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【小小説】ナノノベル

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短いお話はいかがでしょうか
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#コント

疑念モーニング

疑念モーニング

「月曜日の朝、目玉焼きは食べましたか」

「国民の疑念を招くような朝食を食べたことはございません」

「サラダは食べましたか」

「お答えいたします。国民の疑念を招くような朝食を食べたことはございません」

「ヨーグルトは食べましたか」

「繰り返しになりますが、国民の疑念を招くようなものについてはございませんでした」

「食後にコーヒーは飲まれましたか」

「それも含めて、国民の疑念を招くような

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ワンリュック(憧れの四角)

ワンリュック(憧れの四角)

「今日はどんなのをお探しですか」
「できれば四角いのかなと」
「それでしたら、こちら一択になります」
「えーっ?」

チャカチャンチャンチャン♪

「こちら超おすすめのリュックになっております」
「なかなかのサイズですね」
「しっかりと入るようになっております」
「はあ」
「中にラーメン、チャーハン、他にも寿司やカレー、ハンバーガーなど何でも入れて運ぶことができます」
「ラーメン?」

チャカチャ

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先生の休日

先生の休日

「お休みの日とか何をされてます?」
「休みというのものは、
こういう仕事だから、
まあそんなには、
普通の人が持てるようには、
取ることはできない、
わけではあるのだけれど、
全くないかと言うと、
それはそういうことでもなく、
休みの日というのは、
あることはあります」

「お忙しいのですねー」
「それで、
実際に休みとなれば、
映画をみます」

「どんな映画がお好きですか」
「それは、
その日の

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名誉凡人100

名誉凡人100

おめでとうございます!
あなたは「影響力のない100人」の中の
一人に選ばれました!

チャカチャンチャンチャン♪

「あなたすごいじゃないの!」
「いや、すごくないよ」
「100人の中に入るって!」
「いや、ない方だから」

チャカチャンチャンチャン♪

「他には誰が入ってるの?」
「いや、みんな知らない人たちだよ」
「知る人ぞ知るのね」
「いや、どうかな」

チャカチャンチャンチャン♪

「世

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まずーい話

まずーい話

「せめてお名前を」
「名乗るほどの者じゃござんせんぜ」
「いいえ、せめてお名前だけでも」
 別に名を売りたくて助けてるわけじゃない。
 時に不可解なリクエストが俺の足を引っ張る。

「どうせ忘れんだろ」
「ええっ」
「教えたところで明日には忘れちまう」
「そんなことは……」
「だったら教え損じゃねえか」
「私は忘れません」
「忘れないって言う奴ほど忘れんだよ」
「絶対に忘れません」
「じゃあな」

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そば撃ち(矛盾決戦)

そば撃ち(矛盾決戦)

 世界一長い手打ち蕎麦vs世界一息の長い男。
 世紀の一戦として生中継されることになった。
 蕎麦1本を一息で飲めばアスリートの勝ち。途中で噛み切ったり、音を上げたら蕎麦職人の勝ちとなる。千年続く名店の蕎麦が勝つか、300年のアスリート・キャリアが物を言うか。
 今回の蕎麦は今までにない特製で、噂によると並の商店街の端から端よりも長いという。アスリートは日々努力を怠らず、民謡を歌って喉を鍛え、深海

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万引きGメン

万引きGメン

「駄目だよお父さん。万引きは立派な犯罪だよ」
「ああ知ってるよ。わざとやねん」
「まだあるんじゃない。あるなら全部出して」
「あるで。ポケットに酒もあんねん」
「自慢じゃないんだから。あったらよくないんだからね」
「わかってるで。わかった上でやってんねんから」
「駄目だよ。やったら駄目だからお父さん」
「そうや。駄目や。知ってんねん俺」
「わかってるならやめないと。そうでしょ」
「そうやで。それを

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【想像落語】認めてほしい

【想像落語】認めてほしい

 昔から男女の仲というのは難しいもんでござんす。一方が好きでも相手は興味がない。また周りから見たらなんでこんな奴というのに一途な想いを募らせたりと恋の話にはきりがござんせん。愛し合ったら地獄までと申しましょうか、他人からはどうにも止められない領域というのがあるんでございますな。とは言いましてもどうしても2人の間を認めてほしい。心から祝福されてみたいという大事な人もいるもんでございまして。今日も日本

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静寂のランチ・タイム

静寂のランチ・タイム

 近頃は何でもソーシャルディスタンスが定着している。マスクをし、距離を取り、無闇に声を上げないことが基本だ。この夏は酷い暑さの日が続くということもあって、より体力を温存しなければならない。
 無駄にリスクを冒さず、力を使わないということなら、挨拶だって不要だ。会社の朝も、コンビニのドアが開いた時も、昔と比べて随分と静かだ。

(会釈)

 この国には黙って頭を下げるという洒落た挨拶もあるではないか

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ヒール・インタビュー(代指し)

ヒール・インタビュー(代指し)

「一局を振り返っていかがでしたでしょうか」
「ああ終わったなという感じですかねえ」
「相掛かりから金が出ていくというのは、ある程度、作戦だったのでしょうか」
「作戦じゃないとおかしいでしょう。思いつきで出ていく人いますかね」
「前々からの準備があったということですね」
「作戦だから準備するでしょう。準備しない作戦ってあるんですかね」

「ありがとうございます。仕掛け辺りの局面は自信はあったのでしょ

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生きた仮説

「生きるということは、通りすがりの猫に竹輪をあげるようなものだ。出会うことは幸いかもしれない。でもそのあとは」
「そのあとは」
「君は猫の明日を知ることはない。猫は君の行方を知ることはないのだ」
「だから……」
「出会うが故に抱え込むものがあるということだ」

「わからない。どうして竹輪なの?」
「それは物の喩えじゃないか」
「喩え?」
「トータルで理解してほしい」
「どの道わからないな」

「わ

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脳天気会談

 大統領が専用機から降りてくるのを首相が笑顔で出迎えました。両国の首脳が直接会って会談するのは久々でした。
「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「あなたも大変お元気そうです」
 まずは互いの健康を気遣う挨拶から始まりました。
 その後は桜並木を歩きながら夜遅くまで活発な意見交換がなされました。

「顔色がよいですね」
「あなたも姿勢がいいですね」
「いえいえ。背が高いですね」
「いい色のネ

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お笑い裁判

お笑い裁判

 会見のあとで笑ったのは誰なのか。
 失笑罪に問われたのは猫だった。

チャカチャンチャンチャン♪

「猫は確かに笑いました」
 証人の花が言った。
「猫に間違いありません」
 カブトムシも同意見を述べた。
 やっぱり猫なのか……。
 傍聴席がざわついていた。

チャカチャンチャンチャン♪

 その時、扉が開き新しい証人が登場した。
 ライオンだ。
「それは不可能です。猫は鼾をかいて眠っていたので

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問題野郎

問題野郎

「また問題ばかり起こしやがって」
 文句を言ったところで反省の色も見せない。
「面白いのか? 人を困らせるのが」
 問題を起こすけれど、解決能力は少しも追いつかない。私は問題が表面化する度に呼び出して言葉をかけるだけ。今ではそれがルーティーンのようになってしまった。いつまで続くかわからない。問題と向き合うことが私の天職となるのだろうか。

 今夜も早速、問題が起きたようだ。
「またお前か! 何やっ

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