農薬は悪者なのか
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農薬は悪者なのか

「オーガニック野菜なので、安心してお召しあがりいただけます」
「こちらは有機栽培の野菜なので、身体に優しいです」

こういったフレーズを誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

野菜を販売する小売店、野菜を使った料理を出す飲食店の現場では、
少々値が張ってもオーガニックなものを選びたいという消費者が一定数います。

また、そこまではこだわらないにせよ、オーガニックであるに越したことはないという印象を持たれている方がほとんどかと思います。

では果たしてオーガニックこそが絶対善で、農薬は絶対悪なのでしょうか。

沈黙の春

農薬に対して白い目が向けられはじめたのは、1962年に世界的ベストセラーとなった「沈黙の春」が発端とされています。

本書の中で、著者であるレイチェル・カーソンは心情に強く訴えかける叙情的な語りによって動物たちの痛ましい姿を描き、生態系を破壊した犯人はほかでもない農薬であるとしています。

私もこの本を初めて読んだ大学生の時に強く影響を受け、地球環境を顧みずに科学的進歩を推し進めていく人類の姿勢はどうなのか、と今思えば恥ずかしくなるほど大見得を切って一端の啓蒙家にでもなったつもりでいました。

たしかに、「沈黙の春」は農薬の使用に待ったをかけることにとどまらず、
こんにちの環境問題を提起した火付け役となったことを考えると、その価値は計り知れないものだといえるでしょう。

しかし、沈黙の春から半世紀がたった今、統計によって新たな事実が明らかになっています。

白頭鷲は増えていた

実は、カーソンが描く「鳥たちが姿を消した」という現象は実際には起こっておらず、ある統計によればむしろ白頭鷲は農薬の登場以降に頭数を増やしていったといいます。

完全な形で因果関係がはっきりしているわけではありませんが、農薬によって与えた可能性のある損害を、使用によって得た利益がはるかに上回っている、というのが今の定説となっているそうです。

実際、もしも世の中から農薬を排除し、先祖返りした農法だけが許されることになったとしたら、数年に一度は大量発生した害虫が跳梁跋扈して飢饉が発生し、食糧供給に不安を覚えることがまるでない今の高い生活水準は吹き飛んでしまうことでしょう。

そんなことに想像を及ばせてもう一度考えていただきたいのです。
それでもオーガニックを信仰し続けますか。

農薬も量次第

とはいっても、無批判に農薬をまき散らして構わないと言っているわけではありません。
過剰に撒いた農薬は生態系だけでなく、食した私たちの身体にも悪影響を及ぼすことは明らかです。

そのため、規定以上の残留農薬が付着した作物は、厚生労働省が定めている食品衛生法に抵触し、そもそも出荷が出来ないようになっています。


そんな少量の残留農薬さえ体にとって有害で、蓄積することでがん細胞を生み出す、みたいなエセ科学を引っ提げることでオーガニック信者を増やし、収益を上げるネットワークビジネスのようなものも数多く存在していますが、全くの事実無根です。


農薬に限らず、薬と呼ばれるものはその量によって毒にもなれば薬にもなります。

その甘美な響きに誘われて「これを食べれば私もヘルシー」と笑みがこぼれる気持ちもわかりますが、オーガニックの肩を持つことは農薬に濡れ衣を着せることの裏返しになるのかもしれません。


私たちはその適量を守って使用された農薬野菜を食べることにも、もっと胸を張っていいのではないでしょうか。

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