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根尾昂のプロ1年目を振り返る

皆さん、こんにちは。2019年シーズン終了後一発目の記事として、今回は


「スーパールーキー・根尾昂のプロ1年目を振り返る」


をテーマに考えてみたいと思います。

プロ1年目の根尾は今季シーズンのほぼ全てをファームで過ごし、高卒新人ながら108試合444打席とかなり優先的に起用されました。

一軍の順位が確定された9月末には、ラスト2試合で自身初の一軍登録を果たすと、「聖地凱旋」となる甲子園での阪神戦にて、プロ初出場。結果は2試合とも守備から途中出場し、いずれの試合も空振り三振に倒れてしまいますが、高校時代に慣れ親しんだ甲子園でプロとしての第一歩を踏み出しました。

来季以降の飛躍に更なる期待が掛かりますが、そんな根尾昂のルーキーイヤーにおいて、特に後半戦以降でどのような点で成長が見られたかについて、以下で考えていきたいと思います。

また多くの方が気になっているであろう、

「今後彼をどの守備位置で起用・育成していくべきか」

についても、記事の最後に私見を述べたいと思います。

1. 二軍成績: 後半戦以降、尻上がりに打率向上

まず始めに、根尾の今季二軍成績を振り返りたいと思います。
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二軍成績
▽108試合
▽444打席 (リーグトップ)
▽打率.210 (規定ワースト2位)
▽2本塁打
▽33打点
▽9盗塁
▽24失策 (リーグ最多)

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上記二軍成績と一軍での2三振を見ると「流石の根尾でもプロの壁は高かったな」と思われるかもしれませんが、彼の打撃成績における成績推移を見ていくと、特に後半戦以降着実にプロレベルに適応していることが分かります。

この点については、7月に当ブログの「スーパールーキー・根尾昂の前半戦を振り返る」の記事でも指摘した通りです。

シーズン序盤は打率.140を行ったり来たりだった打率も、6月以降急激に打率を上げ最終的には2割をクリア。

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トータルで見れば物足りなさが残りますが、序盤から根尾を見続けてきたファンの皆様においては、打率2割を突破した時の喜びはひとしおだったと想像します。

次項からは、根尾の打撃と守備についてそれぞれフォーカスし、その成長について詳しく見ていきたいと思います。

2. 【打撃】 引っ張り&フライ打球がさらに増えて長打連発。三振は減り確実性との両立が少しずつできてきた

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まずは根尾の打撃について見ていきます。

7月の記事では
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「シーズン序盤は引っ張れない&ゴロばかりでプロの壁にぶつかっていたが、月を追うごとに適応し引っ張り打球&フライ打球が増えることで成績がついてくるようになった」
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と指摘していました。

後半戦ではさらにその傾向は顕著になり、強い打球が外野の間を抜けたり、大きなフライでフェンスを直撃する当たりがさらに増えるようになりました。

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また3打席に1回以上のペースで三振の山を積み上げていた前半戦と比べて、後半戦以降は徐々にですが三振割合も落ち着いてきたように思えます。

代名詞となったフルスイングで外野の深いところまで打球を飛ばせるようになりながらも、序盤のように簡単には三振しないコンタクト能力を両立できるようになったところに、スーパールーキーの成長が窺えます。

ここまで見てきた打撃面における成長を実際のプレーから読み解くと、以下の2点がその要因として挙げられます。

①「捻り依存」からの脱却
②上半身の柔軟性(胸椎の伸展運動能力)の高さが生み出すフルスイング

2-1: 打撃面の成長①「捻り依存」からの脱却

①については、春先に目立っていた身体をホーム側に捻った力に頼ったいわゆる「捻り依存」の打撃フォームが改善傾向にあるのが大きいと思いました。

上体を捻るフォームはパワーを生み出すことができますが、一方で半身の状態でスイングを始動しなければならず、それが三振の山を築いていた一つの要因のように思います。

しかし今季終盤には最後までボールを両目で見た上で顔を残しながらフルスイングすることが出来るようになったため、コンタクト能力とフルスイングの両立につながったと推察します。

2-2: 打撃面の成長②上半身の柔軟性(胸椎の伸展運動能力)の高さが生み出すフルスイング

②については、彼がシーズン途中どのようなトレーニングを重ねたかはわかりませんが、胸椎(背中)の可動域を大きく広げる事で上半身の柔軟性が高まり、結果として背中まで目一杯バットを振り切るフルスイングが実現できるようになったと感じています。

学生時代や今シーズンの春先にはあそこまでバットを振ってくる事は出来ていなかったように思うので、その上半身の柔軟性の向上がライト方向への強い打球が増えたことにつながったと推察します。

ここ半年でこれ程までの進化を遂げた点は、特筆に値するかと思います。

▼打撃面の今後の課題
ただ一方で来季に向けた課題としては、まだまだ体重移動が不十分な点が挙げられます。上半身と下半身を連動させて前足に体重をしっかり移動させきることができれば、さらに力強い打球を生み出すことができるはずです。例えば理想となるのは、日本ハム・近藤健介や広島・鈴木誠也が挙げられるでしょうか。

根尾には今後のフェニックスリーグやウインターリーグ、また秋季・春季キャンプを通してさらなる進化を期待したいところです。

3. 【守備】ショート一本で守り続けシーズンを完走。両リーグワーストの失策数も改善見られる

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次は根尾の守備について見ていきます。

シーズン途中から複数ポジションに挑戦するのではという憶測やファンの期待もありましたが、結局後半戦はほとんどの試合でショートのポジションを守り抜きました。

シーズントータルではチーム内のショート守備機会のうち88%を一人で守り抜き、計921回2/3の守備イニングは恐らくファームのショートストップでは最多だと思われます。

春季キャンプをマトモに消化することができず開幕前はどうなることかと思いましたが、蓋を開けてみれば将来のショートストップとして最優先で出場機会を与えられていたことが分かります。

一方でエラーについて見ていくと、7月の記事では「5月以降減少傾向にある」と書きましたが、後半戦はややミスが目立ち10失策を記録。

前半戦の14失策と合わせた24失策は両リーグ最多を記録しています。

一軍昇格後もショート守備にてかなり不安定なスローイングを露呈するなど、名手・京田と比較するとまだまだ改善が必要なのは間違いありません。

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ただ守備面においても、実際のプレーを見ていくと着実に成長の跡が見て取れます。
例えば以下の2点がその要因として挙げられます。

①ステップワークの改善
②「4本指」の握りによる送球の安定

3-1: 守備面の成長①ステップワークの改善

まず①については、今季終盤のプレーを見ると三遊間の打球にもしっかりとステップを刻んでボールに入ることで送球までの動作を簡略化し、見事併殺を取ったシーンが印象的でした。

春先では併殺にできるショートゴロを体勢が悪くなっていないにも関わらず、ステップ幅が大きく歩数を合わせられなかったためか、わざわざジャンピングスローをした結果あわやオールセーフとしてしまうことがありました。

より足を細かく使うことで、ボールへの入り方が格段に良くなったように思います。

3-2: 守備面の成長②「4本指」の握りによる送球の安定

②については、一軍レベルでは緊張からか不安定になってしまいましたが、ボールの握りを小指を除く4本指にしたことで、握り替えの安定性が増し送球の質が良くなったことが挙げられるかと思います。

春先は投手出身の弊害かシュート回転の送球が多く見られていましたが、握りの指を4本にすることで、力の伝わりを均等化しシュート回転を防いでいます。

▼守備面の今後の課題
このように守備の面でも、確実性の向上とまでは至っていませんが、技術的には様々な改善を取り入れて日に日にレベルアップしているように感じました。

ただこちらもまだ改善の余地があるのは間違いなく、例えば捕球からスローイングまでの動きを安定させることや、捕球体勢が悪くても確実にスローイングまでつなげる技術の向上などが来季以降の課題として挙げられます。

この辺は身近にリーグ屈指のショートストップに成長した京田が「生きる教材」として最適だと思いますので、同じポジションのライバルではありますが積極的にその技を盗んでいってほしいと思います。

4. 2020年の展望: 攻守にレベルアップし一軍昇格を「勝ち取る」

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最後に来季の展望について考えていきたいと思います。

今季は108試合444打席とかなりの出場機会を与えられ文字通り「二軍漬け」だった根尾ですが、

「来季も引き続き二軍を主戦場として経験を積むべき」

だと考えます。

その理由はここまで挙げたように攻守に課題が多く、また成績もシーズン終盤に上向いたとは言え一軍出場機会を「勝ち取る」に十分だとは言えないからです。

根尾は確かに12球団を見渡してもトップクラスの才能を持った選手だと思います。ただ競争原理なく出場機会を「与える」ことは、チームの士気にも影響するのではないでしょうか。

学生時代から日本屈指の競争を勝ち抜き春夏連覇チームの主力選手として活躍した根尾だけに、プロでもまずは二軍レベルで結果を出すことで、一軍機会を勝ち取って欲しいと思っています。

4-1: 今後どのポジションで起用・育成するべきか?

さらに考えなければいけないのが、今後どのポジションで根尾を起用・育成していくべきか?ということです。

この件については、Twitterで下記の通りアンケートを取ってみました。結果3,399人の方にご協力頂き、とても興味深いご意見をたくさん頂くことができました。

結果は来季は「ショートで引き続きプレーすべき派」と、「外野で出場機会を増やし大島・平田の後継者を目指すべき派」に大きく分けられました。

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「ショート派」の意見
・来季はまだ高卒2年目なので、じっくり育てるべき
・本人の希望を尊重すべき
・巨人坂本のように守備的なポジションであるショートに打撃力のある選手を置くことで他球団にアドバンテージが取れるから、などなど

「外野派」の意見
・京田の壁は高い、出場機会を得るには外野がいい
・高齢化が進む外野陣では若手が手薄のため
・身体能力の高さは折り紙付きで外野適性あり、将来的には福留孝介になれる、などなど
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その他少数派ですが「セカンドで菊池涼介を目指して欲しい」という意見や、「攻守の高いポテンシャルを活かして複数ポジションを守れるようにして欲しい」といった意見も寄せられました。

どの意見も素晴らしく、どれが正解、不正解などと言うつもりはありませんが、最後に私なりに考えた育成プランを提示してみたいと思います。

4-2: ロバートさんが考える根尾の育成プラン

個人的には根尾は来季、

「ファームでショートを中心に守り攻守にレベルアップを図り、かつセカンドにも挑戦する」

をテーマに取り組んで欲しいと考えています。
理由は以下の3点です。

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①攻守ともに一軍レベルの実力をつける
前述の通り攻守に課題が多く、すぐに一軍で出場機会を与えられるレベルにない。また一軍野手もほとんどのポジションでレギュラーが埋まっているので、「出場機会の創出」を目的に安易にポジションを動かすのは適切でないように思う。二軍で攻守に好成績を残し、かつ二遊間の選手が不振・怪我などで手薄になった場合に初めて一軍昇格を検討すべき。

②セカンド挑戦で守備力の向上を図る
一方で内野守備力を更に向上させるためには、ショートの他にセカンドにも挑戦すべきである。理由は前項で挙げた「捕球からスローイングまでの動きを安定させることや、捕球体勢が悪くても確実にスローイングまでつなげる技術の向上」にはセカンドがうってつけのポジションだからである。

例えばセカンドは打球によってはショートと違って後ろに下がる動きがあるため、かなり高度な打球判断が必要となる。なぜ後ろに下がる動きがあるかと言うと、特に土のグラウンドでは、一二塁間の走者の走った跡が二三塁間よりも多くイレギュラーが発生しやすい。なので敢えて打球を待ったり、後ろに下がると言ったショートには無い打球判断や動き、イレギュラーの多さに対応する「更に細かいステップ」が必要になる。また逆シングルで捕球した際にファーストが見えないため、ショートより「更に正確なスローイング」も必要。

根尾に足りない上記の部分を補うためにも、ショートだけではなく、来季はセカンドでの出場機会も増やすことで更なるレベルアップを図ってもらいたい。

③外野転向の判断を下すにはまだ早い
複数ポジションを習得するにあたり何故外野ではないかと言うと、外野は上記で挙げたような細かいステップやボールの握り替えの速さなどが内野ほど要求されないため、そこのレベルアップがおざなりなってしまう可能性があるから。

かつて森野がサードから外野に転向し、もう一度サードにコンバートされた際に別人のようになってしまったことを考えても、後々ショートとしてのレギュラーを考えるなら安易に外野転向はしたくない。

外野転向を検討すべきタイミングは、「根尾が打撃面で台頭し、かつ二遊間のレギュラーが万全で一軍出場機会を与えるのが難しくなる時期」であり、それは現在の打撃成績を見ても早くとも再来年以降のように思う。
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以上、私が何故来季の育成方針として「ファームでショートを中心に守り攻守にレベルアップを図り、かつセカンドにも挑戦する」ことを提案したいかについて見ていきました。

ポテンシャルは無限大のように見える根尾だけに、ファンとしては1日でも早く彼が一軍でレギュラーとして活躍する姿を見たいのは十分理解できますが、急がば回れの精神でまずは来季も引き続き「土台づくり」が必要のように思いました。

ただフルで「二軍漬け」と言うわけではなく、攻守にレベルアップし二軍での出場は300打席程度に留め、一軍では50打席程度経験して、再来年の飛躍の片鱗を示すシーズンになればいいのかなと想像しています。

今季はTwitter上で1年間 #今日の根尾昂 のタグを使って彼の一挙手一投足に注目してきましたが、来季以降も引き続きその成長から目を離せなさそうです。


以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

技術解説・協力: ワンドリさん

データ参考:
NPB
日刊スポーツ ファーム情報

*2019/10/12 中日新聞プラスへの投稿分を転載


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