8日目

今朝はドアを叩く音で目が覚める。
何だ?と思いながら、ベッドから降りブーツを履く。ドアを開けるとコナが立っていた。
見ると出掛ける準備は万全のようだ。
朝です!行きましょう。満面の笑みで言う。
早いな。と返答をすると、早く仕事したいんです!
との事だ。
昨日依頼を達成出来て嬉しかったのであろう。
依頼をこなす事でコナの自信に繋がっているようで良かった。
準備するから先に食堂に行っててくれ と言うと
わかりました、、 と食堂に向かってトボトボと歩いていく。

今日はどんな依頼があるのか?コナも居る事だし少し依頼の難易度を上げても大丈夫だろうか?

などと考えながら支度をする。
支度が終わり食堂に向かうとコナを探す。
コナは席に座り俯き下を向いている。
コナの前に座り、どうした?と聞くと
周りに大勢の人がいると緊張するんです。。
と答える。
それで、朝部屋まで迎えにきたのか。
慣れている人が近くにいると大丈夫なようで、合流してから料理を注文し、朝からこんなに食べるのか?と言うくらいの料理を注文し、美味しい美味しい と平らげていく。
微笑ましい光景を堪能させてもらった。

食事を済ませ、ギルドに向かう。
コナの食事に時間がかかり、1人の時よりも、ゆっくりの到着だった。

コナを部屋隅のテーブルで待たせ、依頼票の確保に向かう。
食事をしている時にコナと相談し、今日は少し難易度を上げた依頼を受けるつもりだ。

昨日の失敗を繰り返さないようにと、ボードの前に陣取る。暫くすると依頼票が張り出される。

採取系の依頼より駆除系の依頼の方が報酬は高い、
今日は思ったより冒険者の数が少なく、意気込みも虚しく吟味する事ができた。

ウルブの駆除があるが、2人になったところで個々の冒険者としての経験が不足している。
B級冒険者に上がる為には避けては通れない動物だが、無理せず焦らず、もっと経験を積んでから受けようと思う。
後は、ホーンスレイプと言う動物。
初めて聞く名の動物だが危険度は低いようだ。
この依頼票をボードから取りカウンターへ、昨日のような混雑は無く老婆からホーンスレイプの大まかな情報を聞く事が出来た。

頭かに生やす一対の角が特徴的で、主に草を主食としている。移動速度はラピと比べて格段に早く、近接武器では不意を付くか、寝込みを襲うかでないと取り逃がしてしまうようだ。
警戒心も強いようで、近づく際には細心の注意を払わないと逃げられる。
安定的に狩るには、弓や投射の遠距離から使える道具が必要との事だ。
中型の動物なのだが、危険度は低いのでC級ギルドにも依頼が回ってくるようだ。

作戦は整体書を見て決めるとして、弓が必要だなと、依頼書を受け取り礼を言いコナの元へ行く。
ここでも、恥ずかしいのか俯いている。
声を掛けると、安堵の表情を浮かべ 遅いです、、と言ってきたので、お陰で良い依頼を受けれた と返答する。コナに詳細を説明する。
すると、自信ありげに 任せてください と言うので、任せた!と答えた。
コナの自信はどこから来るのか?その理由は後でたっぷり思い知る事になる。

指定のポイントに行く前に、寄りたい所があると言うのでついて行く。武器を扱う露店の前で立ち止まる。コナは恥ずかしそうに店主に声をかけた。
だが、静止し、露店から少し離れる。
初日にナイフをぼったくられた話をすると、え?
とキョトンとした顔をする。
話によれば、コナも最初にここで、取り敢えずのナイフを買ったらしいが思いの外高く、しかも上手く言いくるめられナイフ2本も買わされたようだ。

本当は、ナイフと弓が欲しかったようなのだが、勢いで買わされ性格上文句も言えなかったとの事。

で、依頼報酬で弓をかうつもりだったが、依頼も満足に受ける事が出来ずにそのままになっていたようだ。
何故弓なんだ?と聞くと、家業が猟師らしく弓の心得があるようで、何度かホーンスレイプも仕留めた事があるようだ。
先程の自信はこれが理由なのかと納得した。
後はどれ程の腕があるのかが見物だ。
そんな事を考えていると、悪い顔してますね と
言ってきたので、素直に先程の考えを話す。
すると、まぁ任せておいてください と笑みを浮かべた。

武器専門店に連れていき、コナは念願の弓を手に入れた。
コナが言うには、弓にも種類があり、小さなショートボウ、ショートボウより大型なロングボウ、重く弓を引くのに力がいるのであまり使う人は居ないようだが、ロングボウよりも飛距離や貫通力のある、パワーボウがあるようだ。
狙撃向きの弓らしい。
弓の素材にも、軟鉄や合金を使った物など、木で作られているという、一般的な弓のイメージとは違うタイプの弓も存在するようである。

今回コナが買った弓は、木で出来た一般的なロングボウだ。遠距離からホーンスレイプに見つかる事なく仕留める作戦らしい。
コナの腕前が本物なら、今後色々な事が出来そうだ。

矢筒を腰に下げ、弓の弦を貼る。
所作が玄人みたいだ。
モジモジしているコナとは別人のようだ。

行きましょう!得意分野なので張り切っている。
今日は任せた!宜しく!と返答する。
任せてください!と力強い返事が返ってきた。

シュルッ
その瞬間、遠くで動物が倒れ込む。
この光景を見るのは何度目だろうか?
倒れた動物は何が起こったのか分からないまま絶命しているであろう。
神業と言う言葉が相応しい。

コナ曰く、父や兄に比べたら私は大した事ありません。と謙遜ぎみに喋る。

コナでさえ、この力量、それ以上という家族はどんな感じなんだろう?疑問に思う。

またたく間に、依頼のホーンスレイプの角を5本手に入れる事が出来た。
解体もコナが行う。
昨日のラピの解体も、このベースがあってこそなのかと関心する。
引っ込み思案な性格がなければ、冒険者生活、躓く事なく送れていただろう、それに、この性格が無ければ出会う事も無かったように思う。
出会いとは、何処でどうなるか分からない。

依頼品を納品する為にギルドへ向かう。
報酬を受け取り、全額コナに渡す。
コナは、え?と言う顔をして、どうして?と聞いてくるので、今日の依頼はコナが全部やったからだ。
と答えると、不貞腐れたように、報酬は半文こです と言ってくる。
依頼を取ってきてくれないと仕事が出来なかったし報酬もなかったから半分こです。
と言う言い分だった。
言葉に甘え報酬を半分受け取る。
素材を売る専門店で得た収入も折半にしてくる。

流石にこれは受け取れない。と言うと、今日は任せてくださいと言ったでしょ!今度はお任せしますね。と屈託の無い笑顔を見せた。

流石にこのままでは格好が付かないので、少し遅めの昼食を奢ることにした。

昼食を食べ終わり、寄りたい所があるのでそのまま別れる。
寄りたい所と言うのは、街の外。
腰に吊っている片手剣が飾りになりつつあるので、少し練習をしようと思うのだ。
なにせ、購入してから一度も抜いていない。
さっそく抜剣をする。
少し上下に振り下ろしてみるが、なんだか軽い。
過去の記憶が無いので何とも言えないが、目覚めてから剣を振ったのは初めてだ。
剣が手に馴染む感覚も無いので、過去に一流剣士だったとかの都合の良い展開では無いのが残念だ。

そのまま素振りを繰り返す。
気が付けば夕方になっていた。
息も上がっておらず汗もかいていないようだ。
体力と持久力だけはあるようだ。
今日コナの活躍を見て、何ができるのか?と思い知りたくなったのだ。
帰りに武器専門店に寄ってみる。
前回同様に筋骨隆々の店主が、見た目にそぐわない優しい声で話しかけてきた。
前にオススメの片手剣を買ったのだがと、剣を見せると、あんときのアンちゃんか と思い出してくれた。
片手剣はこんなに軽いのか?と聞くと。
店主は うーん と頭をひねる。
ちょっと振ってみろ!と言うので抜剣し上下に振る。
そっちの、両手剣を振ってみろ!と言うので持ち上げ振る。
こちらの重さの方がしっくりくるように思う。
こっちの両手斧はどうだ?と店主
持ち替え、両手に持ち振ってみる。
これが一番良い感じた。
鉄製の無骨な両手斧。
全体で胸位まである程大きい。
これをくれ、片手剣の下取りは出来るか?
と聞くと、その片手剣は良い物だから持っておけ。
片手剣を使う仲間が居るならそいつに渡してやれとの事だった。
斧を背負う為の留め具も買い、体に付けてみる。
しかし、斧を背負うとリュックが持てなくなる。
コナは体が小さいので重いものを持たせると、移動距離や速度に支障が出るので、コナの荷物もリュックの中に入っている。
どうしたものか?と店主に相談すると、斜め掛けでなく縦に収められる留め具を用意してくれた。
礼を言い店を出る。
使いやすい武器を勢いで買ったが、動物相手に果たして当たるのだろうか?
足を止める手段を考えなくてはと、考えてながら宿を目指す。
道行く人が振り返っている。
何だ?と思いながら宿に帰ると、入り口でコナが待っていた。
それどうしたんですか?と聞いてくるので、なんの事だ?と聞き返す。
その両手斧ですよ。と聞いてきたので、道行く人に見られていた事も含め、経緯を説明する。

コナが口を開く、今ちゃんと動けてますか?走れますか?と言ってくるので、その場で飛んでみせた。
驚いた表情で、すごいですね。。と言う。
何故だ?と聞き返すと、リュックも含め今何キロの
重量の物を背負ってるんですか?と、、
なるほど、それで見られていたのか。と合点がいく。苦にならないし、普通に動けるので良しとする、何か可笑しいか?と聞くと
貴方が良いならそれで良いんじゃないですか。
でも、その体力と筋力は異常ですよ。
と苦笑を浮かべた。

それよりご飯食べましょう。と一転して表情が変わる。コナの食欲よりは異常じゃないな!と笑いながら返答した。

部屋に荷物を置き、食事をする。
食事中に両手斧を活かせる作戦を2人で考えた。
明日、早速実践してみようと思う。