を改善することのできる商品開発をした方がよいタイミングと言えるでしょう。

そんな視点からも、この理論を活用してみてくださいね。少しでもお役に立てることを願って。


《お知らせ》

5月より人事担当者のための勉強会兼コミュニティである「ログカレ!」がリニューアルします。

新しいコンセプトは、多忙を極める人事担当者に向けた、【“読んで、調べて、たまに集まる”コミュニティ兼シンクタンク】。このnoteを存分に活用していきます。

『人物解体新書』と題して、話を引き出すプロのキャリアコンサルタントが人事領域での活躍者にインタビュー。心理学やキャリア理論等を用いながら当人以外でも再現できるよう解明してお届けしていきますね。どうぞお楽しみに!

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