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「メタニュース」がもたらすメディアと学習の融合

インターネット常時接続がPCでもモバイルでも当たり前となった時代、我々は一瞬一瞬、無数の「ニュース」を受け取る。数が多すぎて、せいぜいちょっと目に止まったニュースをSNSでシェアしたり、一言コメントをつけたりする程度になりがちである。そこに何の学びも成長もない。


ニュースが、無数の砂粒のように、互いにバラバラのまま天から降ってきている。この「無数の砂粒状態」を何とかできないだろうか、という問題意識は以前から存在して、例えば「キュレーション」の役割などにスポットライトが当たったこともある。しかしそれは、現実にはせいぜいニュースのフィルタリング、カテゴリ分け程度であった。そしてそもそも、そのキュレーションを行っているサイト、プラットフォーム自体が全く信用できないことを示す出来事が発生し、いつしかこの言葉は使われなくなった。


私が個人的に欲しいな、と思うのは、特定のイシューを決めて、個々の(砂粒のような)ニュースを関連付け、それらの奥に潜む構造やダイナミクスを浮き彫りにしてくれるメディアである。たとえば、ニュースAとニュースBの間にある因果関係を明らかにしたり、AとBの相乗効果、逆にAとBの両立不可能性を立証したり、あるいは、A、B・・・の裏側にある共通する政治思想や経済的要因、時代の不可逆的変化を描き出したり、といった役割を果たすメディアである。


購読者(視聴者)はメディアをサブスクライブする時に特定のイシュー(例えば「未就学児の育児」「社会保障の今後の見通し」などといったもの)を選び、メディアはそのイシューに沿って、上記のような切り口で個々のニュースを相互に関連付けて購読者(視聴者)に届ける。


そうすることによって購読者(視聴者)は、単に個々のニュースの事実情報を獲得するだけではなく、特定のイシューの理解や問題解決に資する複数のニュースの間の関連性、それらを包含する構造やダイナミクス、それらの文脈、時間変化などを理解することができる。


これを仮に「メタニュース」と名付ける。この「メタニュース」は、単なる情報ではない。特定のイシューの「メタニュース」を体験することで、他のイシューにも転用可能な、汎用的な「メタニュース」視点を獲得できるのである。つまりここに、「学習」が生じる。もはや個々のニュースは砂粒ではない。相互に関係し、意味を持った総体の一部として認識される。


そうなったとき、購読者(視聴者)がたとえ一つのストレートニュースに接したとしても、そのメタニュース視点を働かせうるであろう。つまりやがては、「メタニュース」を必要としなくなるかもしれない。それはそれでいい。ただし実際には、社会の変化は激しいので、常に新しいメタニュース視点に更新していく必要はあると思う。そしてそれを支援するのも、メタニュースメディアの役割であろう。


私は、デジタルメディアとe-learningがやがて融合する(すべき)と思っているのだが、それは上記のような理由からである。


現在のところそういったメタニュースメディアが存在するかと言うと、例えば田中宇さんが長い間発行し続けている「田中宇の国際ニュース解説」( http://tanakanews.com/ )はそれに近いかもしれないが、イシューが限られており、また購読者の「学習」という視点が考慮されているようには感じられない。


また、「The Information」( https://www.theinformation.com/ )というメディアも面白くて、サブスクライブすると特定のトピックについて毎日メールが届き、幾つかの記事を関連付けるような解説を読むことができる。しかしこれはテクノロジー産業に特化した媒体であり、かつ、やはり購読者の学習という視点はなさそうである。


前述したような、様々なイシューに沿ったメタニュースとそれによる学習機会の提供をコンセプトとするメディアがぜひほしい。そういったメディアであれば、かなりの購読料を払ってもよいと思う。


もちろん、実際に実現しようとすると、そのような役割を果たすことができる専門人材がどれだけいるのか、「メタニュース」自体の正当性をどうやって担保するのか(わりと憶測のみに基づいた陰謀論メディアが跋扈しそうな気もする)、そもそもビジネスとして成立するのか、等々、様々な問題があるであろうが、全く不可能かと言うとそうでもないような気がする。


自分でできる範囲で、自分でプロトタイプを作ってみるのもいいかもしれない。

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