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「竜の未来」を任せたい二軍の若手選手〜野手編①

*2019/11/29 中日新聞プラスへの投稿分を転載

皆さん、こんにちは。今回も前回に引き続き

「今季主に二軍でプレーした若手選手」

を紹介したいと思います。

昨日は主に二軍をメインに活躍した若手リリーバーについて見て行きましたが、今日からは若手野手について紹介していきたいと思います。

1. 石橋康太

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プロ1年目、19歳。
高卒ルーキーのキャッチャーながらファーム開幕直後からスタメンマスクの座を与えられるなど、小笠原・前二軍監督から英才教育を施される。
石橋本人もその期待に応え、4月中にも関わらず2本のホームランをレフトスタンドに叩き込むなど、高卒ルーキーとは思えない豪快なバッティングでファンの度肝を抜いた。
同期であるスーパールーキー・根尾が春先は引っ張れない&ゴロばかりで苦しんでいたのと比べると、石橋のプルヒッターぶりはかなり異質に見えた。

その後も二軍で優先起用され続けると、7月頭には高卒捕手としては異例の早さとなる一軍初昇格。
7/9の広島戦ではプロ初のスタメンマスクを勝ち取ると、迎えた第3打席でライト線への2点タイムリースリーベースでプロ初安打&初打点を記録した。
結局プロ1年目の安打はこの一本だけに終わったが、順位争いを続ける後半戦でも一軍帯同を続けるなど、改めて石橋に対する首脳陣の高い期待を感じた。

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後半戦はほとんど一軍帯同を続けた石橋だが、二軍におけるキャッチャーとしての守備イニング273回1/3はチームトップだった。
高卒ルーキーながらスローイング、ブロッキング、フレーミングと言ったキャッチャーの基本技術で大きな破綻がなかったことが、その優先起用を後押ししたと言える。

また打撃面での特徴と言えば、打率こそ2割を切る低打率ながら、フィールドの左方向に2/3以上の打球を飛ばすプルヒッターぶりが印象的。
さらに純粋な長打力を表す指標、ISO (長打率-打率)ではチームトップクラスの.145を記録するなど、キャッチャーとしてだけでなく、将来の主砲としてのポテンシャルもビンビンに感じさせた。

▼来季展望
加藤、木下が台頭した今シーズンだが、来季は石橋やドラ4ルーキー・郡司も含めた正捕手争いがさらに激化すると予想される。
捕手一軍登録3枠は「守備的」な加藤、「総合力」の木下、「経験値」の大野奨太が基本線だと思われるが、石橋や郡司も二軍でのアピール次第では早期の抜擢も十分考えられるだろう。

石橋としては得意の長打力をアピールしていきたいが、課題となるのはアウトコースへの対応になるだろう。
プロ初安打こそアウトコースのボールを上手く流してライト線へ運んだが、2ストライクと追い込まれた後の外角直球をちょこんと合わせたら「運良く」フェアゾーンに飛んだようなもので、その他の打席ではアウトコースへの対応に苦慮しているように見える。
天性のブルヒッターとして内角は苦にしないだけに、ゾーン内における対応力を高めその打力でチャンスを切り開いてほしい。

2. アリエル・マルティネス

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来日2年目、23歳。
昨季は加藤、杉山に次いでチーム3番目に多いスタメンマスクの機会を得ていたが、今季はキャッチャーとしての出場は限定的。
6月以降は主に指名打者やファーストとしての出場が続いた。

打撃に専念できるポジションでの安定したスタメン起用が功を奏したのか、7月以降はクリーンアップを任されるなど「打者・Aマル」として怪我人が多発し野手不足に陥ったチームを支えた。

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今季は指名打者としての出場がメインだったためその打撃成績を紐解いて見ていくと、やはり7月以降は安定して長打力を発揮できていた点は来日2年目の成長を感じさせる。
ホームランこそ2本のみに終わったものの、155打席ながら11本ものツーベースを放ったのは上出来だろう。
7月以降見せた打者としての成長を来季以降、開幕から発揮できれば支配下登録も見えてくるかもしれない。

▼来季展望
来日3年目となる来季はやはり支配下登録の可否が焦点となるが、球団サイドとして考えるべきは「彼をどのポジションで、どの役割で期待すべきか」という点に尽きると思う。
元々は「打てる外国人捕手」として他球団にアドバンテージを取り得る存在として期待されていたように思うが、今季終盤での起用法や近年の石橋、郡司ら打撃型捕手の獲得を見るにその考え方は薄れつつあるのかもしれない。

一方で打者・Aマルとして期待をするなら今季後半戦レベルの活躍でもまだ物足りず、少なくともモヤ、もしくは広島メヒア並の打棒を発揮しない限り支配下登録の可能性は少ないだろう。
さらに一軍のファーストには「チームリーダー・ビシエド」がどっしりと座っているだけに、来季以降は指名打者メインではなく、外野手としての出場も視野に入れるべきなのかもしれない。

3. 石川駿

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プロ5年目、29歳。
春先からファームの中心選手として打線の主軸を担うと、毎試合のように複数安打を飛ばすなど鬼神の如く打ちまくった。
5月に一軍昇格のチャンスを掴み取るも、代打での5打席でノーヒットに終わり二軍落ち。
その後9月最終盤まで一軍からお呼びが掛かることはなかった。

9/25には今季8打席目で待望の初ヒットとなる3点タイムリースリーベースが飛び出すも、出番はそこまで。
昨季まで共に二軍で汗を流した阿部とは対照的な一年となった。

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一軍での結果は残念なものだった石川駿だが、二軍成績はキャリアハイとなる圧倒的な数字を残した。
自身初となるウエスタンリーグ首位打者、最高出塁率のタイトルを獲得すると、さらにシーズン規定打席到達者の中では長打率、OPSもトップに立つ圧巻の成績だった。

守備では主にファースト、サードと内野のコーナーを守り、セカンドでの出場は限定的だった。

▼来季展望
30歳になって迎える2020年シーズンはもはや「期待の若手」と呼ぶのも憚られるが、阿部が今季30歳でレギュラーを獲得しただけに石川駿にも望みがない訳では決してない。
右の代打枠として春季キャンプから存在感を発揮できれば、今季のように長く二軍漬けになることもないだろう。

ただ二軍では圧倒的な成績を残しながらも一軍では結果を残せていないのは、「二軍レベルに最適化した」結果であるとも言えるかもしれない。
実際に二軍戦の映像を見ている限り「前捌きの手打ち」で引っ掛けたような当たりが三遊間を抜けるヒットが何本もあっただけに、個人的には高打率を残していてもイマイチ技術的な裏付けを感じないのが正直なところである。

また石川駿の場合はポジション的にもジレンマを抱えていて、彼が守る内野の両コーナーはビシエド・高橋周平とチームの大黒柱が鎮座している絶望的な状況。
さらに彼らのバックアップとしても同じ右の打撃特化型選手である福田が「上位互換選手」として控えていることも、石川駿にとっては逆風と言える。

よって来季改めて石川駿が一軍での出場機会を確保するには、まず①打撃面でのさらなる成長を見せ、②セカンドやレフトなど「確固たるレギュラー野手」のいないポジションで最低限守れることをアピールする必要があるように思う。

秋季キャンプでは「体幹を意識したバッティング」「守備練習でゴロ処理能力の向上」に取り組んでいるなど方向性は間違っていないように思うので、来季こそはポリバレントプレーヤーとしての台頭を期待したい。

4. 高松渡

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プロ2年目、20歳。
昨季のファーム公式戦出場はわずか3試合、2打席に終わった高松だったが、今季は開幕から代走およびセカンドの守備固めとして出場を続ける。
4月末以降はセカンドのレギュラーとして試合に出続け、スーパールーキー根尾と共にファームの二遊間を形成した。

シーズン最終盤の9月末には自身初の一軍昇格を果たすと、甲子園での阪神戦2試合に代走として出場。
盗塁こそ記録できなかったが、同じくプロ初出場を果たした根尾とともにプロとしての第一歩を踏み出した。

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昨季はほとんど試合に出ることができなかった分、2年目の今季が実質1年目となった高松だが、主に攻撃面で光るものを見せた。
打つ方では打率と出塁率がほぼ同じ、フィールドアウトのうちゴロアウトが70%を超えるなど非力な点は目立ったが、一方でミートセンスは高く、広角に鋭い当たりを飛ばしての打率.278はまずまずと言える。
また彼の走力はやはり抜群で、ボテボテの当たりを内野安打に、また常に先の塁を狙い陥れる快足は「足でメイクマネーできる」選手であることを改めて印象付けた。

一方で課題は、「盗塁成功率が著しく低いこと」と「不安定なセカンド守備」が挙げられるだろうか。
特に盗塁に関して今季の高松は15回盗塁を試みて5回しか成功しておらず、自慢の脚力が全く活かしきれていない。
盗塁の名手・荒木コーチからは「(盗塁のスタートを)切る勇気もないし、切ったとしても一歩目が遅い」「体重が軽く馬力が足りない、力強く踏み込めない」などと分析されており、改善に向けて既に取り組みは始まっているようだ。
またプロで戦える体作りを行うことで、怪我などで離脱が多い点も改善されるはずである。

▼来季展望
内野のレギュラーがほぼ固定、さらに強打のユーティリティ堂上が控える現状では、プロ3年目となる来季も引き続きファームが主戦場となりそうだ。
ただ亀澤の退団により一軍の代走候補が外野手の遠藤しかいない状況を考えると、スピードスター高松にはソフトバンク周東のような切り札的な活躍を期待してしまう。

ただそれには前述の走塁面での課題をクリアする必要があり、また代走専門としてベンチ入りさせるのはベンチ登録枠の関係上あまりに勿体無いので、内外野を任せられる守備力の向上も必要不可欠だ。
フェニックスリーグでは1試合センターとしてのスタメン出場も果たしており、来季はメインポジションであるセカンドの他に外野手としても鍛錬を積み、来るべき一軍昇格に備えてほしい。

5. 溝脇隼人

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プロ7年目、25歳。
春先は昨年に引き続きセカンドのレギュラーとしてスタメンに名を連ねることが多かったが、高松のセカンド起用などに伴いサードでの出場がメインとなっていった。
一時3番を任せられるほど打撃好調が続くと、5月頭には一軍昇格。
5/18には2年ぶりのスタメンとなる「1番セカンド」で出場すると、3安打4出塁の大活躍でセカンドのレギュラー争いに殴り込みをかけた。

ただ猛アピールを見せたのもその試合のみで、5/25には試合中に右手の違和感を訴え、結果「右手有鈎骨骨折」で長期離脱が確定。
元来怪我が多い選手だが、今年も怪我でチャンスを逸してしまった。

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溝脇の二軍成績で注目すべきは、キャッチャーとライト以外の6ポジションを任された「便利屋」起用にあるだろう。
昨季までは阿部が同様の役割をこなしたが、今季は溝脇が内外野を守るユーティリティプレーヤーぶりを引き継いだ。
溝脇自身もこの起用には思うところがあるかもしれないが、同い年の京田が不動のショートストップとして定着し、また根尾・高松ら後輩のプロスペクトに優先的に出場機会を与えなければならない現状ではこの起用も致し方ないように思える。

打撃面では春先はミートセンスの高さを遺憾無く発揮していたものの、シーズンを通してみると飛び抜けた打率は残せていない。
またダウンスイング&走り打ち傾向があるため長打もかなり少なく、今季村上コーチが掲げた「ホームランを狙ってほしい」という方針や、来季からのパウエル・栗原新打撃コーチ採用の流れともフィットしなそうなのは懸念点だ。

▼来季展望
プロ8年目となる来季は本格的に生き残りを懸けたシーズンになるはずだ。
内野のレギュラーがほぼ固定されている現状を考えると、実績のない溝脇はレギュラー獲りというよりは「内外野を守るユーティリティプレーヤー」として今季亀澤が担ったような役割を狙うべきかもしれない。
走力は十分でかつセカンド守備は申し分ないため、外野を含めたその他ポジションでの守備能力を向上させて三ツ俣や高松らとの競争に打ち勝ちたい。


以上、若手野手を中心に5選手を紹介しました。
最終回の明日もさらに若手野手を5選手を紹介したいと思います。

ロバートさんでした。
ありがとうございました!

データ参考:
NPB
nf3 - Baseball Data House -
日刊スポーツ ファーム情報

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