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2021年マイベストアルバム TOP20

今回は、2021年の個人的ベストアルバムを20枚ご紹介していきたいと思います。ずっとやってみたかったけれど、毎年順位がちゃんと決められなくて断念していましたが、今年はnoteも始めたので絶対作ると決意して、かなり時間をかけて作りました。

Indie好きによる、すべての人に送る今年のIndie総まとめ的なランキングになったと思います。是非皆さん読んで、聴いてもらって、「今」のIndieシーンの旨み(ほんの一部ですが)を味わっていただけたらと思います。あくまでも「マイ」ベストアルバムなので、筆者の個人的な好みが強く反映されていますが、そこ込みでお楽しみください。
今年見落としてしまっていた名盤を見つけて行っていただけると嬉しいです。各アルバム冒頭に一曲YouTubeの動画が載っているので、再生しながら読んで頂ければと思います。
長い記事となりますが、よろしくお願いします。

さて、年間マイベストアルバム記事ですが、最初にアルバム未収録の今年マイベストシングルをご紹介したいと思います。

Like I Used To / Sharon Van Etten & Angel Olsen

USの人気SSWの二人、Sharon Van EttenとAngel Olsenによるコラボ曲。David Bowieの「Heroes」を思い起こさせるイントロのフレーズや、Bruce Springsteenの「Born to Run」を想起させるこの曲。二人によるハーモニーが素晴らしい、煌びやかで美しい一曲です。カントリーチックなAメロ、Bメロの少し不安定なメロディからのサビの伸びやかで甘美なメロディで、絶頂を迎えます。
どっしりとしたドラムがダンスを誘いますね。この曲をかけて、一人でゆったり踊るのがマイブームでした。
年末にもなると皆アルバム単位で語るので、この曲が忘れられてしまわない様に最初にご紹介しました。

さあ、それでは2021年マイベストアルバム第20位からノンストップで発表していきます。

20位

dimen / NOT WONK

「dimensions」

北海道は苫小牧のIndie rockバンドNOT WONKによる4枚目のアルバム。

彼らの出自であるPunkを下敷きにしつつも、JazzからSoul、R&B、Folk、Techno、Hip hopやPost-rockなどありとあらゆるジャンルを取り込んで完成された本作。ソウルフルなボーカルやパワフルで生々しいバンドサウンドも魅力的です。そのジャンル横断ぶりは、オープニングの「spirit in the sun」から顕著です。それは、甘いアンビエントなR&Bで始まったかと思うと、ソウルフルでグルーヴィなサビがやって来ます。そして、アウトロでパンキッシュなJazzの演奏が始まったかと思うと、何故か最後は突然Folkソングになって終わります。どんどん景色が変化していく、目まぐるしい一曲です。次曲「in our time」は、甘いメロディのBritpopでしょうか。三曲目「slow burning」は、ソウルフルなボーカルが光るロックナンバーかと思いきや、後半はジャジィな演奏。その後も、次々と様々な意匠をまとったバラエティ豊かな曲達でアルバムは進行していきます。
彩り豊かな本作ぜひ聴いてみてください。

19位

Typhoons / Royal Blood

「Trouble's Coming」

UKのAlternative rockバンドRoyal Bloodの3rdアルバム。Vo.&Ba.とDr.のツーピースと云う変わった編成ですが、更に変わっているのが、ベースにはベース弦とギター弦を半分ずつ張る事でBa.とGt.を同時に担い、このサウンドを実現させていること。アンプもベースアンプとギターアンプを使い分けている様です。

これまでの彼らのHard rockサウンドに、Electroなサウンドを取り込む事で、過去最高にダンサブルな作品に仕上げてきました。しかし、それでも彼らは元来のブルーズィなHard rock、Garage rockサウンドを維持し、見事にThe White Stripes×Arctic Monkeys(AM)×Daft Punkのブレンドを成し遂げています。アルバム前半「Trouble’s Coming」、「Oblivion」、「Typhoons」辺りは、まさにそういった曲達です。アルバム後半は更に野心的です。「Million and One」、「Limbo」辺りからシンセをフィーチャーするなど、よりElectroに接近していきます。一部ファンから批判されているのは、主にこの後半部分が原因でしょうね。しかし、前半部でこれまでのファンも引き付けつつ、後半部で更に新機軸を聴かせていく構成は上手く機能していると思います。彼ららしいロックサウンドで躍れるカッコいい作品に仕上がっています。
この作品はぜひヘッドフォンで、彼らの重低音を楽しみながら聴いてください。

18位

Valentine / Snail Mail

「Valentine」

USのSSW、Lindsey JordanによるIndie rockソロプロジェクトSnail Mailの2ndフルアルバム。来日公演では、原曲よりもテンポを落とした叙情的な演奏が印象的でした。

今作は、ギターロック中心だった前作から一転して、音楽性を拡張した1枚です。オープナー「Valentine」は、シンセの音と共に静かに始まりますが、サビでは激しいギターサウンドがバーストします。前作よりスケール感を増したロックナンバーです。続く、秀逸な野太いベースラインが印象的な「Ben Franklin」は、ドラムマシーンやシンセが大胆に使われています。スローな曲では、ハスキーになったボーカル(ポリープができていたとの事)の魅力が更に際立ちます。前作の魅力だった彼女のギターフレーズも、比重は減っているものの時折り顔をのぞかせます。「Light Blue」や「c. et al.」、「Mia」は、アコースティックギターや荘厳なストリングスが美しい曲です。「Forever (Sailing)」や「Madonna」は、美しくもダンサブルな曲。「Glory」では、前作のファンも喜ぶギターロックサウンドがパワフルになって帰ってきます。アルバムを通して、彼女の歌がとても魅力的に響きます。
注目のインディヒロインの進化した2作目、ぜひお聴きください。

17位

Ignorance / The Weather Station

「Parking Lot」

カナダのIndie folkバンドThe Weather Stationによる5thアルバム。各種メディアからも高評価を得た、彼女達の出世作です。

今作は(前作までを知りませんが)Folkと言うより、Art popやBaroque popと言った感じでしょうか。ツインドラムとストリングス、ピアノ、シンセなどを駆使した演奏が特徴的です。完成度の高い楽曲で、極上の演奏が繰り広げられます。Florence + The Machineを上品でおとなしくした様な印象も受けます。ただこちらは、派手さは控えめですが、よりグルーヴィです。一曲目「Robber」は、静謐で厳かに始まります。鳴らされる楽器が増えていくと共に徐々に盛り上がりを見せます。ゴージャスな演奏です。ライブ映像だとよりスリリングな演奏でもっと凄かったです。その後も「Atlantic」、「Tried to Tell You」、「Parking Lot」と、極上の楽曲と演奏が次々と繰り出されます。
ただ、一本調子ではあるので、後半は飽きてしまう方も居るかもしれません。ですが、精緻でとてもいい作品なので、先ずは人気曲連発の前半だけでもぜひ聴いてみてください。

16位

Teatro d'ira - Vol. I / Måneskin

「ZITTI E BUONI」

今年大ヒットしたイタリアのロックバンド、Måneskinによる2ndフルアルバム。久しぶりに出てきたスタジアムロックの大型新人ですね。

シンプルながらカッコいいギターリフと、それに呼応するように躍動するベース、タイトで重いドラム、セクシーなボーカルが魅力的です。グラマラスなHard rockを下敷きにしながらも、Hip hopからの影響も感じさせます。アルバムの幕開けを飾る「ZITTI E BUONI」では、荒々しいバンドサウンドに乗せて”Siamo fuori di testa ma diversi da loro | 俺たち、イカれちゃいるが、あいつらとは違う”と繰り返されます。続く「CORALINE」は、アルペジオで静かに始まりますが、スタジアムで鳴り響く様なパワフルなドラムと共に、熱く歌い上げられます。ギターソロも良い音でカッコいいです。激しめのロックナンバーだけでなく、この曲の様なロッカバラードも魅力たっぷりですね。その後も、「LIVIDI SUI GOMITI」、「I WANNA BE YOUR SLAVE」、「IN NOME DEL PADRE」とカッコいいロックナンバーが並びます。多くの曲でシンプルでカッコいいリフがフィーチャーされていて、これぞ「ロック」だと言いたくなる作品です。
今後も要注目の大型新人バンド。本作を聴いて、今後の活躍に期待しましょう。

15位

Twin Plagues / Wednesday

「Handsome Man」

USのIndie rockバンド、Wednesdayの2ndフルアルバム。

Shoegazeや、Grungeの影響色濃いIndie rock作品。Indieらしい良い意味で少し不安定でフラジャイルながらも甘いメロディが魅力的です。なんと言っても、轟音ギターサウンドが気持ちいいですね。三本のギターによる重層的な演奏です。そのうち一本は、ラップスティールギターが使われています。この手のバンドだと珍しいんじゃないでしょうか。Shoegazeのツボを押さえたドラムも良いです。1曲目のタイトルトラック「Twin Plagues」、開幕から溢れるフィードバックノイズとファズィなギターに続き、期待通りの轟音がやって来ます。でも、彼女たちはひたすら轟音をかき鳴らし続けるバンドではありません。静と動を使い分け緩急つけてきます。2曲目「Hadsome Man」も、歪んだギターによるリフが気持ちいいです。ギターにばかり耳が行ってしまいますが、ポップソングとしての強度もしっかりと持ち合わせています。続く3曲目は静かに始まりますが、不気味な低音が響きます。今か今かと思っていると、この曲ではかなりじらされます。でも、メロディが良いから全然待てますね。その後も静と動を使い分けながら、魅力的なポップソングが歌われていきます。アルバム後半は更にラップスティールギターが大活躍で、特に「Toothache」なんかは、雷鳴の如く降り注ぐ間奏のサウンドが凄いです。
Shogaze好きは必聴。そうでなくても、激しくもポップで聴きごたえのある作品です。ぜひ聴いてみてください。

14位

Things Take Time, Take Time / Courtney Barnett

「Rae Street」

オーストラリアのSSW、Courtney Barnettによる3枚目のソロフルアルバム。

本作は初めてドラムマシーンを使って作ったらしいです。なるほど確かに、ドラムビートは単調ですね。でも、それで良い、それが良い。激しめのロックナンバーも収録されていたこれまでの作品から一転して、終始スローでリラックスした雰囲気のIndie rockです。そんな今作でも彼女のギターと気だるく独特なテンポ感で歌われる歌は魅力たっぷりです。彼女の歌い方とLo-fiなサウンドが浮遊感を生み出していて、ドリーミーで心地いいです。ポップなメロディに乗せて歌われる彼女のリリックも大きな魅力の一つですが、「Rae Street」の”Well, time is money And money is no man's friend”や、「Write A List Of Things To Look Forward To」の”Nobody knows Why we keep trying Why we keep trying And so on it goes”などは、平易でありながらも印象的ですね。
ぜひ時間を取って、ゆったりリラックスしながら本作を聴いてみてください。

13位

Happy to Perform / Kane Strang

「Moat」

ニュージーランドのSSW、Kane Strangによる3rdアルバム。このアーティストは以前から好きなのですが、検索してもほとんど情報が無く、思っていたよりもマイナーなアーティストの様ですね。こういったアーティストに出会えるのも、ストリーミングサービスのおかげですね。

Alex Gを思い起こさせる、サイケでドリーミーなFolk rockです。メロディなどはElliott Smithの影響もありそうです。一曲目のタイトルトラック「Happy to Perform」は、静かに始まりますが、哀愁漂うメロディとそれをなぞるギターが印象的です。中盤からはドラムやサックス、ピアノが入ったりして盛り上がります。一つのメロディを繰り返すとてもシンプルな曲ですが、それで乗り切ってしまう程の魅力が宿っています。続く「Goneski」は、これまた呪術的な魅力を放つ小品です。ドラムのビートが土着的です。それが、ニュージーランド特有のものなのかまでは分かりませんが。「Wholebody Blues」は、浮遊感のあるメロディが堪らない小品。こうしたミニマルながら魅力的な曲が並びます。
アルバムもコンパクトでさらっと聴けてしまいますので、ぜひ一聴してその魅力を体感してみてください。

12位

Jubilee / Japanese Breakfast

「Be Sweet」

韓国系アメリカ人のMichelle Zauner率いるIndie popバンドの3rdアルバム。

今作は、極上のポップソング集です。煌びやかでドリーミーなサウンドにポップなメロディ、更にリズムはダンサブル。オープニング「Paprika」は、溢れるシンセの音色と行進するスネアドラムに乗せて瑞々しいメロディが歌われ、豪華なホーン隊がやって来ます。まるでパレードの様です。続く「Be Sweet」は、キラーチューンですね。飛び跳ねるベースとドラム、ミラーボールの様なシンセに乗せて、キャッチ―で甘いメロディが歌われます。この曲であなたの部屋もダンスホールに様変わりします。「Kokomo, IN」は、美しいストリングスのハーモニーによだれが出ます。「Slide Tackle」は、アッパーなリズムにアンビエントなシンセ、相変わらずポップなメロディに豊かなホーンが彩ります。アルバム後半は、少しゆったりとしつつも、甘いポップソング達が登場し続けます。
さあ、今作を再生して部屋で1人踊りましょう。

11位

if i could make it go quiet / girl in red

「Serotonin」

ノルウェーのMarie Ulven Ringheimによる、Indie popプロジェクトgirl in redの1stフルアルバム。

Bedroom popからEmo rap、EDMまで横断してみせる1曲目「Serotonin」に顕著なように、Bedroom popを起点としながらもジャンルレスな本作。続く「Did You Come?」では、ピアノを使用しながらもPop punk的な一曲。Dubstepを取り入れた「Body And Mind」。ピアノによるバラードからElectropopへと姿を変えていく「hornylovesickmess」。レイドバックしていく「midnight love」。「You Stupid Bitch」では、再びPop punkと、次々とジャンルを渡り歩きながら聴き手を楽しませてくれます。アルバム後半は、比較的Bedroom pop色、Pop punk色が強くはなってきますね。歌詞に目を向けると、「Serotonin」では、”I'm running low on serotonin Chemical imbalance got me twisting things Stabilize with medicine There's no depth to these feelings Dig deep, can't hide From the corners of my mind I'm terrified of what's inside”とうつ病について歌われています。そしてアルバムは、「it would feel like this」というタイトルのピアノとストリングスによるインスト曲で幕を閉じます。
さあ、本作を聴いて彼女と一緒に色々な音楽の世界を冒険しましょう!

10位

よすが / カネコアヤノ

「閃きは彼方」*動画は弾き語りのライブ音源

SSWのカネコアヤノによる5枚目のフルアルバム。今現在日本で最高峰のライブバンドであり、ライブアクトです。今作は、ほぼ毎日カネコアヤノを摂取していた3、4年前からすると驚く程控えめな評価に落ち着きました。とは言っても、この順位ですから当然素晴らしい作品です。

先ずは、何と言っても彼女の歌は最高ですね。そして、バックを支えるバンドの演奏も素晴らしいです。縦横無尽に駆け回るベースと緩急あるドラムが曲を引っ張ています。ギターは本当にトーン、フレーズ共に素晴らしいですね。曲によって使い分けられる、バンジョーやペダルスティールギター、アコーディオンなども良いアクセントになっています。日常を綴る歌詞は相変わらず素晴らしく、全曲全編引用したくなるほどです。ハッとさせられるラインも多いですね。少しだけ挙げるならば、「閃きは彼方」”世界が一度終わりを迎える やりなをせるよ  元通りじゃない”、「春の夜へ」”勝手ばっか考えろよ  今日だけ 好きなことができるよ  僕たちはさ”、「窓辺」”嫌で解ける  日々を編む 少しづつよくなっていけばいいね”などなど。こうしてみると悲しみに暮れながらも、前向きに進もうという意志が強く感じられます。そして、”わかってたまるか”と繰り返される「爛漫」は鮮烈ですね。”お前は知るのか 季節の終わりに散る椿の美しさを 身体が火照るような赤、赤、赤い色 僕の心の様”、”生まれてしまった  そのせいで ぼくにはできる  お前を守る”、”自暴自棄よりもはやく走るしか 明るい部屋はないんだよ”など。彼女の優しくも力強い歌声によって歌われる、これらの言葉が沁みます。
今作も素晴らしい作品ですが、やっぱり彼女の神髄は弾き語りでもバンドでもライブなので、ぜひ本作や過去作を聴いて、ライブに足を運んでみてください。

9位

SOUR / Olivia Rodrigo

「drivers license」

ディズニー・チャンネルで女優としてキャリアをスタートさせた、US出身Olivia Rodrigoの1stアルバム。

ディズニー・チャンネルのスターという事で、正直言って多少偏見を持っていたのですが、試しにアルバムを聴いてみたら、冒頭「brutal」から激しいオルタナギターリフで始まりブチのめされました。その後の曲も、ディズニーアイドルという枠に納まらずに、見事な飛躍を見せています。デビュー曲「drivers license」は大ヒットしました。と言うか、アルバムも大ヒットでしたね。今年のロック最大のヒット作です。「good 4 you」はAvril Lavignen等の影響を感じさせる、Pop punkな1曲ですね。ピアノによるバラード「1 step forward, 3 steps back」は可愛らしい一曲です。その他の曲もバラードが多いですが、粒ぞろいです。歌詞も率直なものが多いです。例えば「drivers license」は、最初に”I got my driver's license last week”と先週、運転免許証を取った事、”you were so excited for me”それを楽しみにしてくれていた「あなた」が居た事が語られますが、”To finally drive up to your house But today, I drove through the suburbs Crying 'cause you weren't around”遂にその「あなた」の家まで車で行くも、一人泣きながら郊外を走る「私」。失恋の歌ですね。二人で行った場所に一人で行っては悲しみにくれたりと、その後も失恋の悲しみが率直に歌われます。曲を締めくくる”you said forever, now I drive alone past your street”は非常に切ないです。他にも失恋の歌が多く収録されています。
Billie Eilishに続く次世代のスター候補です。歌詞も分かりやすく共感しやすいと思うので、歌詞を見ながらぜひ全編聴いてみてください。

8位

無限のHAKU / ROTH BART BARON

「Ubugoe」

三船雅也によるソロプロジェクトとなった、Folk rockバンドROTH BART BARONによる6枚目のフルアルバム。

タイトル通りサウンドも極彩色だった前作から一転して、音数が減って洗練された印象です。前作と比較して音数が減ったとは言え、そのストリングスやホーンを駆使したスタイルは変わっていません。アルバム通して素晴らしい曲達が並んでいますが、中でも1曲目「Ubugoe」とラストの「ホウオウ」は今年ベストソングの一角ですね。全体通してサウンド構築が素晴らしく、聴いていて心地よいです。サウンドはとても洗練されていて現代的なのですが、リズムが原初的でどこか体の底からエネルギーが沸き起こってくるような感覚を覚えます。「Ubugoe」は、”沈黙の都市で”や、”光が消えた街”と言うここ1、2年の世界を表現した言葉が並びます。そして、”いなくなる  人混み  もう全部に  飽きた”、”どこへ  行けば  僕ら笑えるだろう? どこへ  行けば  生きていられるだろう どこへ  行けば  君に出会えるだろう どこまで  行こう  たどり着く場所まで”と皆が感じているであろう、行き場のない気持ちが代弁されます。
真っ白なキャンバスに描かれる本作の色は聴き手にゆだねられています。静かな祝祭となった今作、ぜひ全編聴いてみてください。

7位

Chemtrails Over The Country Club / Lana Del Rey

「White Dress」

SSWのLana Del Reyによる7枚目のアルバム。高評価だった前作の壮大でロマンチックなSoft rock的な作風から一転して、本作はCountry folkやAmericanaといった作風です。

一聴しただけだと地味な作品に思われるかもしれませんが、聴くうちにその静かな中に宿る凄みにあてられていきます。ピアノがフィーチャーされていますが、音数も抑えられたミニマルな作風で、彼女の歌だけでほぼ全て持って行くような作品ですね。これで聴かせちゃうんだから凄いですよ。特にオープニング「White Dress」と続く「Chemtrails Over The Country Club」は圧巻です。サウンドもレトロ調でありながらも、どこか新しいですね。リバーブが上手く使われています。ミニマルながら、演奏も起伏を作るのに効果的に行われています。日本人の筆者にはこの深淵な詩世界を理解することは難しいですが、”It's dark, but just a game”と繰り返される「Dark But Just A Game」は、比較的分かりやすく、ポップな曲なので聴きやすいでしょう。
ジャケット通りモノクロで、じっと聴いていると濃淡が鮮やかに感じられる、彼女の歌の力に引き込まれる本作。ぜひ全編聴いてみてください。

6位

An Overview on Phenomenal Nature / Cassandra Jenkins

「Michelangelo」

USのSSW、Cassandra Jenkinsによる2ndフルアルバム。

静謐で幽玄、アンビエントなIndie folk作品。筆者は、疲れ果てた時にこの作品を聴いて、魂を洗われたような気分になりました。フレットレスベースによる胎動するようなベースラインに乗せて、息遣いやリップノイズまで聞こえてくるほど近い親密な距離で歌われる詩は、友人の死の悲しみとその受容と解放の物語です。オープニングの「Michelangelo」は、”I'm a three-legged dog”と喪失感を表現する彼女の歌と歪んだギターのブリッジミュート、寂しげなシンセの音で幕を開けます。そこにドラムとベースが入ってきて、徐々に静かに盛り上がったかと思うと、ファズィなギターソロが挿入されます。このギターソロも堪りませんが、その後包まれるようなストリングスやって来ます。ここまででもう多幸感が凄いです。その後もそれらの楽器や、ピアノ、サックスなどによりユーフォリックな音楽が鳴らされ続けます。アルバムを締めくくるのはインスト曲「The Ramble」。この曲は、環境音から始ります。その後様々な楽器が鳴らされますが、印象的なのはサックスと降り注ぐシンセですね。万華鏡の様です。最後には環境音だけが残され、鳥のさえずりでアルバムは幕を閉じます。
さあ、あなたも魂を洗う旅に出かけましょう。

5位

Collapsed In Sunbeams / Arlo Parks

「Hope」

ナイジェリア、チャド、フランスの血をひく、UK出身のSSW、Arlo Parksによる1stフルアルバム。Frank OceanやKing Kruleに影響を受けたという、Neo soul色の強いBedroom popシンガーです。

アルバム通して心地いいビートに乗せて、詩人Arlo Parksにより彼女の身近で起こった事が歌われます。ジャジィなドラムや、Trip hopに影響を受けているというビートがカッコいいです。Neo soulやTrip hopといった言葉を挙げましたが、これらは様々なジャンルを飲み込んで出来たジャンルであり、それらを見事に昇華する彼女の音楽的素養の深さがうかがい知れます。サウンドも素晴らしいですね。壊れてしまいそうなほど繊細に感じるのは、演奏やサウンドからでしょうか、彼女の歌でしょうか。その繊細さを壊さずに上手く表現している、演奏のレベルもとても高いです。彼女の歌、フロウも最高です。アルバムは短いタイトルトラック「Collapsed In Sunbeams」で、アンビエントなトラックに乗せて、”You shouldn't be afraid to cry in front of me.”と言う言葉で始まります。続く「Hurt」は、シンプルながら秀逸なベースラインとブレイクビーツに乗せて、”Won't hurt so much forever Won't hurt so much”と繰り返されます。洒脱でカッコいい曲です。他にも”You’re not alone like you think you are We all have scars, I know it’s hard You’re not alone, you’re not alone”と繰り返される「Hope」など、詩も素晴らしいです。今年多くの人の心を救った一曲、一枚なのではないでしょうか。
ぜひ全編聴いて、彼女の優しい歌と心地いいビートに揺られてください。

4位

HEY WHAT / Low

「Days Like These」

US出身、1994年デビューのベテランIndie rockユニットLowによる13枚目のアルバム。元々Slowcoreの代表格だったバンドですが、その時期のことは正直あまり知らないので悪しからず。

讃美歌×グリッチノイズと云うとんでもない組み合わせの本作。ジャンル付けしにくいですが、Experimentalと表現しましょうか。高評価だった前作よりも歌にフォーカスしており、ぐっと聴きやすくなっています。ほぼドラムレスで、加工されまくったギター(とは思えない)でビートを刻みます。ノイズに流されてビートが無い場面も多々ありますが。そんな、ギターをギター・シンセサイザーなどのエフェクターで加工して生み出されたノイズに乗せて、男女二人のボーカルによって美しく、ポップに歌われます。この乱暴なまでのノイズと美しい歌を、とても良いバランスで紡いでいきます。そう言うと、ShoegazeやDream popとも近いかもしれません。それらにIndustrialを混ぜた感じと言えば伝わりやすいでしょうか。一曲目の「White Horses」の冒頭からアルバムを通して、これまで聴いたことのない様な音をたっぷり聴かせてくれます。
異形の讃美歌ぜひ聴いてみてください。

3位

Misericorde / Tiny Little Houses

「Car Crash」

このバンドを知っている人は少ないのではないでしょうか。オーストラリアのIndie rockバンドです。11月中旬にリリースされたばかりの本作。筆者もつい先日まで知らなかったのですが、Spotifyにおすすめされてぶっ刺さり、一気にこの順位へと躍り出ました。本作は彼らの2枚目のフルアルバムです。

皆大好きPavementや、Pixies、Built to Spillなどの系譜にあるIndie rockですね。昨年のHappynessの作品にも近いんじゃないでしょうか。全曲良い感じに捻くれポップソングで、胸キュンです。筆者のストライクゾーンど真ん中。筆者はThe Libertinesよろしく、こういう複数人でヘロヘロ歌ってるのが大好きなんですよね。1曲目の「Cold Showers」など、時にはShoegazeかっていうほど歪ませたギターに乗せて、ギターの美しいフレーズや甘美なメロディが歌われます。全体的にギターの音作りが素晴らしいです。ドラムも良い感じにドタバタしています。とにかくヘロヘロ歌われるポップなメロディが最高です。2曲目の「Car Crash」なんかは、歌いだしからもうガッツポーズ。特にアルバム前半はキラーチューンが連続して投下されます。全曲筆者の心のアンセムです。特に「Smartest Guy」のサビのメロディなんかはポップセンスが大爆発していて最高です。アルバム後半は、ゆったりとしたドリーミーな曲が多くなります。過去作も良かったので、筆者の好きなバンドランキングTOP5に入るくらい好きなバンドとなりました。
メディアにもほとんど取り上げられていませんが、これぞIndie rockと言いたくなる隠れた傑作。ぜひ全編聴いてみてください。

2位

Blue Weekend / Wolf Alice

「Smile」

UKのAlternative rockバンドWolf Aliceの3枚目のフルアルバム。

最初スピーカーで聴いていた時は、正直こんなに良いとは思わなかったのですが、ヘッドフォンで聴いてその降り注ぐようなサウンドに驚愕しました。そのくらいサウンド構築が素晴らしいです。Shoegazeと言う声もありますが、どちらかと言うとDream popを感じます。どちらにしろ聴いていて陶酔感が凄いです。開幕「The Beach」の、波のように徐々に押し寄せてくるサウンド展開が堪らない。ラストの降り注ぐようなボーカルが美しいです。その美しさに聴き惚れていると突然終わって次の曲に移ります。「Delicious Things」こちらも、サビでリバーブのかかった美しいボーカルが降り注ぎます。ボーカルにばかり耳が行きがちですが、秀逸なベースラインが曲を駆動しています。ドラムワークも素晴らしく、ギターも良い音です。そのまま流れる様に「Lipstick On The Glass」、こちらも美しいボーカルと響くベースが印象的な曲です。かと思うと、次は固いサウンドの「Smile」がやってきます。歪んだうごめくベースが曲を駆動していき、シンセとバンドサウンド、リバーブのかかったボーカルが融合して強烈なサウンドになります。激しさと美しさが同居した素晴らしいロックソングです。続く「Safe from Heartbreak (if you never fall in love)」は、一転して美しく甘い一曲です。その後も、美しいポップソングと激しいロックソングを織り交ぜながらアルバムは展開していきます。
これまでも秀作を出して来ましたが、この作品で見事に羽ばたいて見せました。このまま行けば、次世代のヘッドライナー間違いなしです。ぜひヘッドフォンを着けて最初からお聴きください。

1位

Two Saviors / Buck Meek

「Candle」

USのIndie rockバンドBig ThiefのギタリストBuck Meekによるソロ2作目。(Adrianne Lenkerとの共作含めると4作目)
これまでのバンドの作品も、ボーカルAdrianne Lenkerのソロ作も素晴らしい作品でしたが、今作もIndie folk / SSWの作品として出色の出来です。曲も粒ぞろいです。メディアの評価はそこまで高くは無いものの、一年を通して聴き続けた筆者の大好きな作品なので1位としました。

アコースティックギターを基調とした、カントリー色の強いフォークソング集ですが、彼のふらふらとした歌い方と相まって浮遊感のあるルーズでドリーミーなサウンドとなっています。ラップスティールギターや、いい具合に歪んだエレキギターで弾かれるフレーズも美しくもどこか退廃的な雰囲気を醸し出しており、聴いていて気持ちいいです。オルガンやピアノの音も気持ちいいですね。ゆったりとしたドラムも素晴らしいです。アナログテープに一発録りで録ったそうです。その効果もあってか、生々しいバンドサウンドで、終始リラックスした演奏に浸らせてくれます。Deerhunterや、Whitneyなどが好きな人は好きなんじゃないでしょうか?完全に筆者の好みですが、今年圧倒的に一番好きなアルバムです。
メロディもポップで聴きやすい作品なので、ぜひリラックスして全編聴いてみてください。

来年2月に出る予定のバンドの新作も、とても楽しみですね。


以上、「2021年マイベストアルバム TOP20」でした。
いかがでしたでしょうか?何か新しい発見をしていただけていたら嬉しいです。
入れたかった素晴らしい作品が他にも沢山有りますが、このリストで今年のIndieシーンの美味しいところだけをつまみ食いすることが出来ます。サウスロンドン勢が抜けていますが、そこは筆者の好みの問題で入っていませんので、ご了承ください。
まあ、これだけ長い記事なので、全部読んで、全部聴いたという方(そういう方には本当に感謝です)は少ないと思うので、今回の記事をまとめたプレイリストをSpotifyで作りました。

今年の名曲揃い踏みの良いプレイリストになりました。これを流し聴きでもしてもらって、気になる曲が有ったらまたこの記事に戻って来て頂けると幸いです。

まだまだ未熟ですが、好評でしたらこれからも執筆していきたいと思いますので、スキ、シェア、フォロー等していただけると嬉しいです。

お読みいただき、本当にありがとうございました!

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