自室独房生活十一日目を終えて

四月に入り、生活ががらりと変わった。

新型コロナウイルスの影響もあって、仕事は四月に入ってからずっと在宅勤務だ。これまでずっと在宅勤務が可能か不可能かは、空論のままであった。しかし状況が状況だからか急速に社内の改変は進み、無事に在宅勤務制度が整った。まだ上層では古臭い社風を漂わす様な気配も伺えるが、現に東京に出向かなくても良いというだけで安堵している。私は実家で暮らしているし、東京から帰ってくる私が感染源となってはいけない。私自身が感染するということよりも、潜伏期間が長いと言われている新型コロナウイルスを家族に撒き散らす訳にはいかない。社会人二年目ということもあって、未だに社内のルールや動き方に不明瞭な部分もあるけれど、幸いにも私の属しているチームの上司は私の家庭環境や内情を理解してくれている。恵まれている環境下で労働をすることができていると感じる日々である。本当に有り難い限りだと思う。

正直、最近の私は新型コロナウイルスに酷く精神を蝕まれていたし、電車に乗るだけで自分が感染してしまうのではないかと恐怖心を抱いていた。治療薬の発見されていない未知のウイルスだから、そうなってしまうのも仕方ないと普段の私の性格から感じている。反面、これでも外で複数人で遊んだりする人がいるのも確かであった。(流石に最近になって減ったが...)身近な人は幸いにもそういった人が少ないと思っているが、この状況下をどう読み取るのかは人間関係にまで侵食している様な気がしてならない。ウイルスではない人間による二次災害は既に始まっている。

ただ、私は在宅勤務ができる職業柄だが、できない人もいる。その様な人たちが一刻も早く安心していられるような日常に戻って欲しい。綺麗事の様に聴こえるかもしれないが、人の外出を減らさない限りはどうにもならない。

そんな私の生活はというと、朝八時に起きてシャワーを浴び、自室に籠もる日々を繰り返している。殆どは十八時に仕事を終え、固まった足を解しに軽く人気の少ない夜道を風になびかれながら散歩をする。幸いにも田舎に住んでいると、気分転換に人の居ない場所に外出ができる。たまにはドライブも良いかもしれないが、過度な外出はそれでも止めにしておきたいところだ。そして毎晩の様に酒を飲み(これが私にとって一番の弊害かもしれない)、本を読んだり新しい企画を考えたりする。通勤時間が削減されたことで異常に疲れることもないし、精神的にも楽だ。そんな生活を持って始まった社会人生活二年目。

不慣れな自室独房生活。気分転換にと近所の花屋で買った赤い薔薇やカーネーションを飾ったりして気晴らしに眺めている。毎日水を替え、花の栄枯盛衰を見届ける。これだけがこの部屋の中で時間の経過を教えてくれる。花と共生する事で自閉的にならずに済んでいる。これまでの私では想像のできない日々と時間が私の内に訪れようとしている。

新型コロナウイルスによって日常が奪われていくということは、同時に季節を奪われるということであって、これまで何の焦りも不安もなく道端に咲く花々や桜を見ては季節を感じてきた。時間の経過、季節の経過、自然の経過。これから先も閉じ籠もって生きていれば、幾らバーチャルが発達しようとも、心は褪せて廃れていく。

無事に来年は桜を見て、綺麗だと言いたい。来年どころか、夏を無事に迎えたい。大きく休みを取って、絶対に旅行に行くと決めている。会社から貰った二万円の食事券が夏より後には使えなくなってしまう事にも気がついた。無論、私の食事券の事なんかよりも今の生活が一刻も早く平穏で無心で空を見上げられる日々に戻る事が一番だ。だから今、社会に対してできる事を。STAY HOME.

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