見出し画像

精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の診断はどのように行われているのか ①

精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の診断はどのように行われているのでしょうか。

メンタルヘルス不調・疾患名の分かりにくさ、について① で解説したように、メンタルヘルス不調・疾患はまず重複が多いこと、状態名にフォーカスをして、状態名で説明している事が、分かりにくさを助長している事について解説しています。また、追加記事は出していこうと思っていますが、本日は、専門医による診断プロセスについて、解説したいと思います。

主なポイントは2つです。

① 症状の有無

② 経過(いつから、どれぐらい続いてきているetc)

①と②について情報収集を診察および診察外で得て、それらを瞬時に組み合わせて、どの診断カテゴリーに入るかを、専門医は判断しています。

個別に解説していきます。

①症状の有無

ここで、精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の分かりにくさにもつながるのですが、前回の記事で記載したとおり、この症状があるからこの診断、というように単純に診断はつけられません。疾患特異的(症状と診断が1対1対応)な症状が少ないが挙げられます。うつについての解説記事も読んでもらえるとお分かりいただけるかと思います。

ですが、Aという症状とBという症状が重なっていると、Cという診断の可能性が高い、というデータは医学的に蓄積されています。したがって、その場合は、Cの診断基準を満たす、その他の症状の有無を聞いていく事になります。また、精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調には重複が多いのですが、それも、どのタイプとどのタイプの重複が多いというのは、概ねデータが出そろっていますので、それらを念頭に、確率の高いところから、お聞きしていく事になります。

また、精神症状は、主観的(自分が感じる)症状と、客観的(周囲から把握できる)症状とに分けられます。これが一致する場合もあるし、一致しない場合もあります。死にたい(希死念慮)と思っていても(=主観的症状)、取り繕って周囲に話さなければ、周囲は把握できません。また、うつ状態で、過剰に状況を悲観的に捉えてしまうことについては(客観的症状)、本人は自覚がないケースもあります。

精神症状は主観的症状と客観的症状との関係が下記のようにばらつきます。

一致するケース(=、≒)
全く一致しないケース(≠)
程度が乖離するケース(主観>客観、主観<客観)

そのようなこともふまえつつ、専門医は各種精神症状や行動について、詳細なカテゴリーと併存するパターンが頭の中に整理されて入っているため、診察で効率よく症状の有無や経過について、観察・聞き取りをして、診断カテゴリーの絞り込みを行います。

なお、症状には程度がありますので、診断閾値以下(精神医学的には病的と捉えない)、ということもありますが、これは次の②で考えた方が分かりやすいでしょう。

② 経過(いつから、どれぐらい続いてきているetc)

例えば、気持ちが不安定になってきたとして、急激になのか(1~2日)、比較的急になのか(数日から数週)、徐々に(月~年単位)なのかで、念頭におくカテゴリーがことなります。

また、最初に症状が出た時期も重要です。
注意力が無い、といっても、幼少期からなのか、直近の数か月間なのかで、念頭におく疾患カテゴリーが全く変わってきます。

そして、症状の持続期間によって、診断カテゴリーも変わります(2週間、1か月、6か月etc)

また、その症状がどれぐらいの頻度で繰り返されるのか(頻度、再現性)、という事でも判断が異なります。その方の人生において、繰り返し生じている事なのか、初めてのことなのか、etc。

診察では、症状の有無と経過を、可能性が高いと考えられる診断カテゴリーを念頭に置きながら、効率よくお聞きして、診断プロセスを進めます。早ければ、数分でおおまかな診断カテゴリーを把握し、その詳細の把握に進んでいきます。

以上、精神科医の頭の中がどうなっているのかを、少しイメージしてもらえたのではないかと思います。

最後に、私は大学や企業での研修で、①ではなく

②経過を重視してほしい

と伝えています。「調子が悪そうだ、以前と違うな」な、という程度で結構です。あなた自身や、あなたのまわりの人々を思い浮かべてみて下さい。
元々の状態と比べて心身のコンディションを崩してきていませんか?
また、心身のコンディションの低下が徐々に進んだり、持続したりしていませんか?

診断基準に持続期間が設けられているのは、症状が一定期間持続すると、自己対応だけでは改善しない可能性が極めて高くなることが統計的に明らかとなっているからです。

週単位、月単位で、コンディションが悪化してきたら、サポートを求める、サポートを提供する、そういうようにシンプルに考えて対応して頂ければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?