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【ガソリンスタンドの生き残り策】ハーズバーグの動機づけ=衛生理論で人材のモチベーションを上げる方法

1.ガソリンスタンドの油外商品販売


 ガソリンスタンドにとって、厳しい経営環境が続いています。電気自動車やハイブリッド車の普及、原油価格高騰によるガソリン需要の低下、消防法改正による地下タンクの補修費用負担増など、様々な要因が収益を圧迫しています。

 このような状況下で、多くのガソリンスタンドは、洗車やタイヤなどの油外商品の販売に注力し、さらにはカフェやコンビニなどの異業種との複合化を進めています。しかし、大規模な投資が難しい中小規模のガソリンスタンドにとっては、既存の油外商品販売を強化することが、当面の課題と言えるでしょう。

 油外商品は多くの場合、他店との差別化が難しい商品です。そのため、これらの商品を販売する従業員の差別化が、売上に大きく影響します。つまり、人材こそがガソリンスタンドの競争力と言えます。

 本記事では、報酬に頼らない従業員のモチベーション向上に繋がるモチベーション理論を解説します。これにより、ガソリンスタンドの従業員が自発的に行動し、顧客満足度向上に貢献できるような環境づくりを支援します。

2.私がモチベーション理論を解説する理由

 私は21年間、ガソリンスタンドの運営会社に勤務し、その中で13年間は店長として現場を指揮してきました。店長としてキャリアの浅かった頃は、部下のモチベーションの高め方が分からず、感情に任せて叱責することを繰り返していました。

 そんな時期に、私は中小企業診断士の資格取得を目指して勉強を始め、そこで「モチベーション理論」に出会いました。この理論を実際の現場で活用するようになってから、部下のやる気が飛躍的に向上し、結果として売上や業績にもポジティブな影響が現れました。

 現在では、中小企業診断士としての立場から、多くの企業や経営者に対してモチベーションを高める方法をお伝えする機会が増えています。

 私がこの記事を書く理由は、過去の失敗と成功から得た学びを通じて、現場で使える具体的なモチベーション向上の仕組みを多くの方にお伝えしたいからです。以下では、私が現場で活用したモチベーション理論のひとつ、ハーズバーグの動機づけ=衛生理論をご紹介していきます。

3.ハーズバーグの動機づけ=衛生理論

(1)動機づけ要因と衛生要因

 アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏は、実証研究に基づき、人間のモチベーションの仕組みを「動機づけ=衛生理論」で説明しました。これによると、従業員の満足度と不満足度は、それぞれ異なる要因によって左右されると考えられています。

 動機づけ要因を充足させると、仕事に対する満足感が大きくなり、モチベーションが上昇します。半面、この要因が充足されないと、満足感が小さくなり、モチベーションが低下するものの、その低下幅は一定範囲で留まるとされます。

 これに対し、衛生要因を充足させると、仕事に対する不満足感が小さくなり、モチベーションが上昇するものの、その上昇幅は一定範囲で留まるとされています。そして、この要因が充足されないと、不満続感が大きくなり、最終的には退職してしまいます。

 以下では、これら要因の具体例を見ていきます。

(2)動機づけ要因と衛生要因の具体例

 動機づけ要因の具体例としては、以下が挙げられます。

  • 承認:上司や同僚から認められること

  • 責任:重要な仕事やプロジェクトを任されること

  • 達成感:目標を達成したり、困難な課題を克服したりすること

  • 仕事そのもの:興味・関心のある仕事や、専門性を活かせる仕事に取組むこと

  • 昇進:キャリアアップや自身の成長を実感すること

 これらの要因が充足されると、従業員は仕事にやりがいを感じ、高いモチベーションで業務に取り組むことができます。

 一方、衛生要因の具体例としては、以下が挙げられます。

  • 会社の方針:明確な方向性が示されること

  • 上司の監督:明確な指示やサポートを受けること

  • 給与:労働に見合った対価を得ること

  • 人間関係:メンバーとの良好な関係を築くこと

  • 労働条件:安全な職場環境で働くこと

 なお、これら衛生要因を改善しても、従業員のモチベーションを大幅に上げることは難しいとされています。

 例えば、従業員は高い給与を期待しますが、大幅な昇給が必ずしもモチベーション向上に繋がるとは限りません。これは、従業員が自身の貢献度に対して、ある程度の「相場」を意識しているためです。

 同様に、人間関係を良くしたとしても、一時的なモチベーション向上には繋がるものの、長期的かつ大きなモチベーションには繫がりにくいと言えます。これは、良くなった人間関係に一定の満足度を感じており、これ以上良くなることを期待しないという「天井感」が働くためです。

 そこで、この「天井感」のない動機づけ要因を充足させることが、大きなモチベーションを生むと言えます。

4.ハーズバーグの動機づけ=衛生理論で人材のモチベーションを上げる方法のまとめ

 ガソリンスタンド業界の厳しい競争環境の中で、生き残りを図るには、従業員のモチベーションを高めることが重要な鍵となります。ハーズバーグの動機づけ=衛生理論は、衛生要因を改善しても、それだけでは持続的なモチベーションの向上は難しく、むしろ動機づけ要因を充実させることで、従業員がやる気を持って取り組む有効性を示しています。

 私自身も、ガソリンスタンドの現場でこの理論を実践し、効果を実感しました。具体的な取組内容は以下のリンクをご参照ください。

 モチベーションを向上させるためには、給与や環境の改善に加えて、従業員が仕事にやりがいを感じられるような機会を提供することが不可欠です。今回ご紹介した動機づけ=衛生理論を活用し、現場のモチベーション向上に役立ててください。

 なお、部下のモチベーション向上に課題を感じているリーダーからのご相談も受け付けております。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。


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