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部活動

「なんでもできる人に私の気持ちなんてわからない」

1つ上の先輩は部活を辞めたいと泣いた。
上手な私と一緒にプレーするのは辛いと。

その日の夜、キャプテンから電話がかかってきて
しばらく部活を休んでほしいと言われた。

高校1年生の冬のことだ。

その一言は、深く重く心にささった。
そうか、私は人の気持ちが分からないんだ。
そのことで、知らない間に人を傷つけてるんだ。
チームだから先輩後輩関係ないとか、
上手くなりたい!というのを真に受けて、
細かくアドバイスしてはいけなかったんだ。
なんでもできるわけないのにそんな風に見られるんだな、と。

それからというもの、それまで以上に人の気持ちを想像するようになったと思う。それがよかったのか、今となっては分からない。自分を置いてきぼりにして、相手の顔色だけを伺うようになったところがある気がするから。自分を過剰に責めることは相手を責めることでもあるから。

あのとき、こう言えればよかった。
「先輩に私の気持ちはわかるんですか?」と。
泣いて暴れて怒ったりすればよかった。

悪者は ‘なんでもできる私‘ に決まった。
周りを味方につけた彼女を引き止めるため、私は遠ざけられた。

あのまま辞めてしまえばよかったのだろうか。
あの頃の自分には、辞めるという選択肢がなかった。
学校という小さな世界で、
部活は大部分を占めていて、
ハンドボールは好きだったし、
投げ出すことは逃げるみたいだと思っていたから、
おバカで幼い私なりに、頑張っていたんだよな。

だからこそあのとき、怒ってあげられればよかった。
伝えればよかった。
怒ることも辞めることも ‘できない私‘ の気持ちを
想像してくれる人は誰もいなかった。
私も含めて。

2週間後、先輩は部活に戻ってきた。
しれっと。そう、本当にしれっと。
引退するときは、頑張って続けて良かったと言っていた。
良かった良かった、と私も思った。

うちの夫は、高校3年生の夏の大会直前、
真剣に練習しない同級生が嫌になり、部活を辞めたらしい。
エースだったそうなので、かなりの嫌がらせでもあり勇気でもある。

大人になって、こんな近くに辞めた人生に出会うと思わなかった。
それぞれに後悔があり、身につけたものがあるのだと知った。

辞めないも良し、辞めるも良し。
いくつになっても、あのときの自分を助けにいける。
自分にだけなら悪態も聞かせちゃえばいい。
納得しながら自分と進んで行こう。

部活動を頑張る(頑張った)すべての人を応援します。



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