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エリザベス女王を失ったイギリス


去る9月8日にエリザベス女王が永眠されました。享年96歳でした。英国君主としての在位期間は、25歳から96歳の70年間で、イギリス連邦王国の君主として史上最長であったエリザベス女王。イギリスでは絶大な人気を誇り、イギリス人の中には、エリザベス女王のいない英国は考えられないというような、ショックを受けている人も大勢いいます。年齢的にいつ亡くなられても当たり前といえば当たり前だったのですが、英国君主として70年以上も在位されていたので、国民のほとんどは、エリザベス女王以外の治世を経験していません。そのため、女王の存在が当たり前すぎて、女王が永遠に存在し続けるように錯覚してしまったのだと思います。(かくいう私もその一人)

ニュースで世界中に放映されていたことと思いますが、葬儀当日までの5日間、女王の棺はウェストミンスターホールに安置され、この間は一般市民も弔問することが許されました。全国から、女王に最後のお別れをしようと、想像を大幅に上回る数の国民が行列し、待ち時間は24時間以上になることもあったそうです。サッカーの元イングランド代表デイヴィッド・ベッカム氏も一般市民に混じって13時間以上行列に並んだとのこと。私の友人の何人かも、弔問の行列に参加していました。

今日、久しぶりに会ってコーヒーを一緒に飲んだ友人は、5日間の間にロンドンに3回足を運んだと言っていました。一回は花束を置きに、2回目は行列に参加して弔問をしに、3度目は国葬のセレモニーの後の行進を見に。行列に参加した時は、8時間並んだそうです。彼女は女王の棺の前で、感動と哀しみで涙が止まらなかったと。

エリザベス女王は、威厳がありつつも、謙虚であり、常に国民に献身的に尽くした女王だったと思います。フレンドリーでユーモアたっぷりな部分も度々見せてくれました。2012年のロンドンオリンピックの際には、空からジェームスボンドと登場したり、今年の夏に即位70年を祝う祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」では、国民への感謝の印としてパディントンベアーと共演したりと、サービス精神たっぷりでした。

近年は、息子のアンドリュー王子のスキャンダルや、孫のハリー王子と王室とのいざこざ、昨年は長年連れ添ったフィリップ殿下が死去され、悲しく辛いことがたくさんあったにも関わらず、常に明るい笑顔を絶やさず、国民に尽くした女王。お亡くなりになる二日前にも英国の新首相と会談する様子がニュースで放映されていました。最後の最後まで立派に任務を全うした女王でした。

私が最初にイギリスに来たのは大学生時代の1994年頃。その時から慣れ親しんでいるエリザベス女王のポートレート(横顔)の切手や紙幣。それが、新国王チャールズ3世の横顔に変わるのは想像するのが難しいし、違和感があります。本当に寂しい限りです。

そして、19日、国葬がロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われました。世界中で放映されたことと思いますが、特別ロイヤルファミリーのファンでない私でも、思わず感動して涙ぐんでしまうほど、美しく厳粛な葬儀でした。思わず、愛国心のようなものを感じてしまう瞬間でした(イギリス人ではないですが)。

聞いたところによると、10年以上前からこの日に備えて、王室関係者は定期的にリハーサルをしていたそうです。皆が寝静まる夜中がリハーサルタイムだったとのこと。こういう、伝統や格式を重んじる一面も、やっぱりイギリスっていいなあと思うところです。