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哲学を研究して、自分なりの自由な人生を獲得する

西田哲学とショーペンハウアー

 『善の研究』で知られる西田幾多郎の哲学に、学生の頃から取り組んできました。その中で、西田が影響を受けたドイツの哲学者たちに研究対象を広げ、ショーペンハウアーに出会いました。彼と西田に共通するのが、目的論に基づく世界観の否定です。つまり、人が生きることには、あるいはそもそも世界が存在することには、目的があるという考え方を否定するのです。ショーペンハウアーは「意志の否定」、西田は「自己(自我)の否定」と言っています。
 一般的には「生きることには目的がある。目的を達成しないと無駄になる」という主張も多いかと思います。しかし、そのような考え方だけでは、生きるのが窮屈ではないでしょうか。
 では、目的論に基づく世界観を否定した後に、人生はどうなるのでしょうか。生きることに目的がないとすると、人生はただ虚しいものになるでしょうか。そうではないと、二人は考えています。二人は、自己の人生の「底」が抜けて無くなると言っています。特定の目的に執着せず日々新たに生きるとも、万事に虚心坦懐に臨むとも、解釈にはいくつかの可能性があるでしょう。では、その後に開けてくる人生とはどのようなものでしょうか。他人との関わりはどうなるでしょうか。
 二人はともに仏教思想から大きな影響を受けつつも西洋哲学の方法を使いながら独特の思想を残しました。そうした背景を調べながら著書を読み、解釈を議論しあいながら、この思想を現代に生かすべく、さらなる深みを目指して研究を進めます。

板橋 勇仁 ( Yujin Itabashi )
立正大学大学院文学研究科長 文学部哲学科 教授 Prof. Itabashi, Yujin, Ph. D.

哲学を研究するよろこび

 哲学では、当たり前に思っていることを徹底的に考え直します。そうすることで、自分の固定概念や先入観などの枠組みを取り外し、自分を縛っていたものから「自由」になることができます。しかしそのためには、哲学者たちが残した著書の力に助けてもらうことが必要です。つまり、哲学者たちの思想の本質を理解することがとても重要です。自分勝手に解釈しているうちは、まだまだ自分の枠組みを取り外せていません。難解だったり、自分の考え方と異なっていたり、なかなか理解できないこともあります。しかし、一生懸命に喰らいついていく中で、自分の枠組みが外れていきます。そのためには、カルチャーセンターなどに通うだけでなく、修士論文を執筆するなど、本気で研究に取り組むことが必要です。社会で様々な経験をしてきて、哲学によってさらに成長するよろこびが得られます。
 哲学では、学問と自らの現実の人生を模索することが強く結びついています。大学院に進学して学び直すことは、「自分は生涯を通して何を深めたいのか」「生きるとはどのようなことなのか」について本気で向き合い、自分なりの自由な人生を深く究めることになります。

興味を持たれた方へ

 立正大学文学研究科は、仏教学、英米文学、社会学、史学、国文学、哲学の6つの専攻を擁し、多様な専門研究と相互連携が特徴です。通常の修業年限を延長して単年度の授業料負担を軽減できる「長期履修制度」や、好みの科目を1科目から受講し単位にできる「科目等履修生度」など特徴ある制度も備え、社会人のニーズに応えながら高度な研究環境を提供します。