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「承認」が年上部下のモチベーションを向上させる3つの理由

1.はじめに:増加する年上の部下・年下の上司

 現代社会では、労働人口の高齢化が進み、年上の部下を持つ上司は珍しくありません。しかし、経験豊富な年上の部下をどのように動かし、組織に貢献してもらうかという課題は、多くの上司が抱える悩みのひとつです。

 この課題の解決策として部下の行動や成果を認める「承認」が挙げられます。年上の部下も他人から認められたいという欲求を持っていますので、承認によって、彼らのモチベーションを高め、組織への貢献度合いを向上させることが可能になります。

 この記事では、承認が年上部下のモチベーションを向上させる理由として、マズローの欲求段階説とハーズバーグの動機づけ=衛生理論を分かりやすく解説するとともに、承認によってモチベーションを高めた事例をご紹介します。

2.私が、承認が年上部下のモチベーションを向上させる理由を述べる理由

 私は、21年間ガソリンスタンドを運営する会社に勤務し、13年間は店長として働いてきました。その間、年上の部下を持ったことも数多くあります。

「ガソリンスタンドで多くの部下と接していた」

 彼らに「承認」を意識して接することで、モチベーションが向上し、私との関係性も改善されました。この背景には、店長を担いながら、中小企業診断士の資格を取得するための勉強を通じて知ったモチベーション理論やコーチングがあります。

 現在は、中小企業診断士として、多くの経営者やリーダーの方々と接していますが、年上の部下との関係性に悩む方が多いことに気づきました。そこで、私の経験を活かし、年上の部下を動かすための具体的な方法をご紹介することとしました。

3.承認が年上部下のモチベーションを向上させる3つの理由

理由その1:マズローの欲求段階説

 マズローの欲求段階説は、人間のモチベーションの源泉となる欲求が、段階的に満たされていくという考え方です。基本的な生理的欲求、安全欲求、社会的欲求が満たされた後に、承認欲求が強く意識されるようになるとしています。承認欲求は、他者から認められたい、評価されたいという欲求です。

「人は階段を登るように、段階的に高次の欲求を満たそうというモチベーションが働く」

 例えば、まず食事や休憩など生理的欲求が満たされ、次に安全欲求である危険性の少ない作業や心理的安全性が確保され、社会的欲求である組織の一員であるという自覚を持った上で、周囲の人から認められたいという承認欲求が強く意識されるようになります。

 現代では多くの場合、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求は満たされているものですから、承認欲求を満たすことは、年上の部下を含め、人材のモチベーションを高めるポイントと言えるでしょう。

 次に、承認が年上部下のモチベーションを向上させる2つめの理由
を述べていきます。

理由その2:ハーズバーグの動機づけ=衛生理論

 アメリカの臨床心理学者ハーズバーグ氏が提唱した「動機づけ=衛生理論」は、人間のモチベーションを左右する要因を2つに分類した理論です。ハーズバーグ氏によると、従業員が仕事に満足し、高いモチベーションを維持するためには、「動機づけ要因」と呼ばれる要素が重要であることが分かっています。

 動機づけ要因とは、仕事そのものへの満足感や達成感、成長の機会など、仕事内容に直接関わる要素です。そして、承認もこの動機づけ要因のひとつに挙げられています。

「他者から認められるとモチベーションは上がるもの」

 つまり、上司や同僚から仕事が認められ、評価される経験は、従業員のモチベーションを大きく向上させるということです。承認されることで、従業員は自分が組織に貢献していると感じ、自信や達成感を味わうことができます。これにより、さらに高い目標に向かって進んでいこうとする意欲が生まれると言えます。

 次に、承認が年上部下のモチベーションを向上させた事例をご紹介します。

理由その3:ガソリンスタンドの事例

 私が当時店長として勤務していた会社は複数のガソリンスタンドを展開していましたが、降格人事を受けた他店の店長が私の部下として赴任してきたことがあります。この方は私よりも年上でしたが、モチベーションは明らかに低い状態でした。

 当店はセルフサービスのガソリンスタンドであり、給油中にタイヤの空気圧点検をして、すり減ったタイヤを見つけて交換をお勧めしており、相応の業績を出していました。そこで、降格して赴任してきた元店長も低いモチベーションの中で、空気圧点検に取組んでいただきました。

「給油中の無料空気圧点検は好評だった」

 私は、元店長が昼休憩に入る前に、「今日の午前中だけで、32台のお客様に空気圧点検の声掛けをしましたね」と、彼の具体的な成果を認めるようにしました。

 ここで、もし「頑張っていますね」といった曖昧な評価をしてしまうと、本人に頑張ったという感触がない場合、逆に不信感を抱かれ、モチベーションの低下を招くリスクがあります。

 そのため、具体的な数字を交えた事実に基づき、解釈の余地がないように伝えたことがポイントです。この結果、元店長のモチベーションが向上し、空気圧点検の件数が増加しました。その結果、タイヤ販売の実績も向上し、彼は再び店長に昇進することができました。

4.「承認」が年上部下のモチベーションを向上させる3つの理由のまとめ

 承認は、年上の部下を持つ上司として、価値の高い接し方です。マズローの欲求段階説によれば、承認欲求は基本的な欲求が満たされた後に強く意識されるものであり、現代の多くの職場ではこの承認欲求が満たされることで、年上の部下を含む全ての人材のモチベーションを高めることが可能です。

 また、ハーズバーグの動機づけ=衛生理論では、承認が「動機づけ要因」として、モチベーションを高める要素であるとされています。承認を通じて、部下が自分の貢献を実感し、自信を持つことが、より高い目標達成への意欲を引き出します。

 実際に、私が経験したケースでは、年上の部下である元店長が低いモチベーションからスタートしながらも、具体的な成果を承認することで、積極的な態度に変わり、業績の向上に繋がりました。

 年上の部下との関係に悩む上司の方々は、承認を通じて部下の成果を具体的に認めることから始めてみてください。承認が持つ力を活かすことで、組織全体の士気を高め、より良い成果を引き出すことができるでしょう。

 なお、人材のモチベーションの高め方について、ご相談も受け付けています。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

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