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T.Rex

Tyrannosaurus Rex - My People Were Fair and Had Sky in Their Hair... But Now They're Content to Wear Stars (1968)

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 早すぎた死を迎えたロックスターの数々。しかしその死を最初から予言していた人はほとんどいないだろう。アイツはそのウチ死ぬに違いない、みたいに言われていた人はたくさん存在していて、結果まだ生きてるキースやクラプトンもいて、それは皆が皆ドラッグによるもので目の当たりにすると信じられない光景を生き抜いてきたからだろう。しかし自ら「30歳まで生きられない」とか「これが最後のシングルになる」とさらりと言ってしまう人も珍しい。そして実際にそうなったのがマーク・ボラン。

 キャリアは長くてティラノザウルス・レックスの前にジョンズ・チルドレンでギター弾いてたり、その前もプロになるための修行、例えばパリで魔法使いと同居して黒魔術を学んでいた変わり者で、プロになってからもクラプトンにギターを習いに行ってた。それに有名なのはアルバム「The Slider」のジャケット写真をリンゴスターがジョン・レノンの家の庭で撮っている。その魅力、そういう運命に持っていく事が彼の恐ろしいところで、21世紀となった今でもCDが何度も再発されるくらいにカリスマ的人気を誇っている。決して音楽的にレベルの高いことをしていないのに、完全にカリスマ化されている。1972年の初来日当時は後光が差していたとか、多分ホントだと思う。それくらいあっても不思議じゃない。

 そんなマーク・ボランがティラノザウルス・レックスで最初にシーンに出てきたのは1968年。有名なシングル「Debora」がデビュー作品で、その「Debora」が入っていないアルバム「ティラノザウルス・レックス登場!!」をリリース。これがまた実に不思議で、英国の1968年と言えばもうサイケデリックムーヴメント真っ只中だけど、アシッドフォークをモロに実践してて、しかも相方はスティーヴ・トゥックのパーカッションだけで、もの凄く土着的と言うか精神的に高揚する民族音楽的な側面も持っていて、そこにマーク・ボランの浮遊的で揺れまくっている軽い歌声が呪文のように囁いてくる何とも独特の雰囲気の作品。後のおもちゃ的サウンドとは異なり、T-Rexの影の部分が分かるので、不思議な人は最初期を聴いてルーツと彼の裸の姿を知れます。

 この浮遊的傾向はセカンドアルバム「神秘の覇者」まで続き、やはり英国的にシングル作品はアルバムに入らないので、別に揃えないと聴けない状況がしばらく続く。だからまともなT-Rexのベスト盤を入手すると大体数曲だけこの時期の妙なサウンドが入っているので、耳を惹く音であってほしい。「Debora」や「One Inch Rock」があると思う。

 CDでは何度か再発されてて、オリジナルのモノ・ステレオ音源丸ごとと、更にシングル三曲を加えて出ているのでたっぷりと堪能できるボリューム。紙ジャケにもなってるし、やはり伝説的英雄です。

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