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10thブラックダイヤモンド

2020.9.5
19:21



仲間に山への突撃メールを送り、
漆黒の闇に車を走らせた。


9月に入り、夜の気温も下がり始めていると
蜂の姿を頻繁に見かける事になる。



先月、チャイロスズメバチに刺されてから
余計に気にするようになり、
少々怯えながら木々を見て回った。


案の定スズメバチの姿が多い中、
ライトに突進してくるキイロスズメバチを
注意しながら本命を探し歩く。



汗ばむ中、秋の虫の音色をバックに
ラダーを伸ばし、捲れや洞を探す。




ここに来て、またノコギリクワガタの
数が増していた。



一通り歩き、5m以上の位置ばかり
目にしていた矢先、



19:58



ライトを高所から下ろしでいくと、
木と木が重なった箇所で黒い物体が動いた。



一瞬cockroachと見間違えたが、
太くゴツイ。



近寄ってライトを照らすと、
低所に探し求めていた本命の姿があった。



ライトを照らし続けると、
それは素早い動きで身を隠したりしながらも
飛び出してきた。


私は急いで左手を伸ばし、
それを掴んだ。


樹液採集を本格的に始めた
2016年は8頭、2017年は6頭、
2018年は7頭、2019年は5頭と
一夏で2桁採集の目標を掲げてから漸く
2020年に10頭目を採集し、成就した。






この地を選んで正解だったと、
自身の選択にも喜びながらケースに仕舞った。





他には居ないのかと探すと、
採集したその木の捲れにもう一頭
ドルクスが動いた。





バッグから掻き出し棒を
取り出そうとするも思い描いている
道具が出て来ない。





こうなるとドラえもんの4次元ポケットを
弄る状態の如く、ドルクスに逃げられる
焦りから益々道具を手に出来ずにいると、
あの羽音が耳を掠めた。





キイロスズメバチがライトに向かって
突進してくる。





刺されては一溜まりも無いと、
目線を輩に移し、地面に置いてあった
ハチマグナムを拾い、それに吹きかけた。








輩はハチマグナムの霧などお構いなしで
私に向かって飛んでくる。




スプレーを噴射するも輩には効かず、
その数は1匹から4匹へと数を増やし
私への攻撃を緩めなかった。





急いでその場から走り去り、
呼吸を整えてから再び捲れのドルクスに
向かい、キイロの姿が無い事から
捲れに針金を差し込んだ。








ドルクスはあっさりと捲れから飛び出て、
地面へと落下し、それを掴んだ。








残念ながらそれはオオクワガタではなく、
ヒラタクワガタであった。



その後も探すもオオクワガタの姿は無く、
車へと戻り、汗だくの中、仲間へと
採集内容を送った。

今晩の採集で一番大きな個体を並べた
ケースは壮観だ。


オオクワガタを測定すると、


62.8mm



暗闇でフラッシュライトを当てた時は
65mmは超えていたように見えたが、
採集するとよくある、ケースから
取り出すと縮んでしまったようだ。


22:39


遅すぎる夕飯を平らげ、
あと1箇所向かうべきではないかと
自問自答し、意を決してアクセルを
踏み込み、南へと進路を移すも、
高速道路を少し進んだ辺りで
正にバケツをひっくり返した雨が
降り注いだ。


一度最寄りのSAに停車させ、
目的地の天気予報を確認すると、
降水確率は90%を示し、雨雲レーダーも
青ですっぽりと覆い被さっていた。

行動して後悔しようと考えて走らせたが、
今回ばかりは諦め、事前に雨雲を
確認しなかった怠りを戒めようと
自身を呪った。

進路は家路へとシフトし、

2020.9.6
18:32

無事帰宅した。


悲願達成となる10th採集だったが、
記録を重ねようと次なる作戦を練り、
予定と天気予報と採集地を見比べる。

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