Jeff Beck #1

Jeff Beck - Truth (1968)

　改めて聴くととんでもない音が詰め込まれている第一期ジェフ・ベック・グループの最初のアルバム「Truth」では、以降フェイセスやソロ活動でロックンローラーのセクシーさを売りに第一線で活躍する名ボーカリスト、ロッド・スチュワートをメインボーカルに据え、ベースにはこの頃まだ全く無名だったロン・ウッドが参加している素晴らしきメンツでのアルバム制作。プロデュースはミッキー・モストを配して、鍵盤にニッキー・ホプキンスと、これ以上ないくらいの面々でのアルバムは60年代末を飾るに相応しいテクニカル且つロックなバンドとして君臨する、はずだったが…。

　なかなかロックの歴史はそう簡単にいかないなと思う。アルバムの中味はベック全アルバムの中でも個人的には一番好きな作品で、バンドらしいアルバム。そしてベックがまだ初期の影響力に忠実にブルースを基調とした楽曲を揃えているところが聴きやすさを備えている。初っ端からヤードバーズの有名作を新アレンジでカバーし、ロッドのボーカルを最大限に引き出しているところはインパクト絶大。このアルバムでは完全にロッドがベックを喰ってるし、またベックがバンドのギタリストとしてのプレイに徹しているところも良い。一般的にLed Zeppelinとよく比較される「You Shook Me」は、タイミング的にはベックの方が若干早かったけど、大体同じような年の同じような場所に住んでた若い連中が影響を受けたと言えば似たようなもので、同じ曲を選び同じくパクリ的にオリジナルなセンスで勝負するのも同世代ならではだろうから比較論はあまり意味ない。バンドの目指す方向性に合わせたアレンジになってるだけで、ベックの方が原曲に忠実にハードにプレイされている。Zepの方はアレンジ云々もあるけどボーカリストの声質の違いが大きいだろう。ロッドはブルースも声質的に平気で歌える人だけどプラントはどう聴いてもブルースの声にはならない。好みの問題だからいいけど、ここでのベックのギタープレイはまだ人間らしくブルージーに弾いている。年と共に宇宙人的ギタープレイを弾くようになるベックにしてはスタンダードで結構好き。一方ペイジが書き上げた「Beck's Bolero」のメンツはこれまた凄くて、キース・ムーンにジョン・ポール・ジョーンズ、ベック、ペイジ、ニッキー・ホプキンスと夢のある時代だ。

そんな事でベックの作品にまつわるロック話にはキリがないけど、第一期ベックグループは続く「Beck Ola」で解体し、更にルックスの似たコージー・パウエルを迎えた第二期に入っていくがその辺はまたいずれ。しかし「Truth」に収録のラストの「Blues Deluxe」のブルースでのロッドの歌声と言ったら堪らない。聴いていて気持ち良い。これくらい気持ち良くさせてくれないとアカン。もちろんニッキーのピアノもベックのギターも本当にブルース好きな感じでこのアルバム中最高の出来映えです。「Beck Ola」では「Jailhouse Rock」があるし、やはりこの頃のロックは熱くてユニークで面白い。