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零細起業の経営実務(37)成功を定義する

起業を志す研究者の皆さんへ、リーゾの経験をお伝えするシリーズ。今回は、意外と起業の肝かもしれないと最近思っていることを書きたいと思います。

先日、東大駒場キャンパスにて、教養学部の学生向けの進路選択シンポジウムがあり、私自身の進路選択の経験をお話しする機会がありました。

その後の懇談会では多くの学生さんと本音トークをすることができたのですが、その中で「起業するの怖くなかったんですか?」という質問をされました。

そうだよね、怖いよね、何か、借金まみれで路頭に迷ったり失踪したり、悲惨なイメージあるよね、と言うと「そう、そう!」と。

もちろん、怖かったのは私も同じでしたが、怖がっていては先に進めません。そこで、怖くなくなるために、ふたつのことを決めました。

ひとつ目は、『お金は借りない。借りるなら、いつでも手持ちのお金で返せる金額にする』。これを守っていれば、返済に困ることはありえません。もちろん、借りられる金額が小さくなるので、代わりに知恵を絞る必要はあります。

ふたつ目は、『起業における成功の定義を変える』でした。

起業における成功の定義は、一般的には株式を上場するとか、大金持ちになるとかだと思います。でも正直、リスクが大きいわりにあまり魅力を感じず、私にとっては、ワクワクしながら目指せるものと思えませんでした。

そこで、起業における成功の定義自体を、「会社の幸せな存続」と変えてみました。そう考えると、会社が続いている限り、毎日が「今日も成功!やったー!」です。
・・・なんとおめでたいことでしょうか。

できれば「存続と成長」としたいところですが、子供と同じでいつかは成熟して成長が頭打ちになる日も来るでしょう。幸せな存続だけで十分、と考えました(実際には、ちょっとずつ成長しています)。

ベンチャー起業家としては、あまりに欲がないように思えるかもしれません。でも、周りを見れば、幸せに存続している小さなお店や会社がたくさんあることに気づきます。ハイリスク・ハイリターンだけが起業ではない、というのは実は当たり前のことなんです。

ということで、最初の学生さんの質問に対する答えは、

『怖かったから、これなら怖くないと思える、自分が取れるリスクの範囲でやることにした』

ということと、

『成功するまでがんばると思うと疲弊するから、日々楽しめること自体を成功と考えるようにした』

ということになります。

蛇足ですが、「こうなったら潔く会社をたたむ」という撤退ラインも決めてありました。その手順も、だいたい把握してます。いつでもやめられるようにしておくのは、長続きの秘訣だとひそかに思っています(結婚生活もそうかも・・・?)。

起業を考えてるんです、という若者が増えてきたように感じるこの頃、安易にお勧めできる道ではないことを強調した上で、リスク管理さえできれば必要以上に恐怖を感じる必要はなく、十分に「成功」できる道であることも、伝えてあげたいと思っています。

ところで。東大教養学部生からの質問(相談?愚痴?)のほとんどは、「自分のやりたいことがわからなくて悩んでいる」というものでした。

自分の息子と同年齢の学生さん。母親モードなら、「何甘ったれたこと言ってんの!」と叱るところですが、「わかるよ。私もそうだった。でも必ず見つかるから。」などと、理解ある先輩モードで対応している自分がいました。

自分にもそういう、甘っちょろく悩んでいた時代があったことを、すっかり忘れていたみたいです。ごめんね息子!

(2018年5月2日配信のすいすい通信より)

「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html

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