立ち尽くす彼女へ

小学生の夏、
原爆資料館にて


むごたらしい資料たち、
仄暗いあの空間で、
高校生だろうか、
一人の女の子が涙を流して、
肩を震わせ 背中を丸めて 涙をぼろぼろと流していた

資料を見て、恐怖のあまり、
それでも出る術が分からない混乱状態にあったのか


彼女の手をとり
出口まで向かえばよかった


あの事実たちを
目の前にする
私たちの生きていない日
の、遠くなるような日々が
名前も知らないおびただしい家族たちが
生きた日の事実たち。
目に、鼻に、耳に、頭に一気に流れ込んでくる。






助けてください



もう助からない




これが人間です




重さと温度を持った事実を前に立ち尽くす。





そこから、どう進めばいいのか、
迷い、間違い、それでも、立っている、生きている。
あの日の延長にある私の今日。




あの時、手をとって、
いっしょにいきましょうか
と、言えばよかった。





事実に直面し、
大きな衝撃を受けた、心を
今、広島を受け継ぐ人々が言う
思いやり 友愛を
手を取り合うことを
あの日を知る人たちにあの日を継いだ人たちに心の底から求められているのに。




彼女は、あのあと、
足を踏み出せられただろうか。



事実を受け止め、
新たな時代を作るために歩む仲間がいてくれるといい。



手を取ってくれる人がいてくれるといい。

迷わず、手を差し伸べられる私でいたい。


誰だって、彼女になる日があるのだから。

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