新卒1年目のギャップ
大学3年生
大学3年生になると、周りの友達がどんどん就活に動き出す。一方で私は、なんの焦りも不安もなかった。「就活やるの早くない?」とまで思ったほどに。ただ、みんながみんな就活を始めるから、つられるようにして私も就活を始める。
始めるといっても、インターンシップになど1つも行かなかった。早期会社説明会や合同説明会に顔を出した程度。なぜなら、私にはやりたいことが何もなかった。周りの友達は、「公務員になりたい」「接客業がしたい」「編集作業をしたい」。みんな小さくても何かしらの願望があることが、とてつもなく羨ましかった。
もちろん私にも、やりたかったことはある。国際ボランティアになって、将来は世界を飛び回りたかった。しかし、その熱意は気づかないうちに消えた。なぜかはわからない。ただ単に興味がなくなったのか、あるいは現実を見たのか。火が灯る蝋燭が徐々に短くなっていって底をつくように、ある程度長い時間をかけて、その熱意がいつの間にか消えていた。
秋頃から、縋るようにキャリアアドバイザーを頼るも、やりたいことは見つからず、私の頭の中はずっと靄がかかっているようだった。
大学4年生
大学4年生、春。ここまで来てもやりたいことは見つからない。友達はどんどん選考を受けていく。この時期になっても、やはり焦りの気持ちはなかった。他人には他人、自分には自分のペースがあると考えていた。それはきっと、私の本質的な部分だと思う。
しかし6月ごろになって、ついに入りたい会社を見つけた。3年生の頃から頼っていたキャリアアドバイザーの会社だ。自分が就活に苦しんでいたように、これからの就活生の手助けをしたい。学生の話を聞いてあげたい。そういう気持ちから、キャリアアドバイザーの所属する人材会社の選考を受けた。そこは小さな会社で、組織という大きな枠組みが嫌いな私にとって好都合の環境だった。上司の雰囲気や考えにも惹かれた。
選考は、無事に合格。大学時代に仲の良かった友達も入社した。そのこともあって、結果的にその人材会社に就職した。
しかしその後、私はつらい現実を見ることになる。これがきっと、《新卒1年目の壁》そのものだろう。
新卒1年目
学生時代のうちにある程度の研修を受け、入社する。私の仕事内容は、就活生と話し、相談事を聞き、解決に導くこと。まさにキャリアアドバイザーである。話を聞くことは楽しかったし、なんとかしてあげたいという気持ちはずっとあった。
しかし、違和感を感じ始めたのは6月ごろ。学生を集客しなければならなくなったことがある。そんな時、休日の23時前に突然上司から電話がかかってきた。
「君、ノルマこれくらいね。1番つらくてプレッシャー感じてるのは別の新卒学生だから。できませんでした、は通用しないから。じゃあ頑張ってね」
その言葉に、困惑した。「こんなに条件があってそのノルマ?学生に選考を通過させなきゃいけない、間違った道を教えてはいけない別のプレッシャーを私も感じてるのに?通用しない?今回、入社して初めてノルマを課せられたのに?」
もちろん社会人になったからには、会社のためにお金を稼いでこなくてはならない。それは十分承知してる。私が1番気に障ったのは、私のことはちゃんと見てくれていないのか、ということ。別の新卒学生の心配はするのに、私の気持ちはガン無視か。無性に腹が立ち、同時に悲しくなった。悲しくなったのは、それだけが理由ではない。その電話をかけてきたのが、憧れていた上司だったからだ。綺麗な景色を見ていた時、突然崖の上から落とされる感覚。崖をゴロゴロ転がり、体の代わりに気持ちがズタズタになっていく感覚に飲み込まれた。(ノルマが達成できたかどうかはご想像にお任せする。)
あんなに就活相談も聞いてくれて、入社当初もいろいろなことを手取り足取り教えてくれた上司だったが、6月のこの出来事があって、今までの上司は設定された上司だったのかと思い知らされる。
これが新卒1年目が壁にぶち当たる問題《ギャップ》だ。
最後に
個人が体験したこと、そしてキャリアアドバイザーとして言えること。それは《就活中と入社後のギャップを少なくしろ》ということだ。
残念だが、ギャップというのはどんなに頑張ってもゼロにはならない。なぜなら、企業側は学生を獲得するために良い面しか見せないからだ。必死になってお面を被っている。たまに、新卒1年目の社員が、実際に業務で辛いことを話してくれたりもする。ただ、気をつけてほしい。それは、セミナーや説明会という公の場でのみ、発言しているのではないか。公の場では、用意され、添削されたカンペがあるだろう。個人対個人になった時に、もっと辛い話が出てくるかもしれない。辛いことを発言すると言うのが、悪いということではない。悪いことではないが、真実を見極めてほしい。
ではどうやって真実を見極めるのか。《できるだけ全てを疑う》ことが重要になる。憧れを抱きすぎると、ギャップにやられる。それは本当に裏表もなく憧れる姿か。全てがキラキラしているか。業務内容は本当に自分に合っているか。疑って、疑って、本質にできるだけ近づいていく。そうして真実を見極めてほしい。
ギャップの差異を限りなくゼロにできるよう、願っている。
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