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第18回 相続税理士のつぶやきコラム~納税額ゼロの誘惑~

 相続専門税理士小泉博嗣氏が、軽快な語り口で気になるポイントを紐解く人気コラム。今回のテーマは「納税額ゼロの誘惑について」です。

 「税金は少ないに越したことはない」
 多くの方が思うことではないでしょうか。そんな気持ちを見透かすように、「税金ゼロ」という甘い文言が氾濫しています。
簡単に中身を覗いてみましょう。

①アパートを建てて、借金すれば税金ゼロです。
 よく言われるように、税金はゼロになるかもしれませんが、銀行には支払いが残ります。国に税金として払うか、もしくは銀行に借入金を返済するかですから、ご家族にお金が必ずしも多く残る訳ではありません。
 すべてのアパート対策を否定しているわけではありませんが、安易な意思決定は禁物です。

②出資持分なし医療法人にすれば、税金ゼロです。
 国が奨めている税負担軽減措置です。
 出資持分を持たないというのは、医療業の成果が資産という形で残らないことを意味しますので、どこかヤドカリのようなむなしさがあります。また、一度「出資持分なし」を選択すると二度と後戻りできないので決断に勇気がいります。
 出資持分も、ちょっとした工夫でゼロまでいかないまでにせよ、評価額を落とすことは出来ます。

③一般社団法人に財産を移管すれば、税金ゼロです。
 一般社団法人も、公益性を打ち出して、私有財産を維持するような感じです。過度な節税に用いられるとすると「看板に偽り」と税務調査で指摘を受ける可能性があり、ハイリスクな対策であると言えます。

 そもそも相続税の計算は、素直に計算すると税額が算出される仕組みです。その税額をゼロにするという「負荷」をかける必要があるのです。
 「ゼロ」にするためには、劇薬を用いる必要があります。なんらかの副作用があるのです。しかし、「ゼロの誘惑」は蜜のように甘く響くのです。心しなくてはなりません。贈与等を活用して、事前に納税資金準備が出来るのかとの比較の中で、対策をすることをお勧めします。

小泉


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