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2016年4月の記事一覧
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_03
第3話/2007年4月中旬:覚醒したような、してないような。
明け方、犬養が重い腰を上げて妻の待つ家に帰ると、再びやることが無くなった。仕方がないので、部屋の掃除をはじめ、やりかけで眠くなって、眠気に逆らう理由もないので、素直に眠った。目を覚ますと14時過ぎていて、日差しは残酷なほど心地よく、どうやら残念なことに春も半ばを過ぎていることがよくわかった。仕方がないので、さしたる意味もなく、400
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_04
第4話/2007年4月中旬:無職の職業病。あるいはプロ意識の残滓。
「だーかーらー、担当業務の列記から、なんで急に“です・ます”調の説明文に変わっちゃうんだよ。こういうときは体言止め!わかる?名詞で言い切って止めるの。箇条書きもマトモにできないのかよ」
ある晩、犬養の自宅に招かれた僕は、犬養を赤ペンで小突いていた。プライドの高い犬養が無抵抗で僕に小突かれている状況は、悪くない気分だった。いや、
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_05
第5話/2007年4月中旬:笑われて、笑う。
「すぐに過去の仕事をまとめて、明日、原宿のN事務所に来い」
犬養を怒鳴ってから3日後。あの勢いは、とうに消え失せ、K氏の命令口調に逆らう力はなかった。
しかし、正直、今度ばかりは本当に、かなり、すごく嫌だった。気が重い。いや、もう、あれだ。全身全霊が重い。K氏の言う「原宿のN事務所」とは、K氏が仕事場として間借りしているウェブデザイン事務所のこ
ころがるえんぴつ/某コピーライターの独立とかの話_06
第6話/2007年4月下旬-六角形の内角の和を求めよ。
立場、職業、精神ともに、全てが曖昧なまま、僕は頭をかきむしっていた。先日、無責任に発現した「刃」を振りかざした結果、その謎のキレ味を評価され、例のソフト会社のサイトのサイトマップとワイヤーフレーム、全ページのコピーを受注することになっていた。お金がないのだからそれは引き受ける。うん。志なんてそこにはない。僕はコピーライターを辞めたんだ。そ