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2019 中日ドラゴンズのドラフト指名を振り返る

皆さん、こんにちは。今回は昨晩行われたドラフト会議における、中日ドラゴンズの指名戦略について振り返ってみたいと思います。ドラフト会議前日に更新したブログでは補強ポイントの確認からステークホルダーの分析まで行い、指名戦略と星稜高・奥川の1位入札を予想していました。

ただ実際には、上記記事の公開から数時間後に東邦高・石川昂の1位指名を明言する形に笑
いきなり出鼻を挫かれる形になりましたが、指名戦略はしれっと下記の通りに書き換えて、無事ドラフト会議当日を迎えることができました。以下では、このドラフト指名戦略予想とチーム編成表をもとに、今回のドラフト会議について振り返ってみたいと思います。

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1. ドラフト1位は明言通り東邦高・石川昂弥を指名。オリックスとソフトバンクとの3球団競合に勝ち無事に獲得!

ドラフト1位では前日の明言通り、東邦高・石川昂弥を指名。オリックスとソフトバンクも手を挙げましたが、抽選の末与田監督が見事当たりくじを引き当て、石川の交渉権獲得に成功しました。

東邦高・石川昂弥は今年の高校生ナンバーワン野手。高校通算55HRを誇るスラッガータイプのサードで、今年の春のセンバツ甲子園ではピッチャーとしてチームを優勝に導いています。春夏連覇が懸かる夏は愛知県大会2回戦で敗退してしまったことで注目度が下がってしまった感がありましたが、その後U18日本代表に選出されるとチームの主力打者として猛打を振るい、改めて世代ナンバーワン打者としての実力をアピールしていました。

高卒野手ながら木製バットの扱いにも問題なく、また内角も苦にしないことからプロでも頭角を現すのにそう時間は掛からないかもしれません。

▼2020 ドラゴンズでの展望: ファームの4番サードで「土台づくり」
ドラゴンズのファームでは今季終盤に一軍帯同を続けた石垣が主にサードを守っていましたが、石垣も来季はプロ4年目で本格的に一軍定着を狙う年。本職のサードのみならず外野両翼にも積極的にチャレンジしていくとみられるため、空いたサードの育成機会は今季の根尾のように石川昂に全振りしてくるのではと予想します。一軍ではまだ若い高橋周平がバリバリのレギュラーとして活躍しているので、石川昂を育成する時間は十分あるはず。来季は二軍で100試合、400打席程度を与えて「土台づくり」の1年としてほしいと思います。

2. ドラフト2-3位は「Aシナリオ」通り左右の即戦力投手の獲得に成功

石川昂の獲得に成功した後の2位指名では、大阪商業大・橋本侑樹を指名しました。中日の指名順まで今年の目玉の一つだった大卒捕手3人 (海野、佐藤都、郡司)が一人も指名されていなかったため、個人的にはもっとも即戦力性の高かった海野に突っ込むのでは・・と思ってましたが、結果としては層の薄かった投手陣をカバーする即戦力投手の獲得に踏み切りました。

橋本の2位指名に対し「早すぎるのでは?」という声も上がっていたかと思います。これは恐らく2位以上の指名でないと社会人に進む所謂「順位縛り」をしていたと考えられること以上に、左の即戦力投手の候補がかなり限られていたことが大きいと考えられます。今年の候補ではJFE西日本・河野竜生、立命館大・坂本裕哉、三菱日立PS・浜屋将太に加えて橋本の名前が上位〜中位候補としてよく挙がっていましたが、実際のドラフトではいずれも2位までに指名されました。

ドラフトでは選手の絶対的な能力・評価により指名順位が予想されることが多くありますが、「他球団の動向」「市場の供給」により相対的に指名順位が繰り上がることを実感する指名だったように思います。そういう意味では外れ1位で楽天に指名された大阪ガス・小深田大翔の指名も、即戦力内野手の候補がほとんど市場にいなかった事情を反映していると思います。

ただ当然ですが、橋本が今年の2位指名に相応しい好投手であることは間違いありません。橋本は関西六大学野球を代表する投手で、9/15には京都産業大相手にノーヒットノーランを達成する(大野雄大のノーヒットノーランの翌日)など実践派の投手として高い評価を得ていました。キレ味抜群のスライダーと、対右打者相手には外へのフォークで三振を量産できるタイプのように思います。

▼2020 ドラゴンズでの展望: 先発か中継ぎか、適性を見て即戦力として起用を
事前の予想記事にも書いた通り、ドラゴンズは今季有望な若手投手が揃って結果を出していながらも、怪我などもあり層の薄さからシーズン終盤までベテラン山井に頼らざるを得ない苦しい状態が続きました。

橋本は大学時代と同様にまずは先発起用が濃厚かと思いますが、左のリリーフが岡田・福・ロドリゲスの3人しかいない分、他の先輩左先発投手らと共に適性を見極めた上で、リリーフ起用される可能性もあるのではないかと思います。高校時代は岐阜・大垣日大高校に通い、毎日のようにテレビで観る岩瀬の熱投とそのスライダーのキレに心打たれたとコメントしていることからも、近い将来「死神」の系譜を受け継いでいるかもしれません。

引用: “ノーヒッターの系譜“ 中日2位橋本は大野雄 達成翌日に関西六大学Lで達成「ニュース見てやるぞと」

3位では今年の上位〜中位指名候補の投手でもっとも即戦力性が高い投手の一人としてよく名前が挙がっていた東芝・岡野祐一郎を指名しました。この指名順では先ほど挙げた大卒捕手のうち東洋大・佐藤都志也 (ロッテ2位)、東海大・海野隆司 (ソフトバンク2位)が既に指名されていましたが、慶応大・郡司は残っていたためこの順位で指名してくるか・・?とも思いましたが、即戦力投手岡野を指名する形になりました。

これで当初想定していた「Aシナリオ」に沿った形で、まず左右の即戦力投手を確実に確保しに行った形となりました。

▼2020 ドラゴンズでの展望: 開幕から先発として期待、目指すはDeNA大貫の66イニング程度か
岡野は柳と同じ来年26歳となる世代のため、順調なら開幕からバリバリ先発候補として一軍で活躍してもらいたい投手です。安定感ある投球が持ち味のようなので、今年やや投げ過ぎの感のある山本拓実や怪我がちの清水、勝野ら若手右投手に過度な負担(性急な先発調整)を掛けないように、春先からのローテ入りを期待しています。

3. 4位はまさかの即戦力捕手・郡司。これで中位までに即戦力バッテリーの獲得に成功する理想的な展開

Aシナリオ通りなら4位は外野手の指名が考えられましたが、指名したのは慶応大・郡司裕也。個人的に上位でないと獲得できない選手だと想定していただけに、ここまで指名順が落ちたのはサプライズでした。中日の補強ポイントとしては、上位3枠でコア候補野手=石川、即戦力投手=橋本&岡野を選択したため即戦力捕手の獲得は断念、下位で高卒捕手を獲得し石橋と競争させる形かと想定していましたが、結果として全体的に大卒捕手3人の指名順が想定より低かったことで中日までチャンスが巡ってきました。

彼がどんな選手か?については、しゅーたさんの下記noteにかなり詳細に記述されているので是非そちらをご覧ください。

▼2020 ドラゴンズでの展望: 木下加藤の正捕手争いに殴り込み
中日は今季終盤に一軍帯同し続けたトップ・プロスペクト石橋が控えていますが、来季からいきなり木下加藤とバチバチに競争する形は想定していなさそう。リーグ内で相対的に弱点とされるポジションだけに、郡司には正捕手争いを活性化される起爆剤として、早期での一軍での活躍を期待したい。

4. 5-6位では高校生投手の獲得でフィニッシュ。岡林は外野手との両睨みか?

下位指名となった5位では、まず菰野高・岡林勇希を指名しました。中日のドラフト5位指名は例年「地元枠」と呼ばれ東海圏の選手が指名されますが、今年もその例に漏れず三重出身の岡林を獲得しました。岡林は最速153キロのストレートを武器にする速球派右腕でありますが、一方で打撃センス&身体能力も抜群で、一部では野手としての将来も嘱望される才能溢れた選手です。

事前に考えていたAシナリオでは4位外野手、5位捕手想定だったので、4位で郡司を指名した後の5位は東海圏出身の外野手を指名するはずだと考えていました。ただ蓋を開けてみれば投手・岡林だったので、やや想定が外れた感じです。

▼2020 ドラゴンズでの展望: ファームでじっくり「土台づくり」
岡林には来季まず投手としてファームで土台づくりの一年を過ごして欲しいと思います。今季ルーキー垣越が慎重に調整を続け実戦登板が4月末だったことを考えると、岡林もそれくらいのペースで良いのではと思います。打撃でも注目されるセンス抜群の投手・・というとどうしても藤嶋を思い浮かべてしまいますが、藤嶋のように早くから一軍起用される「飛び級」を目指す必要は全然ないので、まずは焦らず投手としてのレベルアップに努めて欲しいと思います。

支配下でのラスト指名となった6位では、札幌創成高・竹内龍臣を指名しました。こちらは事前情報では「届いた調査書が1通のみの北海道の投手」と聞いており「日ハムの下位指名かな・・」と思っていましたが、まさか中日とは思わず驚きました。

ただ色々と調べてみるとガチガチの中日ファンであったり、八木スカウトが肝いりで足繁く北海道に通っていたというエピソードがあることがわかり、中日ファン的には今回の指名選手の中でもなかなか気になる存在だと思います。

▼2020 ドラゴンズでの展望: 岡林とともに「土台づくり」
竹内も岡林同様に、来季は土台づくりの一年となりそうです。岡林とは同じ高卒ルーキーでかつ背格好も似通っているので、お互いに刺激を与え合いながら成長できそうなのが良く考えられている指名だと思いました。これは2017年に石川翔、清水、山本拓実の高卒右腕3人を指名し、お互いがバチバチに意識しあいながら切磋琢磨しているのを思い出させます。

5. 久しぶりの育成指名は地元の期待枠・名大松田を指名

最後に、育成ドラフトでは地元の名古屋大・松田亘哲を指名しました。彼は高校時代バレー部に所属していたなど異色の経歴の持ち主ですが、頭脳明晰で向上心が強く、国立大出身でも「指名漏れなら独立リーグで野球を続ける」と宣言するほどプロ入りへの熱意が高い選手です。今年の8月に行われた仮想ドラフト「サマドラ2019」でも指名させて頂いた選手です。事前に聞いていた情報だと西武がかなり熱心にマークしているとのことでしたが、将来性&話題性十分な地元の逸材をしっかり確保できたのは、大きな指名だったと思います。

▼2020 ドラゴンズでの展望: まずはファームで結果を残すこと
松田の来季の目標としては、ファームの主戦リリーバーとして頭角を現すことでしょうか。育成選手だとなかなか先発機会が与えられるのも難しいので、左のリリーフとして同じ育成選手であるW浜田と競争し、結果を残せるかが早期の支配下登録のカギになりそうです。

6. 編成表のアップデート: 外野手はFA、トレード、外国人補強などで埋め合わせか

以上、今年の全指名について見ていきました。改めて一覧にすると下記の通りとなります。

▽2019年 中日ドラゴンズ指名選手
1位: 石川昂弥 内野手 東邦高校
2位: 橋本侑樹 投手 大阪商業大学
3位: 岡野祐一郎 投手 東芝
4位: 郡司裕也 捕手 慶應義塾大学
5位: 岡林勇希 投手 菰野高校
6位: 竹内龍臣 投手 札幌創成高校
育1位: 松田亘哲 投手 名古屋大学

高校生3人、大社3人(+大卒育成投手1)とバランスの取れた指名ですね。今回の指名を反映させた編成表は下記の通りとなりますが、ある程度的確に補強ポイントを埋める指名となったように思います。

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▽補強ポイント
先発:期待の若手は多いものの計算できるまでには至らない、即戦力欲しい

→◎橋本、岡野で左右の即戦力先発候補ゲット

中継ぎ: 福・三ツ間ら新戦力の登板過多が不安、即戦力欲しい
→○橋本はリリーフの即戦力としても期待できる

捕手: 高卒を育てるか、即戦力を補強するかいずれか
→◎郡司の獲得で加藤ー石橋間の年代間ギャップも埋めた

内野: ファースト/サードのコア候補素材型
→☆世代ナンバーワンスラッガー石川の獲得

外野: 両翼の素材型 and/or 即戦力
→×岡林の野手転向の可能性はあるがまずは投手でいきそう、そう考えると今回のドラフトでは獲得なし

今回補強できなかった外野手については、今後FA、トレード、外国人補強などでの埋め合わせが予想されます。また来季2020年オフのドラフト候補は野手の逸材も多く揃っていると評判のため、そこまで待つ可能性もなくはありません。ただ現時点での外野手登録は10人のみのため、石垣、福田が外野メインでの出場となったとしてもやや手薄感は否めません。第一次戦力外のなかった投手陣がややダブついていることからも、何かしらの補強策を仕掛けてくる可能性は高いのではと考えています。

7. 最後に:

以上、今回のドラフト会議について見ていきました。今年はトップ・プロスペクト石川の獲得に成功したことから始まり、来季の上位争いに必要不可欠と言える即戦力バッテリーの獲得にも成功。さらに下位で今年のトレンドでもある将来性豊かな高卒投手コンビも指名できるなど、個人的には100点と言っていいレベルの会心のドラフト指名だったように思います。

将来性と即戦力性のバランスをうまく取っており、来季にもまたその先の未来にも期待が持てるような指名だったのではないでしょうか。さらに地元名古屋のドラゴンズファンにとっては、地元に所縁のある選手を多く指名できたのもポイントが高いように思います。今年指名した選手の中から一人でも多く、竜の未来を担い大成する選手が出てきてほしいと心から願います。

最後に、今年の全指名選手を一覧表にしましたので、ご参考まで。

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以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

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