実際の状況が変わるわけではないので、相談する意味がない、は本当か?

よく、悩んでいるのに、精神科医や心理士に相談したりしても意味がない、と仰られることがあります。
ですが、実際には、皆さんの想像以上に意味があるものだと、自信をもってお答えしたいです。

1. 視野・視点を広げる。


まず、人は自分で思うほど、自分のことも、周囲の事もわかっていないことが多いです。
みなさんは、DCSモデルに基づいて、今の自分自身の理解ができているでしょうか?
カウンセラーとの対話で、DCSモデルに基づく理解を深めることで、実はどうしようもないと思っていた状況にも、やりようがあることが見いだせるでしょう。

負担を減らす方法がないのか、コントロールを上げる方法がないのか、サポートを頼めないのか、と、広く模索することが大切です。ただし、余裕がなくなると、視野が狭くなり、中長期的に物事がみられなくなります。是非とも、信頼できるカウンセラーの力をかりてみてください。

例えば、子育てをどうしても自力でやらないといけないという思いに駆られ、疲弊している方々が依然として多いのですが、実は中高年の育児経験者を主とした、育児ヘルパー・サービスへの補助制度を設けている自治体が増えています。1時間数百円で家事代行や見守りなどを頼めるケースがたくさんあります。
わたしたちは、社会や各個人における既成概念によって、無意識のうちに選択肢から外してしまっている有効な方法があったりもします。そのような選択肢をカウンセラーが提示することで、現実の状況を変えることも実際に多いです。

各種介護サービスも同様ですよね。自分の両親の面倒をみないといけない、というある種の「とらわれ」から、仕事や家庭とのバランスを崩している方には、私も多くお会いしてきました。

医療機関で定義する心理職(臨床心理士ないし公認心理師)は、様々な法制や制度についても、カリキュラムに組み込まれており、実は現実的かつ有用な選択肢について、提示できることは大いにあると思います。

以上、カウンセリングや相談を通じて、他者から新たな視点やアプローチを提供され、自分が抱えていた問題に対処する方法を見つけられることは、大いにあるのです。

2.悩みを緩和するアプローチ


また、そもそも、悩みを大きくする心理的なメカニズムがあります。
同じ状況にあっても、ストレスの受け方には、ばらつきがあります。
したがって、どのように対処すれば、ストレス・マネジメントができるのか、ということを、専門家のアドバイスを受けながら、スキルアップしていくアプローチは大変有効です。認知行動療法と総称される様々なアプローチをカウンセラーとともに、取り組むことで、悩みや苦痛は緩和されます。
例えば、薬が効きにくい慢性的な痛み(慢性疼痛)やガンによる痛み(癌性疼痛)に対しても、認知行動療法の有効性が報告されています。

3.シェアすることで和らぐ。

次に、本当に、現実状況を何も変えようがないとしても、その悩みや問題を共有することで、孤独感やストレスは緩和されることは、これまでも多くの研究で実証されてきました。
 学問的な知見を持ち出すまでもなく、皆さんも、悩んでいたことを話して、理解してもらったり受け入れてもらえただけで、気持ちが落ち着いたり、やわらいだ経験は必ずお持ちのはずです。一方で、相談相手を間違えると、聞いてもらえない、相手にしてもらえない、相手の持論を押し付けられる、などで、かえって傷ついたこともあるはずです。
 また、相談を受けた側も自分の中に留めることができずに周囲に話をしてしまい、結果として知られたくない人に広がってしまうことがあります。
 したがって、誰に相談するか、ということが大切です。

いずれにせよ、現実的に問題が解決しなくても、悩みは緩和されることを、改めて知っておいてほしいです。
 なお、うつ症状が強いほど、相談しない/相談できなくなる、という研究報告が多数なされています。否定的な認知(受け止め方・とらえ方)によって、「自分の状態や状況について、誰に相談しても意味がない」という発想に陥りがちで、それが相談することへの消極さや抵抗感につながっていると考えられています。
したがって、うつ症状が強くて、「実際の状況が変わるわけではないので、相談してみ意味がない」と考えてしまっている可能性も考慮すべきです。

4.相談したことのメリットを感じられたら

カウンセリングを通じて、自分自身が、どうしようもないと思っていた問題や悩みを解決したり緩和できれば、それは自信や自己肯定感にもつながります。どうすれば対処できるかという目途があれば、人は途方に暮れることがなくなります。心理学的用語でいえば、自己効力感を上げることができます。

その結果として、次に困難に出会ったとしても、周囲の力を借りながら、乗り越えていける、たとえ乗り越えられなくてもやりようはいくらでもある、というような心もち(姿勢)ができてきます。
いきていけば、山あり谷ありで、苦しいことも度々あります。
そのなかで、なんとかやれる、という感覚をもっておくことは、大切だと思います。

5.まとめ

カウンセリングや相談によって、実際の状況が変えられる可能性がある。
もし、変えられなくても、その悩みの度合いを軽くすることができることは証明されている。
ぜひとも、1人で抱え込まない、こと。
相談することも大切なスキルです。


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