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有効求人倍率1倍を死守せよ!|迷想日誌

5月分の雇用情勢について、厚生労働省職業安定局長の会見がありましたので、その内容を概略ご紹介します。
厚労省の見方では「求人が求職を上回って推移しているものの、求人が引き続き大幅に減少しており、求職者の増加もあいまって、厳しさがみられる。新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響に、より一層注意する必要がある」という状況です。数値的には、いよいよ悪化がめだってきました。

まず、完全失業率は2.9%と前月より0.3ポイント上昇(男は3.2%、女は2.5%)しました。
完全失業者数は198万人と前年同月差33万人増加です。有効求人倍率は1.20倍と前月より0.12ポイント低下しています。
正社員有効求人倍率は0.90倍と前月比0.08ポイント低下しました。

深刻さが増しているのが、若年層の失業です。
15~24歳までの完全失業率は前年同月比1.6ポイント上昇の5.5%に達しています。
この年齢層の男性に絞ると6.2%と高率となりました。ロスジェネの再生産が心配です。

全体の有効求人倍率1.20倍は、5年前の平成27年と同水準です。
最悪だった21年の0.4倍程度から一気に回復基調に乗っていた途上です。
令和元年ごろには歴史的高水準である1.6程度に達しています(昭和48年に1.7倍程度の例がありました)。

しかし、雇用情勢の落ち込みがこのレベルで留まれば、何とかなりそうです。
というのは、5月はほぼ全期間にわたって緊急事態宣言が発令されていたので、当然の落ち込みです。
もっと悪化すると思っていましたが、有効求人倍率1倍を割り込まずに済みました。

この背景としては、政府の大規模経済対策および厚労省の雇用維持政策の存在が大きいでしょう。
個人や事業者への現金給付に加え、雇用調整助成金の緊急的、なし崩し的手続き緩和と対象拡大が光っています。
実際の支給が遅れていたとはいえ、安心感が醸成されたのは事実です。事業者としては、何とか我慢ができたのではないでしょうか。
やはり、社会が危機に瀕しているときの政府の役割は大きいといえるでしょう。

問題は今後です。緊急事態宣言解除後の6月は、経済活動が急激に戻ってきましたので、このまま厚労省による雇用維持政策が強力に進められていけば、横ばいから改善へ持っていけると希望的観測ができそうです。

しかし、秋ごろにかけて大型倒産が相次ぎ、逆にさらに悪化するという見通しもできます。
現時点で400万人超の休業者が失業に向かう可能性もあります。
政府による再度の経済・雇用対策と日銀による的確な金融政策を望みます。
今後半年の経済政策がカギを握っています。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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