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名古屋グランパスvsFC東京~失い失わせた良さ~[J1リーグ第5節]

※3月の中旬から生活の方がカツカツでサッカーの方に手が回っていません。そのため、レビューの投稿が大幅に遅れています。それでもFC東京の試合はルヴァン杯含めて全試合やるつもりなので、投稿されたら隙間時間にでも覗きに来て頂けると嬉しいです。
それではJリーグ第5節、名古屋グランパス戦です!


代表ウィーク前最後の一戦、名古屋グランパス戦です。佳史扶、日本代表初選出おめでとう!めでたいね。

名古屋は3勝1敗と好スタート。ここまで失点は1と健太さんらしい堅守。前節の柏レイソル戦は3得点をあげて快勝している。

一方のFC東京は2勝1分1敗と圧倒的中位力。前節の横浜FC戦はディエゴと仲川に得点が生まれて3-1。ビルドアップは個人、組織の両面でまだまだな部分もあるが、プレッシングで良さを発揮。ひとまず1つの課題は改善の兆しを見せた。

スタメン

・名古屋グランパス
前節と同じスタメン。好調ということもあり、メンバーはかなり固定されている。野上、森下、米本以外の8人は全試合スタメン出場中。元青赤の人たちもたくさんいます。

・FC東京
アルベル監督就任後、初めての3バックでスタート。木村と野澤零温はリーグ戦初のベンチ入り。寺山も不在でベンチには中盤の選手がいないという緊急事態である。まだ開幕して1ヶ月しか経ってないが、、、

(1)3バック採用の利点と欠点

3バックになってもボールを保持するスタイルは変わらないFC東京。対して名古屋は試合立ち上がりからプレスに出てくる。

名古屋はCHの米本と稲垣でFC東京のCHを抑えながら、3トップがCHを消しつつ3CBへ向かっていく。この前線5枚で中央を封鎖してサイドへと誘導。WBのところにはそのままWBの和泉と森下が出てきて嵌める設定。

お互いに3-4-3のシステムということでこんな感じでマークは上手く噛み合う。そのため、FC東京はシャドーの仲川と塚川が降りてくることでマークをズラして前進を試みる。

左サイドではWBの佳史扶が高い位置を取って森下を押し下げ、塚川がビルドアップのサポートに降りてくる役割。最初のプレーでは降りてくる塚川に対して、名古屋は稲垣と野上の守備の矢印が重なり背中を取られた。しかし、それ以降は右CBの野上がしっかりと付いていくことで対応する。

FC東京の左サイドの前進において多用していたのが、森重がパス交換で前向きを作る形。左CBに入った森重は対面のマテウスを引き付けて、サイドの選手へ。すぐに動き直してリターンを貰い、前向きを作り出すことを狙う。

森重からのサイドの受け手が佳史扶だと森下に勢いよく出てきて潰されることが多め。しかし、佳史扶が高い位置を取って森下を押し下げ、塚川が降りてくることで受け手に時間の余裕ができ、リターンで森重の前向きに。3トップが外されると名古屋は撤退を選ぶため、このパス交換でプレスをリセットさせることができた。

左足で渡して、リターンを右足で止める。両足を使える森重だからこそ安定してトライできる形。保持において真ん中エンリケ、左森重の配置の効果が出た部分である。

次に右サイドの保持。仲川は塚川ほど降りてくることはなく、藤井-和泉-米本の3人の間辺りで顔を出して、ビルドアップの出口となる。この仲川に対して、名古屋は米本と藤井でマークを受け渡しながら対応。どちらかというと米本がマーク担当になることが多めだった感じ。

左CBの藤井は右の野上のように仲川にピッタリとついていく振る舞いではなかった。その理由の1つとして考えられるのが、塚川の列を変える動き。左シャドーの塚川は右サイドまでエリア(列)を移動して、名古屋のCHの背後に現れる。塚川の降りていく動きにはついていった野上だが、横への移動には流石についていけない。

ここで藤井が仲川についていって高い位置まで出ていくと、その背後を塚川に狙われる。そうすると最終ラインのマークがズレることになる。名古屋はこれを嫌って米本と藤井の受け渡しで仲川に対応した、というのが考えられる説の1つ。

米本が仲川のマークについたときには、稲垣とマテウスがそれぞれ小泉と東にスライド。逆サイドの森重を捨てて、左サイドで閉じ込めることを狙う。

ただ、名古屋はこの左サイドへの閉じ込めが上手くいっていなかった。その要因としてまずあげられるのが長友へのプレス。佳史扶に比べて長友は立ち位置が低めだったこともあり、和泉のプレスは少し遅れ気味。そのため、名古屋は永井が木本へプレスをかけてサイドへと誘導するが、そこで嵌めきれずに長友に前を向ける時間が与えてしまった。

さらに、東はマテウスの監視が届かない立ち位置を取りフリーとなる。中盤で浮いた選手は稲垣が常に奔走して消していたが、仲川がCHに現れるなど気の利いた動きで稲垣を妨害して東をフリーにしていたのも効果的。

これによって名古屋は左サイドで保持を閉じ込めきれず。FC東京は東から逆サイドでフリーの森重まで展開して敵陣まで運ぶことができていた。

25分30秒

4バック+アンカーではサイドに誘導されると、そのまま閉じ込められて嵌るのがいつものFC東京。しかし、3バック+2CHとなったことでビルドアップ隊が増えて、脱出口を作り出すことができた。これは3-4-3を採用したメリット。

しかし、ビルドアップ隊が増え、さらに塚川と仲川もサポートに降りることでいつもより後ろが重くなる。そのため、プレスを回避して前線まで届けても攻撃の枚数が少ない。また、サイドの高い位置で張っているのがWGではなくWBなため、1人で仕掛けて相手を剥がすことができない。これによってプレスを回避しても攻撃をスピードアップすることができなかった。この部分は3バック採用で上手くいかなかった点である。

11分00秒

(2)消えた両者の強み

いまいちプレスが嵌まらなかった名古屋は前半中盤あたりからミドルサードへ撤退して構えて守ることが増えてくる。

ミドルサードまで前進したFC東京が狙うのが右CBの野上の背後のスペース。塚川が降りてくることで野上を引き連れ、その背後のスペースへ飛び出す佳史扶やディエゴに森重からパスを送っていく。

試合を通して、FC東京は背後のスペースを狙っていたが、森下と中谷が上手くカバーされてここからチャンスへと繋がる場面はなかった。そもそも試合通してFC東京のチャンスなかったけど

FC東京が敵陣まで名古屋を押し込む展開では、CHや森重、木本も高い位置を取って攻撃に参加。人数をかけてサイドの攻略を試みる。これに対して名古屋は永井とマテウスも下がって5-4-1でセットする。

サイドの攻略を狙うFC東京に対して、名古屋は逆のシャドーが必ず中央のバイタルエリア付近を取ってスペースを埋める。このシャドーの立ち位置により、CHの稲垣と米本を中央から解放。サイドの守備に動員させて、人数をかけるFC東京に数的優位を与えない。

また、名古屋のサイドの守備は人基準。しっかり人についていってフリーを作らせない。人基準であるため、FC東京側から見れば1人剥がせばマークはズレるし、ここで縦に突破すればカバーがいない!って場面はある。しかし、この試合ではFC東京にWGがおらず、サイドに張っているのは佳史扶と長友のWB。個での突破は期待できず、サイドの密集をなかなか攻略できなかった。

ただ、この試合のFC東京は得点をとることよりも取られないことを最優先としていた感じ。敵陣深くまで運んで、永井とマテウスを押し下げればカウンターを食らいにくくなり、失点のリスクは減る。名古屋の守備ブロックを攻略することはできなかったが、そういう意味ではFC東京のプラン通りに試合を進めたとも言える。

ハーフタイム
シュート0本、被シュート2本。FC東京が最低限のプラン通りに試合を進めて0-0で折り返し。

(3)あくまでも負けない戦い

後半。前半に引き続きFC東京がボールを保持する展開。

後半は2シャドーがCFの近くを取る場面が出てくる。前半はサイドからの前進がメインだったこともあり、ディエゴは孤立してプレー機会がほとんどなかった。しかし、シャドーがディエゴの周辺を取ることで、中央からの縦に早い攻撃も見られるようになった。

また、名古屋が5-4-1でセットした際に、前半よりもディフェンスラインに穴が空きやすくなった。ディフェンスラインに穴が空いたときには、CHの稲垣か米本が下がることで埋める。

また、マテウスと永井の2シャドーも低めの位置まで下がってこなくなった。これにより、中盤にスペースができるようになり、サイドの密集を脱出できる場面が出てくる。FC東京の流れの中でのファーストシュートはこの場面から。ということで今節の切り抜き解説です。

61分40秒。仲川が丸山と中谷の間を取ったことで、稲垣が最終ラインに吸収される。更にマテウスも戻ってきておらず、バイタルエリアで小泉とディエゴがフリーとなる。サイドでボールを持った長友から小泉→ディエゴと繋いで相手の目線をズラしてアダイウトンがフリーに。更に仲川が丸山を引き連れて、アダイウトンにスペースを提供。ディエゴからの斜めのパスを受けたアダイウトンがシュートまで持ち込んだが、僅かに枠を外れた。

61分40秒

このようにバイタルエリアあたりにスペースができたことでサイドの密集を脱出できるようになったFC東京。逆に名古屋のシャドーが前残り気味になったことで、カウンターを喰らう場面も増えたが、両チームともに決定的なシュートを放つことができない。

終盤には名古屋は5-3-2に変更。中盤を3枚に増やすことでバイタルエリアのスペースを埋めて守備の安定を取り戻す。対してFC東京も交代は消極的。

両チームともに勝つよりも負けない試合運びを展開。決定機もなかなか作り出せずに試合終了となった。

おわりに

0-0。FC東京としては離脱者続出の中で、プラン通りに試合を進めて最低限の結果は手にした形。

3バックの採用に関しては、アルベル監督自身も守備を重視したと会見で答えている。

我々は、守備を堅めてきたチームに対して、ウイングを生かしてサイド攻撃をしたかったのですが、そこに連係してくれるミッドフィルダーが必要なのは確かです。そのミッドフィルダーが複数人不在のなか、守備をより重視することを優先しました。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/379

ただ、その中でもボールを保持するスタイルは変わらずに試合を運んだ。むしろビルドアップ隊が増えた分、保持はいつもより安定していたとも言える。アルベル監督の発言からすると、今回の3-4-3は中盤に離脱者が続出したことで採用した感じで、再び見られるかは微妙なところではある。

ただ、個人的にはオプションの1つとしてまたやってほしいと感じられた試合。メンバーが揃えば3バックでも攻撃的で魅力的なメンバーが組める。

左CB徳元とか。松木と渡邊の2シャドーとか。WB俵積田とか、、、

試合結果
2023.3.18
J1リーグ第5節
名古屋グランパス 0-0 FC東京
豊田スタジアム

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