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残念なAI化対応報告書|迷想日誌

厚生労働省の労働政策審議会は、AIなどの新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するには、今後どのように対応すべきかを提言した報告書を了承しました。

AI化の進展でかなり多くの仕事が消滅する可能性が指摘され、そして2045年には汎用AIが人間の知能を凌駕し、我われの想像が及ばない社会「技術的特異点」が到来するとの見方が広まっているにもかかわらず、同報告書の内容は楽観的、抽象的で危機感が欠如したものとなっていて残念です。

たとえば、「今後、留意すべきは、業種、企業規模によって AI 等の導入状況が異なる中、社会的に対応が求められる分野において、AI等の実装が確実に進むとは限らないということである」としています。
要するに、日本では全面的なAI化が進まない可能性があるというのですが、「進まない」などと言ってる場合ではないのです。

日本は、先進国としてAI化を強力に進めなければならないはずです。
AI化しなければ、数十年後には中進国に落ちて国民はさらに貧困化してしまいます。
日本は、AI化に遅れることはできないのです。

最も気になるのは、「雇用に与える影響の全体像について、現時点で正確に見通すことは困難」としていることです。
AI化の雇用に与える影響の推計を初めから放棄したら、全く見通しが立ちません。
AI化の議論に期待していたのは第一には専門検討組織による将来推計でしたので、落胆です。

さらに、AI化がディーセント・ワークの実現に寄与するとしていたり、地方創生につながることも期待しているとしていますが、AI化がもたらす社会へのプラスの側面は指摘するまでもないことです。
問題は、仕事に就けない者が拡大する可能性がある懸念です。検討を深める必要があるのは、このマイナスの側面です。
労働分野の専門検討組織として、分かり切った議論ではなく、困難な問題への具体的対応策を示すべきでした。

この点、報告書は「AI 等の活用が進むことに伴い、様々な要因によりAI等に対応できない労働者が少なからず生じる懸念も示される中、そのような労働者が労働市場から排除されず、社会に包摂されるようにすることにも留意が必要である」としています。
問題は、「社会に包摂されない」者が多数排出される恐れがあることですが、具体的に答えていないのです。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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